寺社Nowエゴドキュメント【京仏師・宮本我休】火災で焼け焦げた木材から釈迦如来を彫像する《後編》


※「エゴ・ドキュメント」とは、一人称で語るドキュメントです。

語り:京仏師 宮本我休(みやもと・がきゅう)
学生時代に服飾技術を学び、卒業後京都の仏像彫刻工房にて彩色を手掛けたことをきっかけにこの世界に入る。9年間の修行の後、平成27(2015)年4月に独立、京都・西山に工房を構え、「宮本工藝」を設立する。現在は京都市南区に工房を移し、弟子3人と共に日々仏像や仏具、その他木彫刻の研究、制作に励む。服飾技術を活かしたリアリティある衣紋表現を得意とする。(平成27年度 京の若手職人「京もの認定工芸士」認定番号第128号)

▼ここまでの物語(前編)

そうこうするうちに少しづつですが彫刻が進み、お姿が見えだしてきました。仏様の彫刻は儀軌(ぎき、決まり事や規則)に従って進めていきます。賽割(さいわり)法といって、マス目を描き、それをもとに手の位置や顔の大きさなどに狂いが出ないようにしていきます。

もちろん刀を入れると消えるので、消えては描きを繰り返します。このように儀軌に従って設計図通りに制作していっても、どうしても個性が出てきます。そこが仏像彫刻の奥深さであり、おもしろいところです。

ところで今回、燃え残った木材から彫像するということですので、木がどう暴れるのか予想がつかないこともあり、実は2体同時に制作しました。万が一、1体に割れなど入った場合、もう1体の方を納めさせてもらえればと考えてのことです。

完成にむけて一刀一刀、想いを込めて彫り進めていきます。

やがて、ノミを使って大きく形を彫りだしていく荒彫りを終え、ようやく仏らしい姿が見えてきます。

燃え残った木から仏をつくる……このお話をお受けしたときは、正直うまくいくか自分自身でも半信半疑でしたが、幸いなことに大きなトラブルもなく、なんとかここまでくることができました。

ここから、いよいよ総仕上げです。ただ綺麗な佛ではなく、力強く、存在感のある佛様を目指して、気持ちを込めて彫り進めていきます。

次ページ:仏像に仕込んだタイムカプセル

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監修:全国寺社観光協会

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