香川県知事 浜田恵造 × 四国八十八ヶ所霊場会会長 医王山 多宝院 甲山寺住職 大林 教善 特別対談企画地域ブランドの創生~香川県~


地方のトップである知事とその地域にゆかりある寺社の方々をお招きし、観光、地域と寺社の活性化について語り合う特別対談企画。
今回、香川県知事・浜田恵造氏と四国八十八ヶ所霊場会会長・医王山(いおうざん)多宝院(たほういん) 甲山寺(こうやまじ) 大林教善住職との対談が実現しました。
昨年、「四国遍路(逆打ち)」、アートイベント「瀬戸内国際芸術祭」の開催が話題を呼び、観光客数が大幅に増加した香川県。このような観光誘致の成功要因や地域ブランドの創生、寺社と地域との連携について、さまざまなテーマでお話しを伺いました。

s_s_特別対談-メイン
 

日本一小さな県・香川県の躍進、そして三つの取り組み

編集部:  現在、香川県では「うどん県」、「四国遍路(逆打ち)」、「アート県」などをテーマに観光客の誘致、県としてのブランディングの側面においても全国はもちろん、海外からも注目を浴びています。これらの取り組みにおける成功要因とは何かお聞かせください。

浜田県知事: 昨年(2016年)はご指摘の面で大きな取り組みがあった年です。今や香川県を代表する名物「讃岐うどん」。これは全国区でも知られており、それを活用して、香川県の知名度が上がりました。
そして、3年に一度開催される「瀬戸内国際芸術祭」、4年に一度の四国遍路「逆打ち」、昨年はこの二つのイベントが重なる12年に一度の貴重な年でした。片や瀬戸内海と多島美と現代アート、片や四国八十八ヶ所の四国に根ざした庶民信仰の伝統、この二つがコラボレーションしたように思います。
いずれも、香川県ならではの地域資源をうまく活用できたことが、大きな成功要因となったのではないかと思います。

編集部: 昨年は4年に一度の四国遍路「逆打ち」の年でもあったことから、巡拝者の数も増加したと聞いております。香川県、四国全体の取り組みにより霊場会への影響、寺社において観光客の増加など感じられたことがあれば、お聞かせください。

大林住職: そうですね。昨年は4年に一度の閏年(うるうどし)、逆打ちの年ということもあり、八十八ヶ所霊場の八十八番札所から一番札所へと反対にお遍路さんが巡拝される年でした。
さらに昨年は「瀬戸内国際芸術祭」の開催年でしたので、例年より多くの訪日外国人が札所を訪れていると感じました。また、個人で巡拝される方が非常に多かったことも特徴だったと思います。
芸術祭と共に若い方が多く香川県を訪れ、いつもと違った印象を受けましたね。これも香川県をはじめ、さまざまなメディアなどにも取り上げられ、PR効果が大いにあったと感じています。

編集部: 若い方や個人での巡拝者も増えているのですね。メディアなどで訪日外国人が巡拝されている姿を目にすることがありますが、外国人の巡拝に関してはどう感じられますか?

大林住職: 先日もフランスから来られた方がいました。みなさん「四国はいいですね」とおっしゃいます。私は霊場巡拝と祈りに対するお気持ちに国境の差はないと感じております。
巡拝をされることで、海外の方にさらに日本の文化を身近に感じていただけると嬉しいですね。
 

s_特別対談-甲山寺本堂1甲山寺本堂

編集部: 国内外問わず、誰もが訪れて楽しめるのが香川県の良い所なのですね。では、香川県をさらに活性化させるための課題、また新たな施策などはお考えでしょうか。

浜田県知事: そうですね。観光客の方に「うどん県=香川県」というイメージは、定着しつつあります。しかしながら、その他のイメージは讃岐うどんに比べ、まだまだ認知度が低いと感じています。現在の香川県のキャッチコピーである「うどん県。それだけじゃない香川県」という言葉が示す通り、県内の魅力は他にもたくさんあります。

また、これらの地域全体のブランドイメージを高める施策を進める中で、人口問題への対応などにも繋げていきたいと思います。移住定住者やUターンの若い方など、香川県に住みたいと感じていただけるよう魅力をアピールしており、そのためにも、まずは日本一小さな県・香川県に足を運んでいただき、その良さを体感していただきたいと考えています。

編集部: なるほど。確かに県外者からすれば、讃岐うどんのイメージがかなり強いのは確かですね。具体的にどのような点をPRして行きたいとお考えでしょうか?

浜田県知事: “うどん以外に何があるのか”という課題の中で、力を入れているのがアート、「瀬戸内国際芸術祭」に繋がるわけです。開催期間中だけでなく、建築や美術館で常時展示されている作品なども世界から注目されています。
県内には美術館が数多くあり、美術誌などでも「日本の美術館」という特集の中で香川県の美術館を何度か取り上げていただいています。例えば直島の「地中美術館」や丸亀市(まるがめし)の「丸亀市猪熊弦一郎(いのくまげんいちろう)現代美術館」などで、小さな町にもこれだけ多くのアートが身近にある県という点をさらにアピールしていきたいですね。

また、訪れた方がインターネットやSNSなどで香川県のアートシーンを発信していただくことで、本県の知名度、印象度の一層の向上を図っていければと思います。

s_特別対談-国境を越えて

s_特別対談-瀬戸内アジア村2瀬戸内国際芸術祭の様子

 

世界遺産登録という大きな課題寺社と行政の連携が要に

編集部: 最近では、四国遍路の世界遺産登録に向けた動きも大きな話題になりました。昨年8月には文化庁に新たな提案書を提出されたとお聞きしましたが。

浜田県知事: はい。世界遺産登録に関する新たな提案書を作成し、四国四県の知事が揃い、文化庁長官にお渡ししました。
また、世界遺産「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」が所在するスペイン・ガリシア州と四国四県が世界遺産登録に向け、協力協定を締結しました。さらに、国内第一号の日本遺産にも認定され、全国で7ルートしかない広域周遊観光ルートに選定されたことなどを活用し、四国遍路の魅力を積極的に国内外に発信したいと考えています。

 今後は文化庁から示された、世界遺産への登録に向けた課題を一つ一つクリアし、これまで以上に四国四県が団結し、真摯に取り組んでいきます。第3回目の「瀬戸内国際芸術祭」が昨年秋に終了し、今後はこの結果を分析しつつ、一層の機運醸成を図り、一刻も早い四国遍路の世界遺産登録を目指し、推進していきたいと思っております。
さらにはアートの一環として、寺社建築の素晴らしさを海外の方や国内の若い方にも興味を持っていただけたら嬉しいですね。

編集部: 文化庁長官を訪問された際には四国八十八ヶ所霊場会会長として大林住職も同行されたとお聞きしました。四国遍路の世界遺産登録に向け、霊場会でも新たな取り組みなどがあればお聞かせください。
 

s_特別対談-8月8日有楽町駅前昨年8月8日有楽町駅前での世界遺産登録推進キャンペーンの様子

 
大林住職: 四国八十八ヶ所霊場会も推進協議会の構成員として、この活動に協力すると共に、四国遍路が世界に誇る生きた文化遺産として、未来へ保存、継承されて行くことを悲願しております。
さまざまな宗派がありますが、四国(八十八札所)の霊場寺院が一つとなって活動できるよう努力しております。一刻も早く暫定一覧表に記載され、世界遺産に登録できるようにと願っております。

浜田県知事: ご住職がおっしゃられたように、四国が世界遺産登録を目指す目的は、四国が誇る文化遺産を未来へと保存していくこと、そして継承していくためであり、将来的にはこういった取り組みが地域の活性化へと繋がっていくものだと思っております。

編集部: なるほど、四国遍路の世界遺産登録に向けた動きは四国四県の大きな課題となっているのですね。では、世界遺産登録に向けた活動は具体的にどのようなことを行っているのかお聞かせください。

浜田県知事: 事務局を香川県に設立し、「世界遺産登録推進協議会」において構成資産でもある札所寺院や遍路道の学術調査、四国遍路の調査研究を進めています。また、歩き遍路のための受入体制の整備や世界遺産登録に向けた活動に関する普及啓発活動も行なっています。

編集部: 香川県は霊場会や地域の方々などと密に連携されていることがよく分かりました。
それでは、アート県として小さな美術館などが注目されているように、四国八十八ヶ所以外の香川県内の寺社の魅力を多くの方に知ってもらい、足を運んでもらいたいと思うのですが、そういった面における地域資源の活用施策、観光事業についてお聞かせください。

浜田県知事: 香川県には「こんぴらさん」の愛称で親しまれている守り神である「金刀比羅宮(ことひらぐう)」があります。1368段も続く階段を登り、参拝することで全国からも通年を通し、多くの観光客の方が訪れる観光地となっています。
そこで以前より金刀比羅宮や琴平町のご協力のもと「金(ゴールド)」をモチーフとして、香川県の新たなる魅力を発信する活動「ゴールドプロジェクト」を展開しています。参道にゴールドの案内状を設置し、観光案内所で金色のレンタサイクルや金色の杖を貸し出している他、ゴールドプロジェクト認定商品などの販売などを行っています。
地域全体が積極的に活動に賛同してくれたことにより、新たな地域資源へと繋がっているように感じます。

 香川県には善通寺(ぜんつうじ)周辺や高松市にも八栗寺(やくりじ)など、伝統のある寺社が数多くあります。そういった文化資源を地域資源として掘り起こし、地域活性化へと繋げていく必要性があると感じています。
また、県産品を活用した施策にも力を入れており、積極的な連携、誘客を図り、将来的に交流人口の増大に繋がっていければと思います。

大林住職: 我々霊場会としましても、四国遍路の魅力をさまざまな機会をとらえて発信することの必要性を感じているところです。2023年には弘法大師1250年の誕生祭があります。
宗派にとらわれず、歴史が受け継がれ、これから未来へと紡ぐためにも大きなイベントとして、地元や行政、霊場が一体となり、積極的に地域のPRをしていきたいですね。そうすることで霊場会、寺社のみならず、四国全体の活性化にも寄与するものだと思っております。

浜田県知事: そのためにもまずは世界遺産登録への目標を実現することですね。地域に溶け込んでいる、素晴らしい庶民信仰は文化的な価値があると思います。
日本の観光の中心は神社仏閣。寺社などの連携をさらに拡充していき、日本が誇る文化寺社の良さを発信し、これからの未来へと繋げていきたいと思います。
 
 
-新たなテーマを掲げ、地域の活性化のため寺社と県の連携が円滑な関係の印象を受ける香川県。四国遍路の発展のため、「世界遺産登録」へ目標を掲げ、地域全体が一丸となって地域ブランドを広めたいという熱い想いが浜田県知事、大林住職の対談を通して伝わってきた。
今後は民間企業とも連携した取り組みを積極的に行っていきたいと最後に語った浜田県知事。今後の香川県の新たな観光事業、地方創生への取り組みに注目したい。
 

「四国遍路の世界遺産登録に向けた活動が今後の最重要課題です」
プロフィール 浜田 恵造(はまだ けいぞう) 
1952(昭和27)年1月10日、香川県観音寺市生まれ。東京大学法学部卒業。
1975(昭和50)年4月 大蔵省入省。1986(昭和61)年6月 大蔵省主計局主査(農林水産担当)。
1987(昭和62)年7月 大蔵省主計局主査(地方財政担当)。
1990(平成2)年4月 山形県総務部長。
1996(平成8)年8月 大蔵省理財局国債課長。
2002(平成14)年7月 東海財務局長。
2003(平成15)年7月 地方分権改革推進会議事務局次長。
2007(平成19)年4月 東京税関長。
2008(平成20)年7月 日本高速道路保有・債務返済機構理事。
2010(平成22)年9月 香川県知事 (1期目)。
2014(平成26)年9月 香川県知事 (2期目)。

「芸術祭の開催に伴い、若い方が四国遍路に興味を持つ良い機会となりました」
プロフィール 大林 教善(おおばやし きょうぜん)
1945(昭和20)年11月11日生まれ。種智院大学卒業。
1971(昭和46)年 甲山寺に晋山(しんざん)。以後、全青連副理事長、善通寺派庶務部長、善通寺執行等を歴任。
2006(平成18)年から随心院流小野講傳所伝授阿闍梨となり随流一流伝授を成滿。
2008(平成20)年に御修法大行事を実施。
2012(平成24)年に随心院寺務長、
2013(平成25)年に御修法別当、四国霊場讃岐部会会長、保護司(法務大臣表彰)、善通寺市文化財保護審議委員会委員長。
現在、四国霊場第74番札所甲山寺住職。

情報誌・寺社Now vol.13「特別対談企画~」 より

2017-03-06 | Category スペシャル

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