奇跡のフォトグラメトリ!弥勒世界再現への挑戦:破壊されたバーミヤンE窟天井部のスーパークローン復元レポート【東京藝術大学大学美術館「みろく展」開催記念特集③】

■東京藝術大学大学美術館「みろく–—終わりの彼方 弥勒の世界——」図録シリーズPart2
最先端スーパークローン技術を駆使して人類共通の遺産を復元している東京藝術大学COI(センター・オブ・イノベーション)による「みろく–—終わりの彼方 弥勒の世界——」展の開催を記念して、実際に現場で制作に携わった諸先生方によるレポートをシリーズでご紹介します。

※本展は「東京藝術大学アフガニスタン特別企画展」(2015年)、「素心伝心 —クローン文化財 失われた刻の再生」(2017年)に次ぐ、文部科学省が推し進める「革新的イノベーション創出プログラム」事業の成果発表の場となる展覧会で、当記事は東京藝術大学COIより特別に許可を得て公式図録から転載するものです。下記の記事とあわせてお読みください。

弥勒世界再現への挑戦Part2
バーミヤンE窟天井部の復元

文:大石 雪野(東京藝術大学COI拠点特任准教授)

フォトグラメトリ技法による3Dモデル化

京都大学、名古屋大学、成城大学などの調査隊が1970年代に記録した合計158枚の破壊前写真を用い、アトリエ55の手によりE窟の3D再現が行われた[図1]。再現にはフォトグラメトリと言う技術を使用した。これは物体を様々な方向から撮影した写真を元にコンピューターで解析し3Dデータを作り上げる技術であり、破壊され失われた作品であっても画像があれば再現が可能となる。

寸法に関しては、破壊後に行われた現地計測のデータ(株式会社パスコ提供)から数値データを抽出し、画像解析で得られた3Dデータに実寸のスケール情報を与えることにより、精度の高い数値を得た。

【図1】アトリエ55によって再現された青の弥勒3DCG

今回の資料となった画像はすべて地上から撮影したもので、現地の地形・環境的な制約により、ほとんどが同じ画角・構図であり、頭部後背などは充分な資料がなかった。画像が存在しない箇所は3Dデータ上では欠損となり、画像の少ない部分に関しては精度が劣るデータになる。そうした欠損箇所は東京藝術大学3D専門家がデータ上での復元作業を行った[図2]。

【図2】東京藝術大学で欠損部分を復元したデータ

次ページ:立体造作物の構造〜壁面の質感を再現!

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監修:全国寺社観光協会

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