法隆寺の秘仏を開帳せよ!直木賞作家・永井紗耶子の歴史群像小説『秘仏の扉』

直木賞作家・永井紗耶子の新作『秘仏の扉』が刊行された。本作は、明治時代の廃仏毀釈を背景に、奈良・法隆寺の秘仏「救世観音像」の開帳を題材とした歴史小説である。激動の時代に文化財を未来へ引き継ぐため奮闘した人々の姿を描き出した。

物語は、「秘仏の扉を開けば仏罰が下る」とされていた救世観音像の開帳をめぐる実際の出来事をもとに構成されている。エルネスト・フェノロサや岡倉天心、九鬼隆一、町田久成といった実在の人物をモデルにしたキャラクターが登場し、それぞれの視点から文化保存の意義が掘り下げられている。秘仏を「開いて守る」という行動が、次世代への継承にどう繋がったのかが物語の軸となる。

登場人物たちが同じ秘仏を見ながらも、異なる感情や価値観を抱く点も興味深い。一方は「国の宝」と称え、もう一方は「恐ろしいもの」と感じる。こうした多様な解釈を通じて、美や文化の受け止め方がいかに多面的であるかが浮き彫りになる。

『秘仏の扉』は、文化財保存に尽力した人々の信念と選択を描き、歴史の中で文化がどのように継承されていくのかを問いかける。激動の時代における彼らの姿は、現代の私たちにとっても多くの示唆を与える作品といえる。

▪書誌情報
タイトル:『秘仏の扉』
著者:永井紗耶子
出版社:文藝春秋社(2025/01)
定価:1,760円
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監修:全国寺社観光協会

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