全国に広がる 「神社de献血」 。 穢れ(けがれ)とされてきたことを突破した宮司たちの決意と願い

社会貢献が神社を見直すきっかけに

「神社で社会貢献を」という土師宮司の決断があって実現した「神社de献血」だが、そこには、社会における神社の役割について日々考える土師宮司の強い思いがあった。

「30年後にはおよそ30%の神社がなくなるかもしれないと言われています。地方の過疎化や少子高齢化といった問題だけでなく、信仰心の希薄化、『神様にすがる』という感覚が薄れてきていることも、神社の存続に大きく影響しているでしょう。一方で、これまで神社はみなさまがお越しくださるのを待つという姿勢でした。社会福祉との接点も少なかったのではないかと感じています。だからこそ、ただ待つだけではなく、社会福祉に貢献することで、地域のみなさまに神社の存在意義を見直していただく機会につながってほしい。『卵が先か鶏が先か』ではありませんが、『神社がやっているから興味を持った』でも『こんな活動をやっていたことで神社に興味を持った』でも、それぞれの意義が伝って、足を運ぶ理由になればと思っています」

「神社de献血」の活動には各地で新たな神社が次々と加わり、毎月開催が続けられている。神社ならではの特別企画「献血スタンプ」を用意したことも功を奏して、献血イベントが開催されている神社を巡る人も出てきているようだ。テレビやSNSでも話題を呼んでいる。

浅草神社で献血した際にもらえる限定スタンプ

御朱印ではない、神社をめぐる新たなきっかけづくり

神社側からのお礼でもある「献血スタンプ」は、「神社de献血」をもっと知ってほしい、もっと広がってほしいという思いで企画された。

「最初は献血をしてくださった方に特別な御朱印をお渡ししようと考えたのですが、本来御朱印は参拝の証しなので、本来の意味とズレてしまうことが頭を悩ませました。『地域に貢献したいので献血はいいけど、御朱印はちょっと』という神社さんも少なくありません。それで、オリジナルスタンプを設けてスタンプ帳の配布をしたところ、集めてくださる方が増えてきたんです。最近では献血のために特別御朱印を独自に出される神社さんも出てきましたので、浅草神社でも、今後取り組んでいけたらと思っています」

土師宮司は「神社de献血」を企画した際、「神社の規模にこだわらない」ことを重視した。そのため赤十字の担当者には、あえて中小規模の神社から広げていきたいと伝えたという。なぜなら大きな神社が先に名を連ねてしまうと、それ以外の神社は「うちの規模でやっても役に立たないのではないか」と、および腰になってしまう。むしろ、地域に根ざした全国各地の神社で広がっていくことで、参画のハードルが下がり、独自の工夫も生まれていくのではないかと土師宮司は考えている。

「大きな神社は各地域にひとつあるかどうかというところも少なくありません。しかし大きさに関係なく、神社は全国どこの地域にも必ずあります。社会と神社の未来のためにも、この活動が全国に広がってほしい。それが私の願いです」

神社はこれからも地域とともにあり続ける。だから地域のために、できることを。「神社de献血」には、宮司たちのそうした思いと願い、そして決意が込められている。

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監修:全国寺社観光協会

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