新連載「寺社彩々!花手水に誘われて」第1回:柳谷観音・楊谷寺(京都府長岡京市)〜花手水の先駆けが創る心の磁場〜

文:金山智子 KANAYAMA,Tomoko

情報科学芸術大学院大学[IAMAS]メディア表現研究科教授
「花手水研究会」主宰

ネットで「花手水(はなちょうず)」を検索すると、PCの画面は色鮮やかな美しい花が浮かんだ手水の写真で埋め尽くされ、思わず「きれい!」と声をあげてしまう。この「花手水」という言葉がFacebook、Instagram、TwitterといったSNSで目立ち始めたのは2018年。現在、#花手水(ハッシュタグ)はSNSで一般的に使わるようになった。京都長岡京の柳谷観音で知られる楊谷寺の執事、日下恵さんが、花を浮かべた手水鉢を「花手水」と名付けたのが、実はその始まり。

柳谷観音は京都府指定文化財で、庭の草花栽培には様々な許可が必要。その中で、寺にもっと花が欲しいと感じた日下さんは、ある日贈られた花のボックスを真似て、手水に紫陽花を入れてみた。それが「すごく可愛かった」ことから,娘の勧めで写真をFacebookやInstagramに投稿した。

2017年当時、SNSの活用方法も分からず、反応やコメントもないまま、ただ使っていただけなのに、この写真を投稿すると、「綺麗ですね。いつも見ています」などのコメントがつき、「見てくれはる人がいる」と手応えを得た日下さん。柳谷観音が「手水に花を入れること」と「その写真をSNSに投稿すること」を始めたきっかけで、これが今に続いている。

2018年頃、「手水に花を浮かべる」というシンプルな理由で、これを「花手水」と名付け、SNSで使うようになった。本来、花手水は「野外の神事で水がない時に草花のつゆで手をこすり清めること」であり、住職からは「花手水の意味が違う」と言われた。しかし、この言葉は誰にでも分かりやすいからと使い続け、今では一般にも「花手水」は花を浮かべた手水と理解される。花手水は岡寺(奈良県)や御裳神社(愛知県)が先んじていたが、柳谷観音が「花手水」という名で発信し、これが広く認知されると、一般には柳谷観音が先駆け的存在と思われるようになった。

日下恵さんとご自身がデザインされた龍手水(筆者撮影)

 

花手水の写真をSNSに投稿する人が増えるに連れ、県外からの参拝者も増えている。特に、2018年12月、柳谷観音の紅葉を浮かべた花手水の写真がユーザーのTwitterに投稿されると、何と10万の「いいね」がつき、4万のリツイートを記録した。日下さんは、「バズるってこういうことか」と初めてSNSの威力を理解した。同時に、花手水が多くの人たちを魅了することも実感した。

花手水のシーズンオフとなる冬場になっても訪れる人たちがあり、花手水を開催していないことを残念がることに対し、日下さんは、季節に関係なく花手水を見られる工夫をしていった。クリスマス、干支、バレンタインなど誰にでも馴染みのある行事や、鳥や蛙、金魚や小動物など、見る人に「楽しい」「綺麗」「可愛い」と感じてもらえるような、特に宗教などとは関係のない多様な表現の花手水を行い、季節の花がなくとも一年中発信することでフォロワーがさらに増えていった。

手水と手水舎をデザインした花手水(筆者撮影)

龍手水

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