寺社彩々!花手水に誘われて #7 札幌諏訪神社(北海道札幌市)いつ何度訪れても楽しい!地域の憩いの場を目指して

禰宜の北方さんはある時、複数の神社で一斉に花手水を行ってはどうかと思いついた。そこでさっそく、札幌市内の神社に声をかけたところ、9つの神社が参加を表明。2020年7月の3連休に「花手水めぐり」というイベントを開催するに至った。

これが地元テレビで放送されたことで、それぞれの神社で参拝者が急増した。その結果、「これほど多くの人に喜んでもらえるのなら」と定期的にイベントを実施していくことが決定した。以来、複数の神社が合同で行う花手水を「花詣(はなもうで)」と称し、今年7月には第4回が開催されている。

7月前半は、さまざまな種類のひまわりが浮かべられていた。期間を限定して花手水を行っている神社が多い中、札幌諏訪神社では華やかで手入れの行き届いた花手水を一年中見ることができる。花手水の様子は、朝と夕方の1日2回、欠かさずチェックをしているという。特にいまの時期、暑いと花がすぐに傷んでしまうため、状態を見ながら2、3日に一回は花の入れ替えを行っている

北方さんお気に入りのデザインのひとつに、薔薇だけでしつらえた花手水がある。費用が少々かさんでも、参拝者に喜んでもらうことを優先し、納得がいくまで工夫を重ねている(写真:札幌諏訪神社提供)

最近は、22時までのライトアップも行っており、日中とは違った花手水の姿を見ることができる。水中のライトは数秒ごとに色が変化する。チャレンジしてみたいデザインは尽きることがないという。「お正月で使った門松をのこぎりで切って、花手水の飾りにしたこともありました。イベントや季節を意識しながら、数ヶ月先のデザインをずっと考えているのですが、楽しく続けられています」

当初、装飾は簾(すだれ)のみだったが、次第に提灯や鯉のぼりなど季節に応じた装飾が追加され、いまでは番傘の飾りも定番になった。また最近はセンサー式の手水が増えているなか、手水を常に流すことにこだわっている。
「流し続けることで手水が循環し、常に新しくてきれいな状態を保てるところが手水のいいところだと思っています。その方がお花も嬉しいと思いますし」と北方さん

昨年から始めた「クリア御朱印」や「切り絵の御朱印」は、季節や暦に応じて限定のものも出される。「いつ何回来ても、楽しんでもらいたい」(北方さん)

境内ではコーヒーショップもイベント開催!札幌諏訪神社から徒歩3分の所にあるCOFFEE PICTURESの店主・北野さんとは、店舗オープン時のお祓いをきっかけに出会った。コーヒーのほかにも近所のイタリアンレストラン製のパストラミ・サンドなども販売(諸般の事情により現在休止中/2022.7.22時点)。地域を巻き込んで心休まる憩いの場をつくろうとしている

「昔は地域の中心に神社がありましたけど、いまでは神社にいくのはお正月だけの方がほとんどだと思います」と、地域における神社の立ち位置の変化について話す禰宜の北方さん。

核家族化が進むにつれて、近所の神社にお参りする習慣が受け継がれなくなり、七五三などの行事がイベントとして、神社から切り離されていってしまったことに、さみしさを感じている。

「もっと気軽に足を運んで、神社という場所に親しんでほしい」

花手水をはじめ、神社での過ごし方の選択肢を広げることが、人が集う場としての神社を取り戻すきっかけになる。そう信じて、北方さんは今日もまた手水舎を季節の花々で彩っている。

札幌市東区にある「札幌諏訪神社」は、今年で鎮座140年を迎える。諏訪神社の名は、明治時代の開拓者であり、起業家の草分けとしても知られる上島正(かみじま ただし)氏が、信州信濃の官幣大社諏訪神社(現・諏訪大社、長野県)から分霊を勧請したことに由来する。 上島氏は、信濃から単身北海道に移住、数年暮らしたのちに生活できると判断し、家族らを連れに郷里へ戻った。その際に、諏訪大社からの分霊も一緒にお連れした。一般的に諏訪大社からの分霊を勧請した各地の神社は、建御名方之命(タケミナカタノミコト)のみをお祀りする場合が多いが、札幌諏訪神社では、八坂刀売之命(ヤサカトメノミコト)と共に夫婦でお祀りしているため、縁結びや子授け、安産などにご利益があるとされている。北海道開拓が本格的に始まって約150年。諏訪神社のほかにも、道内で見られる「北広島」「新十津川」などの地名は、未開の地での新たな暮らしを求め、本州から移住してきた人たちの郷里から名付けられている

札幌諏訪神社

札幌市東区北12条東1丁目1番10号
TEL.011-711-0960
https://www.sapporo-suwajinja.com/

文・佐藤 遥
札幌在住のライター。出身は群馬県。音楽、特に、エレクロトニック・ミュージックについて執筆することが多い。最近は足を運んだ展示の雑感や日記をネットプリントで公開している。

▼寺社Nowオンライン連載「寺社彩々!花手水に誘われて」(花手水研究会)バックナンバー

速報レポート!華やかに出発進行「東急線 花御朱印巡り」沿線48寺社限定の特別花御朱印授与&花手水リレーも!

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