開かれた寺づくりで 信仰、観光、自然の未来をつくる vol.02


摩尼殿の仏殿
摩尼殿の仏殿

 

種をまいてこそ花が咲く観光も信仰も同じ

編集部:ある信者寺様が、「観光をきっかけにお寺に来ていただきたいが観光が信仰に繋がらない」とおっしゃっていました。一方で、観光に力を入れることに戸惑うお寺様もあると聞きます。

吉田座主:何が信仰なのかということですが、私はお寺に来られるだけでも信仰心を持たれているのだと考えます。花は、種をまかなければ花を咲かせません。種をまいた後は水をやり、太陽の光を与え、養分を与えます。放っておくと枯れてしまいます。信者寺も同じ。きっかけは何だっていいのです。まずは、お寺に来ていただく、つまり種をまいてこそまた帰ってきてくださるのです。

編集部:宮島は聖地のためお墓が作れず、お寺様は檀家寺ではなく信者寺として成り立ってきたとお聞きしていますが、近年、信仰と自然を守るために拝観料を検討するお寺様も増えてきているそうです。座主のお考えをお聞かせください。

吉田座主:大聖院は信者寺として、信者様自らがお布施、お賽銭をされることを基本とするため、拝観料は考えていません。建物を建てたり修理をする際には、お願いの文書をお配りすると皆様それぞれで気持ちよくご協力くださいます。檀家割りもありません。ご協力をいただきやすい土地柄なのかもしれませんね。今、宮島では入島税を検討しています。嚴島神社様は拝観料が必要ですが、それは「お金を払ってでも見たい」と日本の方も外国の方も納得されているから可能なのです。魅力のあるお寺、神社であれば、維持をする上で拝観料をいただくことはよいと思います。

境内にある愚痴聞き地蔵
境内にある愚痴聞き地蔵

編集部:宮島全体の観光客は昨年427万人と過去最高だったそうですね。欧米人のインバウンドも増え、活気あふれる街という印象です。そんな中で、何か課題として感じていらっしゃることはありますか。

吉田座主:宮島の観光客数は乗船客数でカウントしていますから、かなり正確な数字です。1日1万人以上の方がこの狭い島に来られるとは、本当にあがりがた
いことです。外国の方が増えたのは、嚴島神社が世界文化遺産に登録されたこと、日仏交流150 周年事業のポスターに嚴島神社の大鳥居が起用されたり、フランスのモン・サン・ミシェルと観光友好都市提携を結んだことによって、ヨーロッパでの認知度が高まりました。また、昨年のオバマ大統領の広島訪問で、アメリカの方も増えました。

課題といえば、2005(平成17)年に宮島町が廿日市市と合併したとき、3つの目標を掲げました。観光客数を250 万人から300 万人に、滞在時間1、2時間を5時間に、そして宿泊
客を増やすこと。客数と滞在時間は早く達成できたのですが、伸びていないのが宿泊客。団体客が減り、個人客が増えたため、部屋の稼働率は以前と同じでも宿泊人数は半分程度です。「宮島に泊まりたい」と思っていただけるように、鳥居と嚴島神社以外の魅力を発信することが必要だと考えます。欧米の方は、宮島に来たなら弥山に登らないと価値がないと、宿泊して弥山に登られますよ。

自然を愛する方が多く、マナーもとてもいいですね。もう一つ、観光客数は増えていますが、住民は1600 人と減っています。最も多い時で5000人いました。高齢化が進み、さま
ざまな行事の世話役を引き継ぐ方がいないという問題も生まれています。人口が少ないため、小学校も規模も小さくなっています。商店街は活気にあふれていますが、ほとんどが島外からの通勤者。住人が少ないと町自体が成り立ちませんから、人口減は深刻な問題です。宮島は「宮千軒」といわれ、建物は1000 軒ほどで、国有地が多く建てる場所もあまりありません。建物を建てるにしても変更するにも規制が多く、島外ではすぐにできることが宮島ではそうはいきません。

看板の規制もあり、街を保存していくという観点では大切ですが、働きやすさや住みやすさを考えると改善すべき点もあると思います。そこで今、宮島を特区申請しようとしています。動きやすい環境づくりを進めています。お寺は地域の方に支えられています。お寺も住民の皆様の心のよりどころとして存在し続けるために努力しなければなりません。大聖院のことだけでなく、宮島全体、仏教界をよくしていこうという思いでの取り組みが必要です。

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2017-08-07 | Category スペシャル

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