資産価値60億円の寺を継ぐのは誰だ!?本日開館!お寺系マンガ図書館 Vol.4『まんまんちゃん、あん。』

きづきあきら+サトウナンキ/作『まんまんちゃん、あん。』(幻冬舎コミックス、2008-2009年刊)

寺庭婦人会の研修会資料(一部)。「お寺の奥さんには、お寺の入り口を広げる役割が求められます」と奥様の責任重大ふうに書いてありますが、同時にご住職へ向けてのメッセージでもあります。未来のお寺のカタチはどんなですか!?と

もうひとつ、作品理解のためのポイントその②「お寺は世襲ではない」ですが、これは、ひょっとすると意外かもしれません。

実はお寺は原則的に世襲制ではなく、師から弟子へと受け継がれていくもの。形式的に、師である父から弟子の息子に受け継がれているという形がとられているので、一見すると外からは世襲に見えますが違うんです。

で、これの何が今問題なのかというと、結局①と大きく関連しているのですが、世襲が途絶えると、よそから住職がやってきて、前住職のファミリーはそれまでの住み慣れた寺を出て行かなくてはなりません。宗派にもよりますが明治維新以降、妻帯とそれに伴うお寺の世襲が一般的になっていますが、少子化などの現実と原則とが大きく乖離して辻褄が合わなくなってきているため、跡取りがいるかいないかが、お寺のお坊さんファミリーの明日の生活や老後の死活問題になってきています。

また檀家にとっても、世襲が途絶えて、どこからかやってくる知らないお坊さんを迎えることは不安でしかありません。できれば、生まれた時から知っている住職の息子が後を継いでくれるのがいちばん安心できます。

これに関して作中に象徴的なセリフがあります。
檀家総代が、めぐりとの結婚を拒み、世襲の考え方を否定する次男に対してキッパリ…

「寺の将来は、個人的にお前が決めるものではない。寺は法人(宗教法人)のものだ。わしらは『おまえにやらせてもいい』と言ってやってるだけだ。イヤなら出て行け!」と。

こういった現在の寺院の仕組みや抱えている問題を知っていると、たとえば作中で寺庭(住職の妻、めぐりの義母)が、長男亡き後になんとか次男を未亡人のめぐりと結婚させて後を継がせたいと願う言動なども理解することができるはずです。

だって、そうしないと、現住職に何かあったらすぐにでも追い出されて路頭に迷うことになるかもしれないのですから。

さあ!ということでまるで時代劇のようなこうした旧態依然とした世界の中で、登場人物たちは、みずからの人生と未来をどのように切り拓いていこうとするのか!? ロリ系の絵柄の好き嫌いがあるかとは思いますが、全3冊のショートストーリーなので、お寺のリアルに興味のある方はよかったら話のタネにご一読ください!

ちなみに、タイトルの「まんまんちゃん、あん」は、「なんまいだ(南無阿弥陀仏)」から変化した幼児語だそうで、西日本方面のちょっと上の世代ではよく知られているそうですよ。

堀内克彦(お寺漫画コンシェルジュ☆ほーりー)プロフィール
1978年生まれ、千葉県出身。株式会社寺社旅代表。寺院を活用した「お寺の漫画図書館」をプロデュースするほか、寺社好き男女の縁結び企画「寺社コン」の主催、仏前結婚式や樹木葬のコンサルティングなども手掛けている。また寺社体験紹介サイト「宿坊研究会」を運営。著書に『宿坊に泊まる』(小学館)、最新刊『お寺は外からこう見える 寺院活性へのヒント』(発行:真宗大谷派難波別院)などがあるほか、『月刊住職』で「やればできる!寺院活性化のケーススタディ」連載中。

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監修:全国寺社観光協会

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