「お笑い神事」で感謝の心を。河内國一之宮 枚岡神社 中東 弘(なかひがし ひろし) 宮司


古い文化と新しい文化を融合させた、新しい神事。

河内國一之宮枚岡神社(かわちのくにいちのみや ひらおかじんじゃ)は、神武天皇が即位される三年前に創祀された、大変格式高い神社の一つです。
そんな枚岡神社では現在、伝統に新しい試みを融合させた参加型の神事を開催するなど、神道の心を積極的に発信されています。その取り組みの先頭に立つ中東宮司に、お話をお聞きしました。
 

2017-03-03_153636中東 弘(なかひがし ひろし) 宮司 御神木の百槙(びゃくしん)の前で

編集部: まずは枚岡神社の御由緒をお聞かせください。

中東宮司:神話によりますと、 神武天皇 (神倭伊波禮毘古命(かむやまといわれびこのみこと)) は、日本の国を治める為、日本のほぼ中央である大和をめざされます。
しかし、生駒の豪族であったナガスネヒコが阻止。そこで神武天皇は建国への願いを込め、天の岩戸を開いた天児屋根命(あめのこやねのみこと)をお祀りしたのです。
これが枚岡神社の創祀とされています。 その後に、熊野や吉野などをまわり、橿原に辿り着き建国されました。今年建国されて2677年。枚岡神社はその3年前にお祀りされているので、ご鎮座2680年になるとても古い神社です。

編集部: 長い歴史のあるお社ですが、近年は神話に因んだ新しい神事に積極的に取り組まれています。

中東宮司:日本の文化は神話とつながっています。たとえば、神社のお祭りでは榊を立て、五色の布と、三種の神器を飾ります。 当たり前の光景ですが、 元を辿れば全て神話につながります。
素戔嗚尊(すさのおのみこと)の乱暴な振る舞いによりお隠れになった天照大御神(あまてらすおおみかみ)にお出ましになっていただくために、お祭りが行われます。その際に飾ったものが榊、五色、三種の神器なのです。
それが現代に続いているということは、今も日本の国は神代の延長だということです。
日本にはこうした神話の時代から大切に守られてきた古い文化があり、一方で新しい文化もある。神社においても、伝統神事や風習を残しながらも、時代時代の人々の心に合った魅力あるものを作らなければいけません。
不易流行がなければ、神社といえども人々の心を捉えられず、滅んでしまいます。

編集部: 「お笑い神事」はまさに古いものが新しく発展したものです。

中東宮司:神話の天の岩戸開きでは、天照大御神が二度とお隠れにならないように縄を張ります。これが注連縄(しめなわ)の起源とされています。このシーンに因んで、枚岡神社では正月を迎える際、新しい注連縄をかける「注連縄掛神事(しめかけしんじ)」を伝統行事として行っており、その中で「あっはっは」と笑う「お笑い神事」がありました。これは、天照大御神を誘い出すために神々が踊りに合わせて大声で笑い続けたことを由来とするものです。

私が枚岡神社に入った8年前は内輪だけで笑っていたのですが、それではもったいない、日本の文化を知る良い機会だと、一 般の方にも参加していただくようになりました。近年は外国の方にも参加していただき、昨年は新しく「天の岩戸開き神事」(詳細は情報誌・寺社Now vol.13「枚岡神社 注連縄掛神事(しめかけしんじ)」参照)も行いました。

s__MG_4791

編集部:  昨年は約3000人の方が20分間も笑い続けたそうですね。笑い続けるコツがあるのですか?

中東宮司: 感謝の気持ちを持つことです。不平不満があると笑い続けられません。道化を見て笑うのも違います。
私は皆さんに、神話のお話をして、「生かされて今ここに居あわせていることがどれだけ有り難いか、感謝しましょう」と伝えています。
最初の5分はすごくしんどいのですが、だんだんと神気が体に満ちてきて、無心に笑っていると、心の岩戸が開かれるのです。そして、すべてが大調和し、気持ちが高揚して、終わる頃には「アンコールを」という声もかかるんですよ。
そもそも神話の世界では、「感謝」が当たり前にありました。植物を育てる土には埴安姫神(はにやすひめのかみ)、生命を育む水には罔象女神(みつはのめのかみ)など、我々を生かしてくれている目に見えない働きに神様の名前をつけて感謝してきたのです。しかし、現代は感謝の気持ちが希薄です。
 

神道の心を伝える場を創出。美しい国、日本を守り、未来につなげるために

編集部: 感謝の気持ちが希薄な現代、それはどんな時代なのでしょうか?

中東宮司:目に見えないものを忘れ、目に見える「物」だけを追い求めてきました。物が手に入れば幸せになれると。そうした結果、地球的な規模で破壊が続き、自然が脅かされています。人々はストレスやうつで苦しんでいます。
目に見えない自然の力や体の奥にある無限の能力を信じてきた神道の心は、環境や心の元気を取り戻すには 一 番です。

編集部: そういった神道の心を伝えるために開催されている「巫女研修」や「子供ひらおか塾」、「禊研修」や「断食研修」などが大変盛況ですね。

中東宮司:やっと皆さんも 「このままではだめだ」と気づき始めたのではないでしょうか。
21世紀は女性の時代です。巫女研修では、日本の歴史や神話、お笑い神事の実践、礼儀作法、祝詞の奏上や瞑想など、一日かけて日本の文化を学びます。
国家の基本は家庭ですから、女性が学んだことを子供に伝え、日本の再生につなげてほしいと思っています。
巫女研修は大変好評で、今では口コミで遠方から参加される方もいらっしゃいます。また、これまで参加してくれた女性の皆さんが神事の時には手伝いにきてくれ、非常に大きな力になっています。

「子供ひらおか塾」では、枚岡神社の森の中で子供たちに神話を教えています。近年は神棚や仏壇のない家庭で育つ子供たちがほとんどで、手を合わせる習慣がありません。そういったことからも感謝の気持ちが薄らいでいるのです。

神道を通して、見えない世界の素晴らしさを知って、やはり日本の未来につなげてほしいと願っています。

編集部: 最後に、若い世代の方々、特に神職の方々へのメッセージをお願いします。

中東宮司:私たちの祖先は、目に見えるものだけではなく、見えないものも感性で感じ取ってきました。この世は幽顕一如(ゆうけんいちにょ)です。見える、見えないどちらの世界も学び、先人が築いた知恵の上に、新しく創意工夫をし、魅力をつくっていく。
そうして、美しい日本の文化を子供たちに伝えてほしいと思います。21世紀は神道の時代でもあるのです。
 

s_2N2A1172河内國一之宮 枚岡神社
〒579-8033 大阪府東大阪市出雲井町7番16号
TEL.072-981-4177
ホームページ:http://www.hiraoka-jinja.org/
 

情報誌・寺社Now vol.13「インタビュー 」 より

2017-03-06 | Category インタビュー

関連記事

Comment





Comment