2024年1月スタートのNHK大河ドラマが、〝世界最初の長編ラブストーリー〟として海外でも知られている『源氏物語』の作者、紫式部の一生を描く『光る君へ』(脚本:大石静、主演:吉高由里子)に決定した。
源氏物語は、現世における〝人間愛〟の究極のカタチを描き出そうとした作品で、その到達点を〝宗教的愛〟に見いだしていると歴史的に評価されてきた。延べ500人もの人物を登場させ、人間愛から宗教愛にいたるプロセスをテーマとして、ありとあらゆる角度から愛を描いた。それがゆえに、物語が生み出された平安時代から千年後の現在にいたるまで、たえまなく読者を獲得し続けている。
そしてそこには、仏教的な行事や風習が風俗描写として各所に散りばめられている。たとえば、病気や出産のための加持祈疇や、日々の念仏や読経、物詣や参籠、追善供養のための法要が、源氏物語の日常のなかにある。
釈迦の誕生を祝う仏教行事「灌仏会」(かんぶつえ、第三十三帖:藤裏葉)や、宮中で行われた天下太平・鎮護国家を祈願する「仁王会」(にんのうえ、第十三帖:明石)、宮廷仏教年中行事の一つである春と秋の「季御読経」(きのみどきょう、第十帖:賢木、第二十四帖:胡蝶、第三十九帖:御法)、宮中の清涼殿で、毎年陰暦12月19日から3日間行われた懺悔滅罪の行事「御仏名」(おぶつみょう、第四十帖:幻)などの行事類も挙げ出すと枚挙に暇がない。
さらに、天皇や国家の重大な祈りに際して行う密教の修法「五壇の御修法」(ごだんのみずほう、第十帖:賢木)や、法華経尊重による法華八講(ほっけはっこう、藤壺主催=第十帖:賢木、光源氏主催=第十四帖:澪標、紫の上主催=第三十九帖:御法、明石中宮主催=第五十二帖:蜻蛉)といった仏教的ビッグイベントのシーンもたびたび登場する。
そもそも紫式部は、源氏物語を滋賀県大津市の石山寺で起筆したと伝えられており、仏教との関わりは想像以上に深い。
こうした「源氏物語と仏教」「紫式部と仏教」の関係については、何世紀にもわたって膨大な研究が積み重ねられてきており、寺社Now的にはそのあたりを大河ドラマがどのように描くのかが楽しみであり、また注目ポイントでもある。情報が入り次第、随時フォローしていきたい。