入浴を日本文化へ昇華させる「湯道文化賞」第二回受賞者6組8名が決定|京都・大徳寺真珠庵

〜長門湯本温泉、栃尾又温泉、沖縄の銭湯、おぼろタオル、銭湯建築家、在京都フランス総領事館らが受賞〜

一般社団法人 湯道文化振興会のプレスリリース

一般社団法人 湯道文化振興会(代表理事:小山薫堂、本社:東京都港区)は、日本人が日常的に行う入浴行為を「文化」へと昇華させることを目的として、入浴に関する文化的な取り組みに光を当てる「湯道文化賞」を創設。その第2回となる2023年に受賞者6組8名が決定し、京都・大徳寺真珠庵にて表彰式を開催いたしました。


(1)湯道文化賞:入浴を「文化」へ昇華するために、特に輝かしい功績を遺した個人・団体。

<長門湯本温泉 恩湯(おんとう)>
山口県で最も古い歴史を持つ長門湯本温泉は、応永34年(1427年)、大寧寺の定庵殊禅禅師が住吉大明神からのおつげによって発見した「神授の湯」と伝えられる。江戸時代には藩主も湯治に訪れ、浴室内に温泉神像を拝し、「恩湯」と呼称されたことからも、人々の中に尊敬と感謝の心が受け継がれてきた湯であることが伺える。施設の老朽化と利用客の減少により2017年5月に公設公営での営業を終了。その後地域の若手たちが「長門湯守」を結成。2023年3月に再建した。

長門湯本温泉 恩湯 大谷 和弘氏
施設の老朽化や利用客の減少により2017年に公設公営での「恩湯」の営業は終了。そこで「我々の手で地域の温泉を守っていこう!」と決意をしました。そんななか、岩田方丈、鳴瀬宮司にご支援いただき、このエリアで培われてきた歴史、文化、自然、物語、足元から「場所」を見つめ直し、新しい恩湯の理念を元にこの事業をスタートいたしました。また、理念を実現するにあたり、設計事務所岡昇平さんには、多大なるご尽力をいただきました。これからも「温泉」というかけがえのない長門湯本の文化資本を地域や行政の皆様、そして仲間とともに大切に守っていきたいと思います。

長門湯本温泉 大寧寺方丈 岩田 啓靖氏
大谷和弘さんのような若い担い手と下関市住吉神社の宮司さんと友情をわかちあって、この場に立っているのは不思議な気持ちがいたします。いろんな偶然が重なりましてこの喜びを共有しています。
長門國一宮 住吉神社 宮司 鳴瀬 道生氏
室町中期、当社の神様は、大寧寺の第三世住職・定庵殊禅に説法を受けに毎夜毎夜、寺まで飛んで行き、その感謝の証として温泉の湧く場所を教えたと伝えられております。それから600有余年、「恩湯」の名称が語り継がれている。このことに価値があると考え、表彰式に出席をさせていただきました。

(2)湯道特別賞:長年、入浴文化の発展・継続を支えてきた個人・団体。

<栃尾又温泉>
奈良時代より約400年、怪我や病気の療養の場、半ば医療機関のような役目も担ってきた湯治場である栃尾又温泉。江戸時代には湯守が存在し、佐渡から湯治客が来ていた。現在、3軒の宿しかないが昔ながらの建物を大切にし、一つの同じ共同浴場に浸かりに行く文化を残すことで、入浴者の交流を深めている。

 

栃尾又温泉・自在館 星 宗兵氏
代々の湯守たちが湯を継承してくれたおかげで、たまたま私がこの場に居させていただけています。ご先祖様のおかげです。私自身、湯守を大変だと感じたことはありません。むしろどうやったらより良い温泉に入っていただけるのかと考えることがとても楽しいのです。たまたま温泉が湧く家に生まれ落ちたわけなので選べる道でもないでしょう。3宿が共同で一生懸命、湯を守っていきたいと思います。

 

 

<中乃湯>
仲村シゲ氏 プロフィール
1933年 沖縄県生まれ
1958年 現在では沖縄唯一となる銭湯「中乃湯」を現在の地に移転・創業
1970年 仲村家に嫁ぎ、夫とともに「中乃湯」を経営。
1984年 夫が急逝。
2023年 新しいスタッフが参画。15年ぶりに夜の営業を開始。

中乃湯 仲村シゲ氏
「なんともいえないねー。ゆーふるやー(風呂屋)で、そんな大層なことをしたかなーと思うけどね~。賞状は上等さー。最高な気持ち、最高さー。こんな素敵な賞をくださった、湯道文化振興会の小山薫堂さんという方にお礼を言わないといけないね」

 

(3)湯道工芸賞:日本の伝統工芸分野において、入浴関連の道具や建物を制作するとともに、それらの国内外への魅力発信に寄与した個人・団体。

<おぼろタオル株式会社>
1908(明治41)年、三重県津市で創業。朧染タオル製造の特許を取得。1927(昭和2)年に”ガーゼタオル”を製造・販売し現在に至る。「タオル製造一貫作業工程」にこだわり、「一度使ったら忘れられない心地よい風合い」を実現している。

 

おぼろタオル株式会社 森田 壮氏
まさかこんな賞をいただけるなんていうのも夢にも思っていなかったものですから、お話いただき従業員一同、本当に喜んでおります。1908年に私の曾祖父でもあり日本画家でもあった森田庄三郎がヨコ糸だけが染まる〈おぼろ染め〉という特殊技術を開発し、以来115年、多くの方の力を得て、日本の入浴文化に寄り添った形のものづくりをひたすら続けてこれたことに感謝しております。これからも入浴文化の発展に寄与できるよう、ものづくりを続けていきたいと思っております。

(4)湯道創造賞:これまでにない発想や取り組みで、入浴に新たな価値を付加している個人・団体。

<今井 健太郎氏>
1967年静岡市生まれ。92年武蔵野美術大学大学院造形研究科修了後、アトリエ設計事務所に勤務。20代後半より風呂なしアパートに住み銭湯暮らしを始める。近隣の銭湯を毎日利用しているうちに銭湯ファンとなり、都内各地の銭湯巡りを始める。98年今井健太郎建築設計事務所設立後、銭湯/温浴施設を中心としリサーチ/設計/イベント企画などの活動を始める。伝統的かつ現代に生きながらえる銭湯空間を提案し都内銭湯をはじめとする温浴施設の設計実績に繋げてきた。著書に『銭湯空間』(KADOKAWA)がある。

銭湯建築家 今井 健太郎氏
「日本人が長く親しんできた銭湯という生活文化が廃れてしまうのはあまりにも勿体無い。銭湯がある生活をもう一度現代に復活させ、そして未来につなげたい」と、そのような思いから、銭湯に関わる設計活動をスタートいたしました。そうした私どもの活動を評価していただき、また湯道文化振興会様の趣旨との共通性を感じていただけたことを大変嬉しく思います。今後も湯空間の設計を通じた私どもの活動が日本の湯文化継承、発展への貢献となるよう一層励んでまいります。

 

 

(5)湯道貢献賞:「湯道」の精神理念に深く共感し、それを体現する個人・団体。

<在京都フランス総領事館>
フランスが京都府京都市に設置している総領事館。1858年の日仏修好通商条約締結以来、総領事館うを日本国内に設置。2009年それまで大阪市にあった西日本を管轄する在大阪・神戸フランス総領事館が関西日仏学院内に移転。現在の総領事はサンドリン・ムシェ氏。日本文化に精通し、湯道を理解くださり、2023年4月、関西日仏学館にて『湯道展』の開催に至った。

 

在京都フランス総領事館文化部長芸術部門主任
ジュリエット・シュヴァリエ氏
2023年4月、関西日仏学館にて開催された『湯道展』に来場された方々に、日本のみならずフランスの入浴文化をも伝えることができましたことを嬉しく思います。日本にお風呂のための道具がたくさんあるということ、その職人技や銭湯や温泉の建築物の美しさが印象に残っています。フランス人の日本に対する関心は高く、来日するフランス人もますます増えています。湯道を通じ日仏交流の発展も期待しています。

◆「湯道文化賞」とは
日本の入浴文化の保存・振興、そして、日常の入浴行為を「文化」へと昇華させることを目的とした表彰制度。
2022年に創設。5つの部門ごとに受賞者を選出し、一休禅師を開祖とする京都 臨済宗大本山大徳寺真珠庵にて、表彰式を行った。

<審査員>
・小説家・エッセイスト/湯道文化振興会 理事 柏井 壽氏
・温泉ビューティ研究家・トラベルジャーナリスト 石井 宏子氏
・銭湯大使 ステファニー・コロイン氏
・温泉カメラマン 杉本 圭氏
・放送作家/湯道文化振興会 代表理事 小山 薫堂

◆「湯道」とは
現代に生きる日本人が日常の習慣として疑わない「入浴」という行為。
しかし冷静に考えるならば、飲める水を沸かして湯にし、それに人が浸かる・・・
世界196ケ国のうち、水道水を安全に飲める国は9ケ国しかないことを鑑みれば、これほど贅沢で感謝すべき行為はありません。
日本人にとっての入浴という行為は、世界でも類稀なる生活文化であり、その精神と様式を突き詰めてゆくことで一つの「道」になるという想いに至りました。
「感謝の念を抱く」「慮る心を培う」「自己を磨く」という三つの精神を核としながら、日本の入浴文化を世界に発信する活動です。

◆団体概要
団体名:一般社団法人 湯道文化振興会
所在地:東京都港区虎ノ門5-11-1
設立:2020年10月19日
代表理事:小山薫堂
事業内容:日本の入浴文化の保存、普及および国内外への啓蒙活動。日本の伝統工芸の保存、普及および振興活動など。
URL:https://yu-do.jp/

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監修:全国寺社観光協会

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