花手水は企業の目にも止まった。桜や新緑などの定番ツアーがマンネリ化する中、JR東海はこの花手水に着目し、「花手水ツアー」を柳谷観音に提案した。当時は花手水を開催する京都の寺社は数えるほどしかなく、JRは北野天満宮や二尊院など有名な寺社に絞って声をかけていた。これにより、花手水は一層広がっていった。
それがきっかけで宗派や地域を超えた関係も生まれた。花手水を始めた寺社が、日下さんにやり方や見栄えなどのアドバイスを求めたり、互いにFacebookやInstagramをフォローしあって情報交換したり、連携企画を実施するようになった。当初、花手水を批判的に感じ、実施をひかえていた寺社でも始めるところが増えている。
平安時代より眼病平癒の祈願所として有名な柳谷観音は1200年の歴史を誇る。他方、科学的な治療が普及する中、願いごとをする参拝客は減少傾向。重要文化財として修復や保存に多大な費用が掛かるだけに深刻な状況となっている。
楊谷寺が生家である日下さんは、この歴史ある寺を自分の代で潰したくないと、花手水以前から、例えば、自ら御朱印をリデザインするなど画期的な提案・企画を打ち出してきた。押し花をあしらった御朱印は大人気となり、押し花朱印づくり教室は常時満席だ。