②橋の下の野宿大師:別格第八番札所「十夜ケ橋」
▪寺名:正法山永徳寺(管理)
▪本尊:弥勒菩薩
▪宗派:真言宗御室派
▪住所:愛媛県大洲市東大洲1808
▪電話:0893-25-2530
▪霊場HP:https://www.bekkaku.com/?page_id=29
※永徳寺の許可を得れば橋の下で野宿も可
さて2つめは、別格第八番札所「十夜ケ橋(とよがはし)」です。
「橋の上で、杖をついてはいけない」というお遍路のルールをご存じでしょうか。その由来となったお大師さまの野宿伝説がこの札所に伝わっています。
それは、お大師さまが四国を巡錫(じゅんしゃく、僧が各地を巡り歩いて教えを広めること)していた時のこと。日も暮れたので宿を借りようとしたけれど、泊めてくれる家がありませんでした。そこでやむなく橋の下で一夜を過ごすことになり、その時にこんな歌を詠みました。
ゆきなやむ浮世の人を渡さずば 一夜も十夜の橋と思ほゆ
「ゆきなやむ浮世の人」とは、日々の暮らしで精一杯なため、ゆっくり考える時間もなく、悟りを得ることができず、迷い悩む衆生の民のこと。そうした人々を「渡さずば」、つまり、悟りの世界へと導き、心安らかな日々を送ってもらうには、どうしたらいいものだろうか…。そんなことを案じていたならば、「一夜も十夜の橋と思ほゆ」、たった一夜の野宿だったけれど、まるで十夜にも感じる長い時間のように感じた、といった意味になるでしょうか。
「十夜ヶ橋」という橋の名前と、「橋の上で、杖をついてはいけない」というお遍路のルールは、ここからきています。お大師さまが橋の下で、迷える私たちのために、祈り、考えてくれているかもしれないからです。その邪魔をしてはいけません。それに、杖をコツコツ叩くと、お大師さまのつかの間の安眠を妨害してしまいます。
そんなエピソードを聞いてから十夜ヶ橋の下を覗くと…。お大師さまが横たわってお休みになられているじゃないですか。それも、真新しい布団が幾重にも掛けられて。実はこれは「お加持ふとん」と言って、病気平癒や心身健康など願いごとがある人や、あるいは叶った人が、御礼に布団を作って被せていくんだそうです。
ということで、別格第八番札所「十夜ケ橋」の御朱印は、この野宿大師のエピソードをモチーフに描きました。日々あくせくと忙しく過ごしてしまい、ゆっくり考える時間を持つことができないでいる自分自身への戒めも込めて…。