この夏!若冲ほか宮内庁三の丸尚蔵館の国宝初指定5件を含む〈皇室×藝大〉の名品・優品一挙公開:特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」

この夏、東京・上野の東京藝術大学大学美術館で、特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」(2022年8/6〜9/25)が開催される。

宮内庁三の丸尚蔵館(東京・千代田区)の収蔵品として昨年(2021年)初めて国宝に指定された5件をはじめ、同館が収蔵する皇室ゆかりの名品・優品に、東京藝術大学のコレクションを加えた全82件が一挙公開される。三の丸尚蔵館の国宝5件がまとめて公開されるのは、これが初となる。

国宝指定されたのは、もともとは奈良・春日大社に秘蔵されていた「春日権現験記絵」や、京都・相国寺が明治期に皇室に献上した〝日本の花鳥画の到達点〟とも言われる、伊藤若冲の代表作「動植綵絵」など下記の5件。これまで、三の丸尚蔵館が収蔵する美術品類は、文化財指定の対象外で、国宝や重要文化財などの指定を受けていなかった。

なお本展は、日本の美を未来に伝えるため、文化庁、宮内庁、読売新聞社が取り組む「紡ぐプロジェクト」の一環として開催される。

▪「宮内庁三の丸尚蔵館」の国宝5件(2021年指定)
 
1:国宝「屏風土代(びょうぶ どだい)」(平安時代)
2:国宝「春日権現験記絵(かすがごんげん げんきえ)」(鎌倉時代)
3:国宝「蒙古襲来絵詞(もうこしゅうらい えことば)」(鎌倉時代)
4:国宝「唐獅子図屏風(からじしず びょうぶ)」(桃山時代)
5:国宝「動植綵絵(どうしょくさいえ)」(江戸時代)

ということで、開催までの予習の材料として、本記事では上記の国宝5件を紹介しておこう。ちなみに会期中、一部作品の展示替えおよび巻替えがあるので事前にチェックしておきたい。

前期展示①:8月6日(土)~8月28日(日)
前期展示②:8月6日(土)~9月4日(日)
後期展示①:8月30日(火)~9月25日(日)
後期展示②:9月6日(火)~9月25日(日)

1:国宝「屏風土代」(平安時代)

 平安時代三跡の一人・小野道風の書
 後期展示②


小野道風(おののとうふう/みちかぜ)の真筆。醍醐天皇の勅命で、内裏に飾る御屏風に漢詩を揮毫するために準備した土代(下書き)。大正14年(1925)、井上(旧侯爵)家が皇室に献上した。

2:国宝「春日権現験記絵」(鎌倉時代)

 鎌倉時代の名品・やまと絵の集大成として名高い絵巻
 通期展示(巻四:前期展示②/巻五:後期展示②)


藤原氏一門の西園寺公衡(さいおんじ きんひら)が、一門のこれまでの繁栄に感謝し、またさらなる繁栄を祈願して制作。絹地に中世の人々の信仰や生活が描かれている。本格的な大和絵技法による精緻な描写は、当時の風俗を知る史料としても貴重。また、痛みやすい絹地の絵巻が、700年もの長い年月を経て今なお完全な姿で現存しているのは、まさに奇跡と言えよう。2004年から17年にかけて修復事業が行われ、上皇后さまが皇后時代に皇居内の養蚕所で育てた純国産種の蚕「小石丸」の繭糸が使われたことでも話題になった。

本作は本来,春日大社に秘蔵されていたものが、江戸後期に流出し、その後に公家の勧修寺経逸(かじゅうじ つねはや)が収集し、鷹司(たかつかさ)家を経て、明治8年(1875)と同11年の2度にわけて皇室に献上された。

3:国宝「蒙古襲来絵詞」(鎌倉時代)

 元寇の様子を描いた絵巻
 通期展示(前巻:前期展示②/後巻:後期展示②)


文永11年(1274)と弘安4年(1284)の2度にわたる元寇の際、その戦に出陣した肥後国御家人・竹崎季長(たけざき すえなが)を中心に展開する絵巻。実際に出陣した季長が描かせたため、歴史的事実を視覚的に伝える史料としても貴重な作品となっている。元寇で戦った大矢野種保(おおやの たねやす、通称:十郎)の末裔、熊本の大矢野十郎から、明治23年(1890)に宮内省が買い上げた。

次ページ:国宝「唐獅子図屏風」(狩野永徳)・国宝「動植綵絵」(伊藤若冲)

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監修:全国寺社観光協会

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