さて、月日は流れ、ご依頼をいただいてから1年とちょっと。黒く煤けた状態から、ようやく完成です。
本像は「光焔(こうえん) 釈迦如来立像」と名づけさせていただきました。光焔とは「光焔万丈」という四字熟語にもあるように、光り輝く炎が高く立ちのぼることを意味します。火災で焼失した家屋で使われていた芯柱から佛を刻むということでしたので、業火に耐え、佛となった芯柱が未来永劫光を放って、家を守っていってもらいたいという思いを込めています。
今回、佛を刻んでいくうえで、何よりもいちばん気を付けたのは〝重量感〟でした。家を新たに守っていってもらいたいという思いがありましたので、どっしりとした体躯で、力強い釈迦如来を目指したのです。
それにしても、彫り進めるにつれ、木という素材が持つ凄みを改めて感じる日々でした。製材されて100年以上、炎で焼け焦げながらも、一刀一刀仕上げるごとに光沢を増していく。そしてさらに、これから拝んでもらうことで、煤(すす)で陰影がついて佛が育っていきます。これは、木でしかでき得ないことかと思っています。