伊東政浩(全日本仏教青年会 第19期理事長)


協会誌「寺社Now」創刊号より

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伊東政浩(いとう せいこう)プロフィール
全日本仏教青年会第19期理事長/日蓮宗 常照寺
1971年2月23日生まれ、43歳。立正大学仏教学部卒業。2013年6月、超宗派青年僧約3万人で組織される「全日本仏教青年会(http://www.jyba.ne.jp/)」第19期理事長に就任。青少年育成や平和運動、災害対策など伝道を通じて社会活動を積極的に行っている。
「遠寿院荒行堂」第四行を成満。御祈祷を通じて人生悩み相談所としてお寺を開放している。「八光流柔術」皆伝師範、「合気武道 昊道会」を主宰する武道家で、人材育成にも尽力している。
公益財団法人 国際仏教興隆協会 理事、全日本仏教会 代議員、元全国日蓮宗青年会会長

 
宗派の垣根を越えて青年僧侶が連帯し、社会奉仕活動と仏教文化活動に取り組む全日本仏教青年会。仏教界の現状と将来をどう見ているのか、同会の伊東政浩理事長に聞いた。(聞き手 寺社Now・和泉かよ子)
 

お寺がコミュニティセンターの役割を取り戻す時

和泉
今の仏教界にはどういう課題があるのでしょうか。
伊東
一つは過疎地問題です。住民が少なくて住職が生活できるだけの収入が得られず廃寺になってお寺の建物があるだけで機能を果たしていない所もあります。また、少子化による人口減少はお墓の問題ももたらします。家の代が絶えてしまい、無縁仏になってしまうのです。これにはお寺も頭を痛めています。一般的には、どうもお寺は「暗い」「古い」というイメージで考えられがちで、キリスト教徒でなくてもホテルのチャペルで結婚式を挙げる人が多いように、お寺離れ、僧侶離れが起こってしまっています。
和泉
お寺が生き残るためにはどうすればいいとお考えですか。
伊東
現代のお寺は、お葬式、法事など死んだ時に関わる場所ととらえている人が多いと思います。しかし、昔は違いました。僧侶は何か悩み事があった時に相談する知識人でしたし、お寺は学問を教わったり書道や芸術を学ぶ場所であり、地域の会合を開いたりする集会所的機能もありました。今はインターネットで何でも調べられるので、僧侶に聞く必要はないわけです。
しかし私は、お寺がかつてのような地域のコミュニティセンターとしての役割を取り戻すことが生き残りの道だと思います。僧侶は会社勤めしているわけではないので、自分で時間を作ることができますし、お寺には本殿や客殿という人が集まることのできる場所もあります。社会貢献活動や地域の活性化の拠点として役立つポテンシャルがあるのに、利点を生かしていないお寺が多いのです。それに、人を導く立場として、僧侶の資質向上も必要です。僧侶はリーダーシップを発揮する存在感のある人間になるようもっと精進しなくてはいけません。
お寺の経営を支えてきたのは江戸時代に出来た檀家制度です。廃仏毀釈のような仏教排除運動を乗り越え、戦後もお寺が残ったのは檀家制度があったからです。しかし、檀家のお陰で何とか経営が成り立っているお寺にしても、そこに安住しているだけではこれから先の存続は厳しいでしょう。
和泉
お寺がどのような活動をするにしても、それは「仏教思想」に基づいているのですが、仏教思想は現代社会になじむと思いますか。
伊東
自己啓発セミナーなどメンタル面を鍛える講義の中身を見てみると、儒教や仏教の教えであることが多いのです。講師は「自分で考えた」と言うかもしれませんが、何千年も前から続く思想を現代風にアレンジしているだけです。たとえば、うつ病や引きこもりの人であれば、仏教の教えはそういう人たちを救えますし、お寺がコミュニティセンターになることができると思います。仏教思想の根幹は「慈悲」であり、他者を認めるという考え方なので宗教戦争はありません。誰でも受け入れるので、誰でも許されるのです。
インターネットで様々な情報が簡単に入手できるようになった一方で、自分の好きなことばかりして、平和、環境など社会問題に無関心な層が増えています。先祖、家族を大切にする仏教思想は、他者への思いやり、感謝の心を持つことにつながります。仏教を知れば、たとえ外国のことであっても、自分の生活と関係のない出来事であっても、無関心ではいられなくなると思います。いつの時代でも、仏教思想はそれを学んだ人の「人間力」を上げ、内面を成熟させると言えるでしょう。

仏教思想はいつの時代も人間を成熟させる

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観光という切り口は非常に大事、外部の知恵ともコラボしたい。

和泉
檀家をはじめとする地域の人々との関係に加え、外から訪れる人を迎える「観光資源」としてのお寺の価値をどう見ていますか。
伊東
憲法に政教分離が定められていることや、カルト教団の存在もあって、お寺が何か公益性のある活動をしようとしても、行政との調整がうまくいかないことがしばしばです。宗教法人の壁のようなものがあるのです。「観光」や「文化」は、その壁を乗り越える非常に大切なキーワードだと思います。お寺を訪れるきっかけは、信仰だけではありません。仏閣や仏像を芸術品として楽しみに来る人もいるでしょうし、緑豊かな境内の雰囲気を味わうためという人もいるでしょう。どんな目的でもお寺に来てもらえれば、そこには歴史があります。観光は、お寺の物語に触れてもらう入口だと思います。
仏教界が殻の中に閉じこもっていては、飛躍はないと思います。外部から提案されたアイデアとタイアップすることで、ブレイクスルーな展開ができるのではないでしょうか。残念ながら、仏教界自体が「お寺は素晴らしい所です。是非、来てください」といくら発信しても、自画自賛と受け止められ、説得力がないんです。仏教界ではない所と組んでこそ説得力が生まれますし、我々僧侶が思い付かないようなイベントや商品開発が可能になります。「餅は餅屋」と言うように、いろいろな外部の方の知恵を借り、それぞれのいい所を生かす形でコラボレーションしていきたいですね。

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2014-12-07 | Category インタビュー

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