母子信仰|乳野の里芸術展「さよなら△またきて□」(滋賀県大津市)11月8日より展覧会スタート

比叡山と琵琶湖に挟まれた滋賀県大津市千野の古民家を舞台に、10組のアーティストとつくる失われた家族をめぐる物語と新しい死生観

合同会社galleryMainのプレスリリース

乳野の里芸術展「さよなら△またきて□」(2022年11月8日(火)〜27日(日)月曜日休み)は、山と湖の狭間にある滋賀県大津市千野の古民家を舞台に、10組のアーティストとつくる失われた家族をめぐる物語と新しい死生観を探る挑戦的な展覧会です。キュレーターは、美術家でもある合同会社galleryMainの山崎裕貴が担当します。

タイトルの「さよなら△またきて□」は画家三橋節子の手紙「なくなる7時間前に書かれた 子供への最後のはがき」(1975年2月)よりタイトルの「さよなら△またきて□」は画家三橋節子の手紙「なくなる7時間前に書かれた 子供への最後のはがき」(1975年2月)より

▪大津市千野の母子信仰と失われた家族の物語を巡る展覧会

比叡山と琵琶湖に挟まれ田園風景が広がる滋賀県大津市千野は「乳野」または「乳母」とも呼ばれ、およそ1000年にわたり母子信仰が息づいてきました。母子信仰を支えたのが延暦寺中興の祖・元三大師と、その母・月子姫を祀る安養院妙見堂という寺院です。平安初期に元三大師が月子姫のために建てた庵でもあります。比叡山延暦寺の女人結界の外側に位置し、夜な夜な元三大師が結界を超えて月子姫の庵に通っていたことを、子が母に乳をもらう様子に見立てたことが乳野という名の由来です。

伝承からは失われてしまったもうひとりの家族、月子姫の第一子「弥世丸(みよまる)」に注目します。乳野を訪れ、この地に弥世丸が居ないことを指摘したのが、小説家の谷崎潤一郎です。谷崎は昭和26年に発表された『乳野物語––––元三大師の母』のなかで、月子姫が嫁いだ先の饗場(あいば)家が所蔵する口上書の記録を引きながら、第一子の弥世丸でも、旧家でもなく、元三太師との強い結びつきを選んだ母の意思について触れています。

母は家を捨て、子を選択し、強く愛情を注いだ。その選択からこぼれ落ちた弥世丸は、1000年にわたり、乳野の里には存在しなかったもう1人の子供です。伝承は山や湖に漂う死者(異形の者)と出会い、生者の住む里から生まれ伝わります。本展では、伝承には残らないが、月子姫の子供という狭間の存在の弥世丸こそが、よそ者と乳野のあいだの架け橋となる存在だと注目しました。
本展の会場は安養院妙見堂のすぐ側に建つ古民家です。10組のアーティストが母の墓のとなりの古民家を「弥世丸の家」として育てました。大津や千野にまつわる伝承をもとに、失われた家族をめぐる物語がはじまります。

▪伝承をたどりに大津市千野を巡る

千野に残る母子信仰や伝承を土台にした作品が展示されます。伝承は人から人、里から里へと語り継がれることで残り、多様な表現を生み出してきました。本展では歴史や伝承を辿る曼荼羅マップを用意しています。おごとや千野を歩き、展覧会や美術館を巡り、実際に歩いて、見て、体感いただくことが企画の狙いとなっています。秋の大津を美術や歴史を通してお楽しみください。また、本展のタイトル「さよなら△またきて□」は画家三橋節子の手紙「なくなる7時間前に書かれた 子供への最後のはがき」(1975年2月)がもとになっています。母子信仰など滋賀の伝承と自信の境遇を重ねて描いた三橋節子の絵画や手紙は、三橋節子美術館(〒520-0035 滋賀県大津市小関町1−1)でご覧いただけます。

乳野の里芸術展「さよなら△またきて□」展示作品より 中村幹史、山崎裕貴乳野の里芸術展「さよなら△またきて□」展示作品より 中村幹史、山崎裕貴

▪展覧会の概要について

乳野の里芸術展「さよなら△またきて□」
キュレーター
山崎 裕貴(美術家・合同会社galleryMain)

アーティスト
浅田 優月、MANAMI ARIGA、中村 幹史、松本 悠、吉田 晴彦、リュ・ジェユン、松岡 湧紀、モノ・シャカ、山崎 裕貴

会期|2022年11月8日(火)〜11月27日(日)
休館日|月曜日休み
開館時間|10:30-17:30
会場|千野の古民家「弥世丸(みよまる)の家」、番屋勇気
住所|〒520-0111 滋賀県大津市千野1丁目7−43
入場料|1000円
アクセス|JRおごと温泉駅より徒歩25分、タクシー5分
URL| https://chinokanjin.com/
主催|合同会社galleryMain
共催|近江おごとハーブガーデン
後援|大津市、大津市教育委員会
協力|月子茶屋、三橋節子美術館
助成|「ARTS for the future! 2」補助対象事業

▪合同会社galleryMainについて

galleryMainは「観客と作家の対話と成長の場所」をつくるため、美術家と写真家である中澤、竹下、山崎の3人が運営するオルタナティブスペースです。「まずは対話から」をスローガンに展覧会だけではなく、新しい熱気をつくるためにスクール事業『Plot Art School』『京都写真教室Tract』など作家自身が思想を伝え、教えることで観客と共に成長する場所を目指しています。

合同会社galleryMain
住所|京都市下京区下鱗形町543-2F
URL|https://gallerymain.com/

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監修:全国寺社観光協会

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