伊藤比呂美さんは女の生き方の困難や絶望を詩とエッセイにしてきました。セックス、子育て、うつ、離婚、母と父と夫の介護と看取り……。50代を過ぎて、いよいよ自分を深くみつめるお経の言葉にひかれ、現代語訳にする仕事と格闘してきました。その集大成が、2021年11月5日に発売された新刊書籍『いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経』です。この10年取り組むお経の現代語訳とエッセイ、本人の朗読CDつきの一冊です。NHKEテレ「こころの時代 人生・宗教」では「わたしの言葉で語るお経」(11月14日、20日)で視聴者の関心をよび、11月26日には、高橋源一郎さんの人気番組「飛ぶ教室」(NHKラジオ第一、21時5分より)にも出演します。
伊藤比呂美さんは自らの両親、子ども、夫との関係のみならず、人生相談も30年ちかく、生身の人の苦しみ、四苦八苦に向かい続けています。
詩人が暮しに結びついたお経……般若心経、法華経、阿弥陀経、一切精霊偈、発願文など、心惹かれたお経を長い時間をかけて、ひとつひとつ自分の言葉でとらえなおしてきました。柔らかく、強靭なことばのお経、お経についての身近な説明、明るいまなざしで自然を見つめ、「生きる」ことへの希望を持たせてくれるエッセイとともに。また詩人として鍛えてきたお経の朗読が9つCDに収録されていて、耳でも味わうことができます。
著者は仏教説話集に関心をもち、2004年には『日本ノ霊異(フシギ)ナ話』、2010年には『読み解き「般若心経」』(以上、朝日新聞出版)、『伊藤比呂美の歎異抄』、そして池澤夏樹=個人編集 日本文学全集(以上、河出書房新社)において、『日本霊異記』『発心集』『説教節』の古典新訳をてがけ定評を得てきました。
▪内容紹介
寝たきりの母、独居する父。死に方がわからないかのように、なすすべもなく空中に漂っている親を見ていて考えた。
「生きること死ぬこと」について、老い果てぬ前に準備をしたらいいのではないか。老いて死ぬ不安を、苦しみを、少しでも軽くする道はないか。
遠いカリフォルニアから通いつつ看取りをつづけるうちに、娘はたよりになるお経に出会った。
そして今、両親と夫の死を見届けて、
誰もいなくなった荒れ地や海辺を、犬と歩く。
日没を見て、月の出を見て、小さな生き物の生きざまを見る。
雨を見て、風を見て、地震を見る。
自然のめぐりと生きることと死ぬことが重なっていく。
▪「目次」から
父と母とお経とわたし/開経偈「今、出遭いました」/「三帰依文「仏教に出遭えたミラクル」/般若心経「完成に向かって」/源氏物語表白「紫式部の往生」/法華経薬草喩品偈「大きな木や小さな木」/阿弥陀経「浄土とはこんなところです」/法華経如来寿量品偈(自我偈) 「私が目ざめてからこのかた」/一切精霊偈「一切のたましいは」/発願文「ねがっています」/死んでいく人
▪著者プロフィール
伊藤比呂美(いとう・ひろみ)
1955年、東京都生まれ。詩人。80年代の女性詩ブームをリードし、結婚・出産を経て、97年に渡米した後、熊本に住む父と母の介護を続けていた。2018年より拠点を熊本に移し、2021年春まで、早稲田大学の教授を務める。
1999年『ラニーニャ』で野間文芸新人賞、2007年『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』で萩原朔太郎賞、08年に同作で紫式部文学賞を受賞。15年早稲田大学坪内逍遥大賞、19年種田山頭火賞を受賞。
主な著書に『良いおっぱい悪いおっぱい「完全版」』、『閉経記』『読み解き「般若心経」』『道行きや』『ショローの女』ほか。
共著に『先生! どうやって死んだらいいですか?』(山折哲雄氏と)、『禅の教室』(藤田一照氏と)、『新版 死を想う われらも終には仏なり』(石牟礼道子氏と)、『先生、ちょっと人生相談いいですか?』(瀬戸内寂聴氏と)ほか多数。
『いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経』
著者:伊藤比呂美
定価:1980円(本体1800円+税10%)
発売日:2021年11月5日(金曜日)ISBN:9784022517869
四六判上製 272ページ
https://www.amazon.co.jp/dp/4022517867