慧善玄潭〜仏教美術を世界に向けて


★クローズアップ

慧善玄潭〜仏教美術を世界に向けて〜

あふれるエネルギーと空間の拡がり
世界から絶賛を浴びる新境地の仏画

※『寺社Now』16号より

仏画 慧善玄潭

仏画 慧善玄潭氏

多くの人々が想像する仏画とは、掛け軸に描かれた優美な菩薩像や観音像、というイメージなのではないか。今回、インタビューを受けて頂いた慧善玄潭さんの作品から受ける印象は、“溢れんばかりのエネルギー”だ。日本の総理大臣賞、ゴルバチョフ賞、イタリア最高芸術勲章などという形でいまや世界各地から賞賛されている。

プロフィール 慧善玄潭(えぜん げんたん)
1958(昭和33)年韓国生まれ。日本国籍。人生の無常を感じて、1980(昭和55)年禅宗に出家得度。1988(昭和63)年来日。1992(平成4)年大阪に海東院を開設。1993(平成5)年~ 1999(平成11)年、6年かけて両界曼荼羅を完成。1993(平成5)年西山浄土宗にて得度、浄土教学を学ぶ。2004(平成16)年世界で初めて石版による「観経曼荼羅」を完成。現在、仏教美術を研究。2005(平成17)年~ 2007(平成19)年、3年かけて「釈迦の生涯一代記壁画」16 面を制作完成。

慧善玄潭

慧善玄潭作品


 

軍隊での経験を通じて
釈迦の教えに導かれる

慧善さんは1958(昭和33)年に韓国で生まれた。大学生となった時、大統領暗殺から軍部のクーデターが発生。「僕はそれほど深く民主運動に参加していたわけではないですが、仲間はほとんど捕まってしまいました。僕は運がよく、友人の父が助け舟を出してくれました。その方の働きかけによって軍隊に入ることになり、結果として逮捕を免れました」

最初の転機はこの軍務にあった。そこでの辛い日々が、新たな道筋を示すこととなった。「軍にいた3年間は、毎日が戦争のための訓練。自分が殺されるよりも先に相手を殺さなければならない。その日々のなかで僕はこれからの人生について色んなことを考えていました。そして、人の一生は誰かを殺すためにあるものではない。みんなが平和に生きるために存在しているのだというお釈迦様の教え、つまり仏教の教えに行き当たったのです。軍務を終えたらすぐに出家しました」。韓国でのお坊さんといえば、完全な出家で、結婚もせずひたすら修行で生きていくことになる。慧善さんもそのような修行に明け暮れていたが、縁があって日本に行くことになった。そこで日本の僧の在り方に驚くこととなる。

「日本のお坊さんは、韓国と比べて自由にいろんなことができる。ここでなら僕もいろいろできる、と考えました。僕は韓国で修行に子供のため禅画を描いていました。ですから、日本語が上手くないこともありましたので、絵で表現して仏教の世界を人に伝えようと考えたのです」
 

日本の仏画や仏像に衝撃
自ら踏み入って海外へ進出

さらに日本の仏画や仏像に衝撃を与えられることになる。「日本の仏画や仏像を実際にこの目で見たら、これはもう本当に美しいなと。日本だけが持っているこの仏画や仏像の美しさは、まさに慈悲心によるものだと感じました。これを見た瞬間、私は日本における仏画や仏像の世界に自ら踏み入って、自分の力で全世界に広めていきたいと思い立ったのです」

この思いを胸に作品を作り上げてきた慧善さんは、一般的なギャラリーで作品展示せず、さまざまな寺社で作品を公開。音楽とのコラボレーションによるイベントを行ったこともある。さらにフランス、イタリア、ドイツ、スペイン、ギリシャ、ロシア、トルコ、中国、韓国、タイなど世界各地でも作品を展示している。そこで、あらためて日本の仏画、仏像が大変な感動を持って受け入れられることを実感した。

「奈良の法隆寺にある百済観音は8頭身でスタイルが美しい。これはヨーロッパのビーナスよりも美しいと思います。東大寺の金剛力士の細かい血管などは、石文化の西洋では表現出来ない。そういうこともあり、フランスのルーブル美術館で作品展示した時も、大変多くの方に集まっていただきました。日本人は仏像の美しさに慣れてしまっているかもしれないですが、ヨーロッパ人にとっては、斬新な美しさなのです」。

モチーフの問題だけではない。慧善さんの画風として背景に壮大な景色を描くことが多いが、その空間の広がりも感じられる。仏の世界を描いているせいか、絵を見ながら般若心経を唱える方や、一枚一枚絵の前で手を合わせる方、毎日来て絵の前で泣く方もいるという。

「僕の絵を見て病気が治った、という方まで出てきました。本当にうれしかったのですが、やはり皆さん普段から仏画に触れる時間があまりないのだろうと思いました。特に子供たちが、仏に対して“行ってきます”と手を合わせる時間を作ってくれたらうれしい。手を合わせる行為は自分の行いを反省するチャンス。その後の生き方自体がまったく変わってくるのです」

三蔵法師・求道の道 油彩 Oil on Canvas179 × 93cm

三蔵法師・求道の道 油彩 Oil on Canvas179 × 93cm


 

海外で高い評価
仏画の慈悲心を欧州へ

慧善さんの作品は、2015(平成27)年にフランスのオルセー美術館における世界遺産作家に認定され、さらにイタリアでは最高芸術勲章を授与された。一番の軸は、日本の仏画の慈悲心というものの表現を、ヨーロッパに教えていきたいということ。今後は、あらためて日本での活動にしっかり軸足を置いていく予定のようだ。

千手観音

慧善玄潭「千手観音」…さまざまな人々を助ける姿を優美に描いた作品。大阪市内の宿坊ホテル「和空下寺町」のロビーに展示されている。

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2017-11-16 | Category インタビュー, コラム

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