住職はプレジデント!噂の香川・眞教寺「萬燈宿坊&珈琲店」に泊まって学んだイノベーティブな経営マインド

■ポイント3:新事業は、寺院からお金の動きを切り離す

計画では、平成29年の寺院改修と同時に新事業も始動させることにした。改修した庫裡は会館として貸し出せるようにし、併せて同年のカフェ開業、翌年には宿坊の開設だ。

宿坊は、庫裡改修の際に利用目的のなかった2階を中心に整備。庫裡の改修と同時に整備することで、コストを最小限に抑えることができた。

また宿坊を実際に運営していくにあたっては、世界各地のバケーションレンタルなどの民泊で当時急成長していたエアービーアンドビー(エアビー)を活用することにし、設備などもエアビーの基準に合わせた。ここにも佐々木氏の経営マインドが反映されている。

門徒や地域の人のためにも、寺院経営をおざなりにはできないと語る佐々木氏

「既存の仕組み(プラットフォーム)で素晴らしいものがあるのなら、それを活用する。これもビジネス的には当たり前の手法だと思います。田舎の小さな寺院が未経験で宿泊事業を始めても失敗する可能性が高い。だから実績も方法論も確かだと思えるエアビーで運営していくと決め、そのレギュレーションにのっとっていけば無理なく開設に漕ぎつけることができると考えました」

これら新事業は、先述のように佐々木氏の会社に運営を委託。その理由を佐々木氏は「寺院からお金の動きを切り離すため」と言う。

「例えばこれからは、葬儀が小規模になるでしょう。そうなると、これまでのように大規模な葬祭会館は需要が減ります。そこで寺院の門徒会館を、小規模葬を必要としている方や葬儀会社に貸し出せば、寺院は利用料を得ることができます。将来的にこのような会館運営ができることも想定し、改修計画を立てました。同時期にカフェと宿坊の開設も計画したので、それらが会館利用の付加価値となることも想定してのことです。さらに、寺院が人を雇って新事業をやっていては、人件費ばかりがかさんでしまいます。それを避けるために私の会社に業務を委託し、会社からは賃料を得る形にしました。そのうえで委託費用と賃料を相殺できるようにし、寺院経営からお金の動きを減らしていったのです」

収益事業をすべて寺院から切り離すことで、寺院がご門徒さんのための仕事に専念できる。加えて、委託先が寺院の人間の会社ならば、思いがブレることもない。この寺院経営からお金の動きを切り離す考え方は、次の10年を見据えた新たな計画でも踏襲している。

それが門徒の会員制度創設だ。

「毎年本山に納めるお金をご門徒さんに預かりに行きますが、ほとんどが年末の報恩講というお勤めと一緒に行っていました。ご門徒さんの中には、お金をもらうためにお参りに来てくれていると思う人もいて、ここにとても違和感を感じていたのです。報恩講は大切な行事ですから、お金のことを切り離したい。そう考えた時に、寺院が会員制度をとり、年に一度お預かりする会費として、本山へ納めるお金も含んだ金額を設定してはどうだろうと思い付きました。そのうえで会費を銀行振込にすれば、報恩講の際にお金を預かりに行かなくてよくなりますから、僧侶はお勤めに集中できるし、ご門徒さんも、我々がおうかがいすることにちゃんと意味を感じてくれます。もちろん会費は、萬燈珈琲店のドリンクチケットや会館利用料が含まれるなど、ご門徒さんのメリットを明確にしたうえでいただきます」

カフェと宿坊という収益事業を寺院経営とは別にした時と同じように、正しい形で宗教活動をするために、寺院の活動からお金の動きを切り離す。そこに、寺院の資産であるカフェや門徒会館の活用を付加していく。新たな寺院経営の形だ。ゆくゆくは、「今後はご門徒さんから寄付を一切いただきません、寺院の維持や活動はすべて会費でまかなっていきます。みなさんは会員ですので、いつでも好きなときに寺院へ来てください」と言えるようにしたいと佐々木氏。

「会費を払っているのだからカフェへコーヒーを飲みに行こうか、とご門徒さんが動いてくれるようになればうれしいですね。来ていただけることで、寺院へ相談しやすい環境も生まれると思います。また、寺院のある国分寺町では、若い世代が町を離れ、高齢者の割合が多くなっています。このままだと、門徒が亡くなったらご家族と寺院との関係も消滅してしまうかもしれません。そこで会員制度にしていれば、ご家族が町外から帰省した際にカフェを利用してくれる流れも期待できます。すると寺院側は、ご門徒さんの家族ともちゃんとつながることができます」

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監修:全国寺社観光協会

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