不安と混乱の今こそ千年パワー!「平等院鳳凰堂と浄土院 その美と信仰」(静岡市美術館)

京都南部の名刹、世界遺産・平等院ゆかりの至宝を紹介する展覧会「平等院鳳凰堂と浄土院 その美と信仰」が、静岡市美術館で開催されている(2022年3月27日まで、会期中展示替えあり)。

平安後期。疫病(天然痘)が流行し、地震が頻発、血みどろの合戦も絶えず、世も末と人々のあいだに不安と混乱が広がった。そうした社会背景のなかで、末法元年とされた1052年(永承7)、貴族の別荘が立ち並ぶ宇治川畔の邸宅を、時の関白・藤原頼通が父・道長から譲り受け、仏寺に改めた。2022年は開創970年にあたる。

国宝 平等院鳳凰堂正面全景 ©平等院

不安と混乱を鎮め、現世に極楽浄土を再現すべく荘厳された平等院の伽藍は、平安期の建築・彫刻・絵画・工芸などありとあらゆる技術と叡智、そして祈りが結集している空間だ。

伽藍の中枢に位置する阿弥陀堂は「鳳凰堂」の名で広く親しまれ、10円玉のデザインでもおなじみ。仏師・定朝(じょうちょう)作の国宝本尊「阿弥陀如来坐像」を中心に、優美で格調高く、かつ洗練された平安王朝貴族の美意識が堂内に散りばめられている。

本展では、この鳳凰堂に安置されている国宝《雲中供養菩薩像》をはじめ、平安の国風文化と浄土信仰を守り、今に伝えてきた平等院の至宝の数々が惜しげもなく紹介される。

左)国宝《雲中供養菩薩像 北1号》 天喜元(1053)年 平等院蔵 [前期展示]、右)国宝《雲中供養菩薩像 南1号》 天喜元(1053)年 平等院蔵[後期展示] ©平等院

さらに、近年平等院では、創建当初の姿の復元を目指し、鳳凰堂の修理や調査研究が進められているが、最新の研究成果に基づいて制作された堂内壁扉画の復元模写も注目だ。

あわせて、調査の過程で新たに発見された貴重な作品「養林庵書院(重要文化財)襖絵」など、塔頭の浄土院に伝わる知られざる寺宝の数々も見逃せない。

実に千年近くにわたって、社会の安寧と人々の心の平穏を実現すべく存在し続けてきた平等院の〝美〟と〝祈り〟のチカラを、あますことなく体感したい。

◆展示構成
プロローグ:平等院の開創
第1部: 鳳凰堂の美
第2部: 祈りの心
第3部: 守り、語り継ぐ―浄土院の収蔵品を中心に―

荒木恵信「日想観図 想定復元模写」 平成24(2012)年 平等院蔵 ©平等院[後期展示]

宇治市指定文化財 伝狩野山雪「籬に梅図(養林庵書院襖絵)」江戸時代(17世紀) 浄土院蔵 ©平等院

左)宇治市指定文化財「伝帝釈天立像」 平安時代(11世紀) 、右)《藤原頼通像》江戸時代(17-18世紀) いずれも浄土院蔵 ©平等院

会期
2022年2月5日(土)〜3月27日(日)
開館時間
10:00~19:00(展示室入場は閉館30分前まで)
公式サイト https://shizubi.jp/
会場
静岡市美術館
住所
〒420-0852 静岡県静岡市葵区紺屋町17-1 葵タワー3階
問い合わせ
054-273-1515
※最新の開館状況および注意事項については、静岡市美術館 HP またはお電話でご確認ください

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監修:全国寺社観光協会

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