防災だけではない活用も!井戸から始まるにぎわい創出

■事例2

復活した「防災井戸」を都会の子供の学びの場に

花園神社(東京都)

東日本大震災をきっかけに、都会の有事を守れる備えを

令和元年(2019)12月、テレビ東京が実施する井戸掘りプロジェクトの第2弾として、花園神社を舞台にした『新宿で井戸を掘る!』が放送された。その半年前に放送された第1弾の舞台は、六本木の天祖神社。共に、複数の地下鉄が通る大都会の真ん中に鎮座しており、「本当に井戸を掘り当てることができるのか」と、注目を集めた。

「天祖神社のプロジェクトは、息子とテレビで観ていました。『うちでもやってほしいな』と話していたところに、テレビ東京さんから声がかかったのです」と離す片山裕司宮司。

今年の4 月以降、井戸の背後に水神社を祀る予定。花園神社では毎年「酉の市」が開かれているほか、今年はオリンピックも控えているため、多くの人が集まる際にも役立つはず。「何かあった時にはお互い様で、地域で支え合っていきたいですね」と八代目宮司の片山宮司

花園神社は江戸開闢以前から400年以上にわたってこの町を見守り続けてきた地域の神社。昭和20年(1945)5月の米軍による山の手大空襲で新宿一帯が焼け野原となるまで、境内にも井戸があったという。

「以前にも、井戸の復活を考えたことがありました。ところが見積もりをとったところ、調査から掘削、設置までで600万円はかかるだろうと言われてしまった。その費用を捻出することは難しく、当時は諦めざるを得ませんでした」

片山宮司が井戸の復活を望んでいた背景には、東日本大震災があった。花園神社は広域避難所に行く際の一時集合場所に指定されているため、震災当日には多くの人々が集まってきた。

「集合場所に指定されていることはわかってはいたものの、実際に災害が起きた際の対処に慣れていたわけではありません。区役所にも応援を求めましたが、あちらもそれどころではない。結局自分たちで乗り越えなければなりませんでした。幸いにも同日中に交通機関は復旧し、みなさん帰宅されましたが、数日にわたって境内で避難生活を送っていただくことになった場合、対応しきれるかわからない。しかし、そんな時に井戸があれば、緊急物資が届くまでの2、3日は過ごせるのではないかと考えたのです」

拝殿の裏手には、新宿ゴールデン街がある。眠らない街の神社には、日々、さまざまな人たちが集まってくるため、井戸を中心とした場所が、憩いの場にもなっていきそうだ

井戸を神社の宝として、地域のために使っていく

実は、片山宮司には花園神社の井戸を復活させられる確信はあった。平成13年(2001)から始まった副都心線の建設時に水脈が確認されていたのだ。「それから20年近くが経っていたので、その水脈が枯れてしまっている可能性はありましたが、新宿でも井戸は掘れるという期待はありました」

井戸水は飲用には不向きだが、生活雑用水として使える。ポンプには「災害時協力井戸」の札も付けた

結果、5メートルほど掘り進めたところで水脈を発見。最終的には8メートルの井戸が完成した。井戸には、常時3.5トンの水が溜まり、毎分50リットルの水が流れてくる。「手押しポンプ式で水が出るようにしていただいたので、停電の際にも安心です。これで、1000人、2000人規模の人を一度に助けることができます」と片山宮司。

今後は神社の新たな宝として井戸のある環境を育てたいと言う。念頭にあるのは都会の子供たちだ。「水道から水が出ることが当たり前の環境で育つ現代の子供たちに、水を得ることの大変さやありがたさを知るきっかけを与えることができたらいいなと思っています。地域共同体の一部として、ここに神社がある意味を、今後も考えていきたいですね」

花園神社

〒160-0022
東京都新宿区新宿5-17-3
TEL:03-3209-5265
HP:http://www.hanazono-jinja.or.jp

費用のほかに許可申請も必要。井戸掘削に必要なこととは

井戸は私有地であっても、誰でも自由に掘削および利用していいわけではない。基本的には自治体への届け出が必要で、また自治体により規定が異なり、中には都道府県知事の許可が必要な場合もある。

加えて地下水汲上が制限されている地域もあるため、特に家庭でなく寺社の施設用に掘削を検討している場合は注意が必要。そのほか、地域によって下水道への排水に新しい設備を必要とする場合もあり、そうなると掘削後の負担が大きくなる。さらにほとんどの自治体では井戸水にも下水使用料がかかってくるため、掘削だけでなく井戸の維持費についても考えておきたい。

花園神社では自前で掘削した時の費用が600 万円程度と見積もりで出ていたが、これも掘削方法、深さなどで異なってくる。近年の井戸需要の高まりを受け、掘削費用がインターネットで公開されるようになってきた。一例を紹介すると、深さが50mより浅くて済む場合は1mあたり5,000 〜10,000 円、それよりも深くなると1mあたり15,000 〜20,000円程度となるようだ。この金額には人件費、材料費が含まれている。なお、20m 以内の浅い井戸を掘る場合は、上記の費用込みで20 〜50万円で頼めるところも増えている。

ただし、施設用と家庭用でも価格が異なり、手掘りは高額、パイプを地面に打ち込んでいくだけの打ち込みであれば安価というように工法でも違う。さらに掘削後の残土処理、ポンプ設置料金、給水設備工事、水質検査は基本的に別料金のため、一概に掘削コストの平均合計額は出せない。あくまで参考だが、深さ30m の施設用井戸掘削(ポンプ設置費込)の場合で約50万円は最低でも必要になるようだ。


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監修:全国寺社観光協会

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