【インタビュー】地域コミュニティとの連携を! 佐野 巌(神道青年全国協議会 会長/富岡八幡宮 禰宜)


1949(昭和24)年。終戦後、未だ混乱の渦中にあった日本。〝敗戦〟という日本人のアイデンティティにも多大なる影響を与えた出来事に、民族精神の復活・国家再興の祈りを込めて結成された「神道青年全国協議会」。2019年に創立70周年を迎える神道青年全国協議会について、本年度から新たに会長の任に就かれた佐野巌会長にお話を伺いました。

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青年神職の基礎的な素地の醸成
地域の祭礼を司る 神職としての見識を広げる

編集部 : 神道青年全国協議会の趣旨を教えてください。

佐野会長: 当会は、40歳以下の青年神職を中心に組織された若手神職の集いです。47都道府県それぞれに青年会(単位会)を置き、現在3428名[2017(平成29)年4月1日]が所属しています。会員には、奉職して間もない者から、すでに宮司として祭礼に携わる者などさまざまですが、神職に求められる素地の醸成や、地域の祭礼を司る神職として、より実践的な教化活動を行うための研修や情報共有などを行っています。

若手ならではのアイディアとフットワークで
日本の伝統文化を未来へ繋げる

編集部 : 貴会が行われている研修や活動の特長はどのようなものでしょうか。

佐野会長 : 当会では、発足時より「皇室の尊厳護持」と「伊勢神宮の啓発活動」を活動の大きな柱としております。神職として奉仕するためには、各地域の神社・祭礼はもとより神道への深い知識が必要となりますが、青年神職には、まだまだそれらが足りない場合がございます。もちろん、神社本庁の各種研修などで、神職としての基礎的な知識を得ることはできますが、神道青年全国協議会ではプラスアルファとして、各地域の神社・祭礼のあり方のほか、地域の方々とコミュニケーションをとる際に必要なこまかな知識の確認・情報共有なども行います。その内容は、全国の神社の本宗でもある伊勢神宮のことから、一般の方々へ家庭での御札のお祀りの仕方、正しい参拝方法などを、どのように教化するかなど、多岐にわたり、さまざまな分野の講師をお招きして講演いただいております。また、若手ならではのフットワークをいかして、大規模災害時の支援や領土領海問題に対する時局に即した活動なども行っているのも特長です

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〈写真上〉左:島根県隠岐の島町「水若酢神社」、右:島根県隠岐の島町「竹島之碑」
〈写真下〉左:沖縄県波照間島「聖寿奉祝の碑」、右:北海道根室市「金刀比羅神社」

戦後の混乱期 国家再興・民族精神の復活を願い立ち上がった青年神職たち

編集部 : そもそも貴会が発足された経緯を教えてください。

佐野会長 : 神道青年全国協議会が発足された1949(昭和24)年。未だ終戦の混乱のなかにあった時代でした。実は昭和1949(昭和24)年というのは本来、第59回の神宮式年遷宮の年です。しかし、未曾有の国難にあって式年遷宮は無期限延期となってしまいました。ただ、式年遷宮と同じく20年毎に架け替えられてきた内宮の宇治橋だけは、篤志崇敬者の力によって1949(昭和24)年に架け替えられました。こういった流れの中で、全国の青年神職が集い、国家再興・日本人の民族精神の復活を旨に発足したのが当会です。

神宮式年遷宮にあわせて新たな企画を立案

編集部 : この70年近くの間に、日本の社会構造や生活様式、そして日本人それぞれの意識も大きく変わりました。その中において、貴会の役割や活動は変わってきているのでしょうか。

佐野会長 : 神社そのものの使命は、国家と地域の平安を祈り祭祀を修めることなので、その根本は変わっていません。しかし、発足当初は国家再興・日本人の民族精神の復活を旨に活動を行っていた当会も、近年では、神道そのものを一般の方々にどう理解していただくか、日本の伝統文化・地域の伝統文化をどう未来へつなげていくかが議題にあがります。神社本庁でも、神宮大麻の頒布の減体を課題としており、神道青年全国協議会では、伊勢神宮のことを広く周知する活動を展開してきました。
2005(平成17)年から2013(平成25)年に行われた第62回神宮式年遷宮の際には、「神宮式年遷宮の〝こころ〟を守り伝へる委員会」を発足し、さまざまな啓発活動を実施しました。たとえば、伊勢の旧街道を若手神職が伝統的な装いで歩く広報活動、日本郵政様のご協力のもと実現した式年遷宮の記念切手の発行、そして、全国神社に奉職されている巫女の方々を伊勢神宮にお招きして、研修などを行いました。巫女は、各神社において参詣者との窓口の役割も果たしております。巫女に伊勢神宮をより深く理解していただくことで、参詣者とコミュニケーションをとったときに少しでも伊勢神宮を身近に感じていただけるようにと考えました。
また、最近では、次期神宮式年遷宮に向けて、神宮奉賛・参宮促進を20年に一度の一過性のブームにしない為に、「神宮啓発委員会」を発足しました。委員会の中心は、20代後半から30代前半の全国の若手神職10名と、伊勢神宮の若手神職2名。まだ事業については企画立案の段階ですが、新たな一歩を踏み出したところです。

伊勢神宮での巫女研修の様子

伊勢神宮での巫女研修の様子

神職の高齢化、氏子の過疎化を前に
地域の枠を飛び出す若手の力

編集部 : 会長に就任され、今後、貴会で積極的に取り組みたい課題を教えてください。

佐野会長 : これは神道青年全国協議会だけではなく、神社界が抱える問題ですが、全国各地で過疎化・高齢化が進む中、斯界においても例に漏れず深刻です。現在、全国には8万社あまりの神社がある一方、神職の人数は2万人を切っています。そのため、1人の神職がいくつもの神社の宮司を務めることも多く、なかには30〜40社を兼務する方もおられます。もしその方が奉職から離れた場合、すでに何社も兼務している近隣の神職がさらに神社を兼務することになります。そうなると、祭りをはじめとした地域の伝統文化が損なわれてしまう可能性は否定できません。そこで、神道青年全国協議会では、若手ならではのフットワークの軽さを活かして、地域コミュニティの枠を超えたフォロー体制を構築できないかと考えております。

神職同士の横のつながりとコミュニティとの強い連携で各地域の活性化を目指す

編集部 : 地方の人口減少・過疎化が進む中、地域コミュニティが薄れていることも問題にあがります。現代において神職に求められていることは何だとお考えでしょうか。

佐野会長 : かつて、地域の祭礼を司る神社は地域コミュニティの中心でした。神主も、今のように専業ではなく、農村であれば名主、漁村であれば網元など地域の「顔」となる人物が本業の傍ら兼務していたことも多いと推察されます。そのため、神主自身もまた地域の中に身を置き、時代時代にあった形で柔軟に地域の伝統文化を守る必要があります。
現在、神道青年全国協議会に所属する青年神職のなかには地域のコミュニティに積極的に関わる活動を行っている者も少なくありません。たとえば、消防団やPTAの役員、青年会議所の会員、なかには地方議員として地域に貢献している者もおります。地域の方々との結束を固めることで、地域の伝統文化は真の意味で継承されていくと考えています。また、各地域に伝わる「お祭り」は、ただの季節ごとのイベントではなく、故郷の原風景であり、未来へと継承されるべき日本の伝統文化です。それは、都心に集中しがちな人口を地方へと呼び戻す〝要〟でもあります。
神道は、各地域の神社の中心に天照大御神を祀る伊勢神宮があるという考え方をします。そこに上下関係や優劣はなく、各地域の神社がそれぞれの役割を継承し続けることで成り立つ「調和」の考え方があります。そして、地方が活性化することは、神道が祈りを捧げる「国家の安寧」につながると考えています。そのために神道青年全国協議会は、神職同士の横のつながりはもちろん、地域コミュニティとの強固な連携をもつためのきっかけとしてさまざまな活動を発信していきたいと考えています。

編集部 : 最後に、ひとりでも多くの方に寺社へ足を運んでいただくために活動している、全国寺社観光協会に期待されていることがございましたらお聞かせください。

佐野会長 : 仏教とか神道とか分けず、さまざまな立場の伝統文化継承を担う方が参加するような、研修会や講演会、セミナーなどがあれば興味がありますので、ぜひ企画運営をしていただきたいですね。

プロフィール 佐野 巌(さの いわお)
富岡八幡宮
1977(昭和52)年11月、神奈川県生まれ。1999(平成11)年富岡八幡宮権禰宜。 國學院大學神道学専攻科卒。2002(平成14)年から3年間伊勢神宮で奉職。 2005(平成17)年富岡八幡宮禰宜。2017(平成29)年4月より神道青年全国協 議会会長

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2017-11-01 | Category インタビュー

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