【インタビュー】若い力で時代の要請に応える 倉島隆行(全日本仏教青年会 第21代理事長)


〈巻頭インタビュー〉
救済が求められる今
若い力で時代の要請に応える

全日本仏教青年会
第21代理事長 倉島隆行

1977 (昭和52 )年に日本全国 の宗派・地域の垣根を越えて活動する、仏教青年の団体として設立された「全日本仏教青年会」。世界仏教徒青年連盟(WFBY)唯一の日本センターでもあり、全世界の仏教徒と交流を深め、仏教文化の宣揚と世界平和の進展に寄与することを目指している。2017(平成 29 )年に新た に理事長の任に就かれた倉島隆行(くらしま りゅうぎょう)理事長にお話を伺いました。

 倉島隆行(全日本仏教青年会 第21代理事長)

倉島隆行(全日本仏教青年会 第21代理事長)

プロフィール
倉島 隆行(くらしま りゅうぎょう) 1977(昭和52)年生まれ。愛知学院大学文学部宗教学科卒。三重県曹洞宗塔世山四天王寺住職。全国曹洞宗青年会会長。全日本仏教青年会理事を経て、同第21代理事長に就任。また、伊勢国際宗教フォーラム世話人としてダライ・ラマ14世をお招きするなど、宗教の垣根を超えて諸宗教対話にも尽力している。

宗派・宗教を超えた交流
和の精神で世界へ発信

編集部   全日本仏教青年会(以下、全日仏青)の21 期の理事長に就任されましたが、ご抱負をお聞かせ下さい。

倉島理事長   私は「慈悲の行動」と「日本仏教の今を世界へ」という2つのスローガ ンの下、これからの2年間を活動していこうと考えています。「慈悲の行動」の焦点は弱い立場にいる人々に対する具体的行動です。全日仏青でも東日本大震災の発生以降、災害支援活動や慰霊法要といったさまざまな超宗派の取り組みが行われ、各青年会同士の絆は深まりました。この連携を活かして貧困などに苦しむ多くの人々に向き合っていくこと、そんな具体的行動が私たち僧侶に求められていると認識しています。すでに若い仲間たちはさまざまな活動を行い、目線と気持ちを身近にいる「弱い立場の人々」に近づけようとしています。社会もそれを応援してくれる時代になってきました。私は苦しみを抱える人から頼って貰えるような、そういった信頼関係を若い住職たちに取り戻してもらいたいのです。全日仏青を挙げて社会との信頼関係を醸成して、「困ったらお寺に行こう」という発信を広く届けるつもりです。

二つ目の「日本仏教の今を世界に」については「和をもって貴しとなす」、つまり 「和を重んじる」という日本人の精神文化 の深い部分を世界へ伝えようということです。私のおります四天王寺は聖徳太子建立と伝わり、太子が説いた和合の心を特に大切に考えています。世界の国々は今、憎しみや反目による緊張感に包まれています。そんな時代に仏教徒の一人として日本にいることを鑑みれば、私達が持つ「融合」や「和の精神」を平和への一つの手がかりとして、世界中の人々へと伝えられ たらと思うのです。

編集部   これまでの「安寧僧の養成」「諸宗教との対話」は引き継がれるのですか。

倉島理事長   僧侶にとって「終末の現場 にどう携わっていくか」は非常に大切なことですから、「安寧僧の養成」には引き続き取り組みます。「諸宗教との対話」については諸宗教対話委員会で、「私達が生活で触れる機会の多い神道と交流するこ と」「日本の他宗派同士が交流を深めること」を目指し、共同研修会や勉強会の開催を要望しました。2007(平成19 ) 年 11 月 18 日にダライ・ラマ法王を伊勢神宮にお招きした「伊勢国際宗教フォーラム」において、ダライ・ラマ法王が仰った 「調和」「対話」ということを、まず私達が率先して日本の中で取り組み、世界規模の困難に仏教徒として立ち向かっていく。 そのためにも仏教と神道はより深く交流しなければなりません。

巻頭003

お寺の存続に必要なことは
「時代の要請」への柔軟な対応

編集部   現在お寺が置かれている状況について、どのように捉えられていますか。

倉島理事長   これからのお寺は、地域や さまざまな組織と積極的に共同していかないと、本当に大変なことになります。そ の為には「お寺をどう持続していくか」というスタンスと、「時代の要請」というキー ワードが重要です。お寺は時代に求められ、要望に合わせた存在であるべきで、それによって住職の采配も変化します。時代とともに変わる要望には柔軟に対応し ていかねばなりません。観光もそういった要望の一つでしょう。

編集部   「観光と信仰とは相容れない」 という声もありますが、その辺りはどのようにお考えですか。

倉島理事長   現在のお寺には多くの観光客が来られます。お酒を飲んで「団体ツアー」のような形で来られたら、さすがにお寺と相性は悪いでしょうし、それが続くと「あんな人達に来てほしくない」となります。しかし、ストレス社会の日本ではお寺の果たすべき役割は大きいはずです。だから、お寺はそれを放置するのではなく、敬意を持って訪れてもらえる工夫をするべきです。旅行会社に観光団体をどのように誘導してもらうかも一策です。 そんな工夫の一つとして今期取り組んでいる事業に「巡礼本の発行」があります。 全国のお寺でどんな「行」が体験できるのか、それをお坊さんと一緒に体験できるというものをまとめた本を出版し、そこから 「観光」に入っていこうと思っています。ただ「行」を特集するだけでは面白くあり ません。ターゲット層に若い女性も想定しているので、女性に喜んでもらえるものも考えます。こういったことはお坊さんの センスや思いつきだけでやろうとすると失敗するんですよ。だから、本の発行も切り口もちゃんとプロの手を借りて、そのコンセプトの中で、私たちが「行」と「付加価値」を提供していきます。

観光の一環としての「行」で
お寺と参拝客との関係性を深める

編集部   「行」というとどんなものをご提 供されるのでしょうか?

倉島理事長   「行」を観光の一環として考えたときは、1時間半から2時間程度で、写経や瞑想、坐禅、お茶などがあり、そこに「お坊さんが一緒にいる」という切り口を加えます。建物を見て、仏像を拝んで、「はいサヨウナラ」ではなくて、住職と話すという関係性にまで持っていかないと「お寺の良さ」はわかってもらえません。「お茶を一緒に飲むだけで急に距離が縮まる」ということがあるでしょう。もちろ んこれは全てのお寺が主催するのではなく、参拝客が見込めるお寺を選び、周辺 のお坊さんたちには「行」の指導、接客や参禅の手伝いをしてもらう。人が集まるようになったら宿坊を設けるなどの事業展開や新しい雇用も考えられます。この形ならば檀家が減っている地域の若いお坊さんにも役割が生まれるでしょう。さらに他団体や他業種との接点も増え、お寺にもちゃんと還元できる「観光の仕組み」 が出来ると思います。

編集部   そこまでいくには時間が掛かり そうですね。

倉島理事長   はい。ですから、この計画 は段階的に進めます。まず、全日仏青として「巡礼本」を成功させて、お寺に人を集めて「行」を体験してもらう。更に 2020年までに英語版を作り、海外からの観光客対応の経験も積む。今はその流れの中で、「修行ができる」「体験がで きる」というステップをつなげていく段階 です。その後は、中途半端な状態で超宗派活動にすると散漫になりかねませんから、まず私が所属する曹洞宗で先進的な実験として進めてみたいと思っています。自分が責任を取れる範囲で種を撒いて、有志で力を合わせて成功事例を出す。そこへ向けて取り組んでいきます。

編集部   企画などをプロに任せるという のは面白いですね。

倉島理事長   お寺の中でも、住職は「行を通じて地域を救おうとする存在」を目指し、仏教徒としての信仰を以て地域の 安寧を図ることに尽力する立場です。で すから、付帯する経営や運営はプロに任せるのもよいと思います。分業するということです。檀家などの周囲からの協力や アドバイスで時代に合わせた寺院運営を行いながら、住職はよりシンプルに祈りを深めて、仏教者・宗教者としてのプロになっていくというのが私の理想です。また テクノロジーの力を借りるときにも才能を持つ人材やプロがいれば安心です。彼らのアイデアを反映した新しい法要の形を模索したり、ネットでの発信コンテンツの充実も果たせます。もう一つ、私はアートとお寺は相性がいいと感じています。アー トを切り口としたお寺での面白い試み、古いものと新しいものの融合は、日本仏教というものの新たな切り口となるはずです。

 

巻頭004

時代がどんどん変わる
若い感性の私達が変わることで
寺の在り方も変わる

編集部   そういったことは「若い感性」が必要ですよね。

倉島理事長   そうです。ですから、「私達が今変えていかないと、変わらないともう駄目だ」と若い僧侶の頑張りに繋がるのです。経済が発展して物質的な満足を求めていた時代は、お寺の維持さえ考えればそれで良かった。しかし今は心の救済が 求められる時代です。いま私達が仕事をしないとお寺の出番は未来永劫なくなります。時代がどんどん変わり、人工知能などのテクノロジーも発達し、人の心を新しいデジタルテクノロジーが救済し始める時代がくるとしたら、お寺は必要なくなってしまうかもしれません。

編集部   そのような新しい考え方に対して、皆さんの中で捉え方が随分違うので はないですか?

倉島理事長   もちろん。人間が互いの違いを挙げればキリがないものです。ただ、 東日本大震災の後の祈りの場では、その 違いなど関係なかったことを思い出してほ しいのです。お坊さんにとってその経験は大きなものでした。みんなが本気で力を 合わせて「心底から祈る」。そのときの集約したエネルギーは素晴らしいものでした。あの経験は大きな転換点だったかもしれません。だから、明確な中心コンセプ トが設定できれば、みんなが同じ方向で 頑張れるはずです。みんなが努力するためには、価値判断のベースとなる明確な中心コンセプトが絶対に必要です。

今すべきことは情報の発信
「世界仏教徒会議・世界仏教徒青年会議 日本大会」
開催に向けて支援を広げる

編集部   中心コンセプト以外に必要なものは何かありますか?

倉島理事長   最近は昔のような法話会を開いても参加する人は僅かです。お寺から主体的に新しい時代との接点を考えないと何も引っかかってこない。ですから、 周囲の人たちがどういう状況に置かれ、 何をお寺に求めているかを見抜く目が必要です。実際に坐禅や自己鍛錬を多くの人が求めています。「元々お寺は地域のもの、地域の財産である」という原点に帰れ ば、「住職は何を還元できるか」に思い至り、そこから最適なバランスが見えてくるんじゃないかと思います。また大学などの教育機関や一般企業、さまざまに活動している多くの若い人たちなどを、如何にお寺と結びつけるかを考え、普段の交流を増やして仕組みを作り上げることも重要で、それは発信の土台にもなります。この仕組が出来たら、海外から訪れる人々に対する障壁、つまり異文化交流でのマナーや意思疎通の難しさにも対処できま す。ガイドさんや人と人の仲介などの地域や周りの協力があれば、外国からの来訪者の受入もうまくできるでしょう。それともう一つ大切な要素があります。どのような組織でも継続のためには、参加者に対する「何らかの還元」が要求されます。さまざまな活動への積極的な参加には、「努力に対する感謝や報酬」という還元を忘れないことが大切です。

編集部   最後に、これからの活動で注力する点などがありましたらお話下さい。

倉島理事長   これまでよりも多くの活動が住職に求められる時代ですが、中でも情報発信を怠らないことを心がけたいと思 います。例えば、毎年春に東大寺で行われ る「仏法興隆花まつり千僧法要」は、一般にはその存在があまり知られていません。また、今年の 11 月5日から9日にかけての 5日間に日本で開かれる「世界仏教徒会議・世界仏教徒青年会議 日本大会」もそうです。そこには非常に多くの人々が集まり祈りを捧げますが、「関係者だけしか知らない」のが現状です。「これだけ素晴らしいことをやるんですよ」と一生懸命広報し、 多くの人々からの理解と支援をいただけるように頑張って参ります。

 

巻頭006
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2018-01-10 | Category インタビュー

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