徳積財団は英彦山地域を盛り上げ、修験体験ができる場所として「宿坊」を再生するプロジェクトをスタートしています。
この茅葺屋根を葺く宿坊の名は守静坊(しゅじょうぼう)といいます。これは英彦山に現存する宿坊の中でも最も歴史が古いとされる古民家です。また、英彦山研究の第一人者として活躍した故・長野覚先生の生家でもあります。長野先生は元駒澤大学教授で、修験山伏・守静坊10代目坊主でもありました。2021年、徳積財団に守静坊の再生を託す形で、長野先生はこの世を去られました。徳積財団は、長野先生のご遺志を引き継ぎ、守静坊を現代によみがえらせるべく再生事業にあたっています。守静坊を宿坊再生のシンボルとするだけでなく、英彦山地域全体を再興していくシンボルとして、整えていきます。
最盛期の江戸時代には800軒余りの宿坊が軒を連ね、山伏や参詣者が訪れていたと言われている英彦山。しかし明治政府の廃仏毀釈、神仏分離令、修験道禁止令の影響により、英彦山の山伏文化はほぼ壊滅しました。霊峰からは山伏の姿が消えてしまい歴史と文化は途絶えようとしています。それを復活する一大プロジェクトとして、一般財団法人徳積財団がその復活のシンボルとなる宿坊の甦生に取り組んでいます。
その初めの宿坊としてこの英彦山最古の宿坊、守静坊(しゅじょうぼう)を再生します。英彦山の甦生のシンボルとして、この宿坊をかつての面影を完全に復活させるような本物に磨き上げます。
昨年、11月よりスタートして内装はほぼ完成していますが残すは屋根の甦生を残すのみです。この屋根をむかしから日本でもっとも大切にされてきた相互扶助の共同体※「結」(ゆい)で葺き直します。この結の御蔭で、村々の民家の屋根はずっと守られてきました。かつての日本人の先祖たち、また代表的な日本人として紹介されている歴史的な偉人たちはみんなこの「結」によって見守られ育ち、徳を積むことを学び、豊かに仕合せな生き方を代々伝承してきたのです。
世界情勢など不穏な空気が漂う近年、未来を生きる子どもたちのお手本になるような大人の姿を見せたいと思います。未来のためにも歴史を終わったものにせず、新たな歴史をみんなで一緒に創り上げていくはじまりのイベントになると信じています。ぜひ、皆様のご参加をお待ちしています。
※結(ゆい)で英彦山の宿坊の屋根を葺くイベントを下記の日程で行います。
日時 令和4年4月2日(土)9時30分~12時まで
場所 田川郡添田町大字英彦山731番地 守静坊(銅の鳥居に駐車場あり)
参加 無料 (軍手と長靴を持参ください)
※結(ゆい)とは
幼いころから、家のお手伝いをして育ってきますが人間は当たり前に協力して働くためにはその働くための智慧を自然に身に着けていきました。その代表的なものが、農業であり里山での暮らしの中で集団を通して助け合い生きる力を育んできたのです。たとえば、みんなで助け合い茅葺の屋根をふきかえたり、堤防の修理や、家々の柿の実を収穫したり、子どももみんなで見守り、お年寄りもみんなでお世話をする。これは自分のもののようで自分のものではなく、みんなのものであって自分のものでもある。つまりは生活共同体、共存関係を結んでいたのです。これが結(ゆい)です。沖縄の「ゆいまーる」が有名ですがこれも同じ結のことです。
「一人の一歩よりも百人の一歩」という言葉があるように、先人たちへの遺徳に感謝して信仰の場所に相応しい甦生にしたいと願っています。
関連リンク
※一般財団法人徳積財団公式サイト
http://www.tokutsumi.or.jp
※これまでの英彦山宿坊甦生までの経緯と報告資料
https://prtimes.jp/a/?f=c-77541-2022032917-128813ee11626363a707a3b6f735c1f0.pdf
※英彦山神宮上宮の修復及び宿坊甦生の喜捨のお願い資料
https://prtimes.jp/a/?f=d77541-20220329-5604edd86c726d32bfcc202b96337d08.pdf
※昨年7月に、徳積財団で手掛け再生した福岡県飯塚市の古民家「和楽」の動画
※今回お手伝いいただく茅葺集団 阿蘇茅葺工房の紹介動画
※この宿坊に住んで情報発信をする世界的写真家 エバレットケネディブラウン