文化財、文化遺産の撮影を専門に、100年の撮影活動を続けてきた奈良の写真館・飛鳥園の全貌を、奈良県立美術館にて展観。同じく100年を迎えた美術図書出版の求龍堂が、公式図録兼書籍を担当しました。
小川晴暘が創りだした漆黒の写真空間に浮かび上がる仏像は、人々の祈りを受け止めてきた仏の姿である。いざ、「飛鳥園」100年のまなざしへの旅へ― 全国4箇所巡回展が奈良県立美術館で始まりました!
https://www.pref.nara.jp/11842.htm
https://www.kyuryudo.co.jp/shopdetail/000000002286
・1922(大正11年)に小川晴暘が創立し、小川光三、小川光太郎と親子三世代を経て現在に至る、古都奈良の写真館「飛鳥園」とは
兵庫県姫路市に生まれた小川晴暘は幼少より絵や写真に親しみ、画家を志し上京しますが、奈良を訪れた際に仏像や文化遺産に心打たれ、朝日新聞の写真部へ入社、拠点を奈良としました。
その後、美術史家・書家・歌人の會津八一と邂逅し、親交を深めた八一の強い勧めで独立。写真館・飛鳥園を創業し仏像や文化遺産の撮影に精力を傾けます。50円切手にもなった写真《中宮寺 菩薩半跏像(伝如意輪観音菩薩像)》や《新薬師寺金堂 十二神将・伐折羅大将像》、《新薬師寺 薬師如来像(香薬師)》、《法隆寺 観音菩薩像(百済観音像)》など、日本の仏教美術を代表する仏像を数多く撮影しました。1960(昭和35)年に晴暘が逝去した後、その活動は小川光三、小川光太郎へと引き継がれ現在に至ります。飛鳥園は文化財撮影に取り組む後進の育成にも取り組み、複数の文化財写真家が独立し活躍をしています。
・撮影以外にも、東洋美術の研究、出版にも熱中!アジアの遺跡探訪記録も紹介。雲崗石窟の展示と掲載ページは圧巻です。
小川晴暘は東洋美術の研究にも熱中し、奈良に居を移した志賀直哉や京都大学総長も務めた濱田青陵をはじめ、文化人・知識人との交流も深め、彼らとともに多くの出版物を手掛けます。
その探求心とまなざしは日本のみならずアジアへも向けられ、中国の雲岡石窟、韓国の石窟庵、仏国寺、インドネシアのボロブドゥール遺跡、カンボジアのアンコール・ワットなど、アジアの文化遺産の調査・撮影の旅へと繋がります。
展覧会では、ガラス乾板を持っての移動リスクや崩落の危険もある当時の困難な撮影環境下で撮られた雲崗石窟の美しい石像、雲崗石窟の全景、画家を志した晴暘ならではの丁寧な描写に美しい着彩を施された大型の雲崗石窟スケッチが一堂に並び圧巻です。書籍内では両観音の表面にこれらのスケッチを掲載し、中面全部を使って大パノラマを掲載。こちらも迫力満点です。
・多くの写真家や作家を魅了した小川晴暘のモノクロームの仏像写真から、時代を経て光三のカラー写真までが、大型パネルで展示され見る者と対峙し、深い祈りの世界に包まれます。
白州正子は晴暘の写真について「仏像が持っている雰囲気と言うか、肉眼でしか感じられぬものがとらえられ、逆に写真から教えられるものは多かった。」(『十一面観音巡礼』新潮社)と語っています。
そうした晴暘の撮影に込めた精神は光三へと受け継がれ、光三は仏像を撮ることについて、「仏像は私たちの遠い祖先が祈念した、願いや思いが秘められた礼拝の対象である。仏像を撮影するという作業は、そうした人々の心に焦点を合わせることだと思う」と伝えています。
展覧会会場では、漆黒の空間のなかに佇む仏像の姿が深い精神性と美が大型パネルで展示され、思わず引き込まれそうになります。書籍でもその美の再現に力を込めました。
◎展覧会情報
「小川晴暘と飛鳥園 100年の旅」
会場:奈良県立美術館 ≫
会期:2024年4月20日(土)~2024年6月23日(日)
会場:姫路市立美術館 ≫
会期:2024年7月6日(土)~2024年9月1日(日)
会場:半蔵門ミュージアム ≫
会期:2024年9月11日(水)~2024年11月24日(日)
会場:パラミタミュージアム ≫
会期:2024年11月30日(土)~2025年1月26日(日)
◎商品情報
『小川晴暘と飛鳥園 100年の旅』
発売日:2024年5月10日(金)
定価:2,750円(税込)
発行:株式会社求龍堂
主な仕様:並製本 A4変型 120頁(図版102点)
企画:奈良県立美術館・姫路市立美術館
監修:飛鳥園
◎目次
ごあいさつ 主催者
Greeting The Organizers
ごあいさつ 小川光太郎
小川晴暘と飛鳥園100年の旅―序説/安田篤生
1章 小川晴暘と飛鳥園
2章 小川晴暘とアジアの仏教美術
飛鳥園をめぐる人々
3章 小川晴暘から小川光三へ
小川晴暘と姫路/高瀬晴之
4章 飛鳥園100年の旅 志を継いで
資料編
飛鳥園と小川晴暘にかかわる出版物
本書に登場する、飛鳥園が撮影した寺院
作品リスト
飛鳥園年譜
作品解説
Intoroduction Ogawa Seiyo and Askaen Yasuda Atsuo
◎編集者より
写真撮影による文化財保護活動のための役割もさることながら、日本人が仏教美術に大きな関心を寄せる礎を築いたとも言える飛鳥園の仏像写真。その写真には、仏像を撮ることは人々の願いと祈りの心を大切にすることでもあると考えた飛鳥園の真心を感じます。そのまなざしで撮影され漆黒の静謐な空間に現れた仏のお姿に魅入ってしまいます。
◎求龍堂について
求龍堂は1923年創業、今年でちょうど100年を迎えた美術書出版社です。社名の求龍(きゅうりゅう)はフランス語の「CURIEUX」からとったもので、「芸術的あるいは知的好奇心を求める」「常に新しきを求める」ことを意味し、名付け親は画家の梅原龍三郎です。東洋の「龍」に理想を求め、時代という雲間を縦横無尽に飛び交いながら、伝統美からアート絵本まで、常に新たな美の泉を発掘すべく出版の旅を続けています。
【会社概要】
社名:株式会社 求龍堂
本社所在地:東京都千代田区紀尾井町3-23 文藝春秋新館1階
代表取締役:足立欣也
創業: 1923年
事業内容: 美術品・生活文化関連図書の出版、美術印刷物の企画製作、美術品売買
HP:https://www.kyuryudo.co.jp/