かくして貴重なコレクションと向き合うことになった龍谷ミュージアムの学芸員たちは、わが目を疑い、驚愕した。畑家は、定朝(じょうちょう)・運慶・快慶の系譜に位置付けられ、江戸時代の造仏界をリードした七条仏師の流れを汲む。七条仏師は、明治維新時の神仏分離令以降に衰退し途絶えた。その弟子筋であった畑家が、なんと、七条仏師が代々伝えていた仏像ひな型をも、ひそかに現代へ承継していたのだ。
仏像のひな型は、時として完成品としての仏像そのものよりもさらに多くの仏像の秘密や制作の舞台裏を伝えてくれる。中には、火災や戦災などですでに失われてしまった歴史的な仏像のその原型として、今は存在しない仏像の情報をもたらせてくれることすらある。
龍谷ミュージアムのこれまでの研究調査により、畑家のコレクションにあるひな型をもとにして制作された完成品、つまりリアルな仏像が、北は山形から南は長崎まで全国広範囲に及んでいることが一部判明している。一方で、どの寺院に安置されているどの仏像のひな型なのか明確でないものも多く残され、その謎の解明が期待される。
そうした意味で、龍谷ミュージアムの歴史的発見ともいえる仏像ひな型コレクションの公開は、全国各地の寺院や仏像関係者、ミュージアムや研究者に対して、情報を求めるメッセージともなる。
美術史的にはこれまで、仏像といえば平安期を筆頭に古い時代の文化財にばかり目が行きがちだった。そのため、仏像制作が盛んになり開花したとも言える近世江戸期の仏像は、その数が膨大すぎることもあり研究の蓄積がされてこず、評価の対象になりにくかった。
しかし、近世江戸期の仏像に対する評価がここから変わっていく。そのターニングポイントとなる歴史的事件ともいえるコレクションの公開に、リアルタイムに立ち会える幸運に感謝したい。
開催概要
会場 | 龍谷大学 龍谷ミュージアム |
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日時 | 前期:2022年1月 9日(日)~ 2月13日(日) 後期:2022年2月19日(土)~ 3月21日(月・祝) 10:00 ~ 17:00 ※最終日は16:30まで 休館日:月曜日、2月15日~2月18日 ※ただし、1月10日、3月21日は開館 |
住所 | 京都市下京区堀川通正面下る(西本願寺前) |
交通 | JR・近鉄・地下鉄烏丸線「京都駅」から徒歩約12分 京都市バス9・28・75系統「西本願寺前」下車、約2分 |
駐車場 | なし ※公共の交通機関をご利用ください。 |
料金 | 一 般 550(450)円 シニア 450(350)円 大学生 400(300)円 高校生 300(200)円 中学生以下:無料 障がい者手帳等の交付を受けている方及びその介護者1名:無料 (手帳またはミライロIDを受付にてご提示ください) ※シニアは65歳以上の方 ※( )は前売り・20名以上の団体料金 |
お問合せ先 | 龍谷大学 龍谷ミュージアム 075-351-2500 |
ホームページ | 龍谷大学 龍谷ミュージアム https://museum.ryukoku.ac.jp |