文:和栗隆史 WAGURI,Takashi
全国寺社観光協会・花手水研究会
大阪府立大学大学院経済学研究科
池坊東京連合支部の青年部が昨年に続き、江戸総鎮守・神田明神(神田神社)の手水舎に花手水(はなちょうず)「龍昇華清」を奉納した。COVID-19の1日も早い終息を祈り制作されたもので、随神門脇の手水舎に活けられた花手水は、松・竹・梅や季節を先取りした桜など「和」の花材をベースに、彩りを添える洋花なども用いられ、参拝者に癒しと安らぎを届ける(2月6日午後3時まで公開)。
そもそも、いけばなのルーツは、神仏への供花といわれており、池坊では、太宰府天満宮(福岡)、三十三間堂(京都)、伏見稲荷大社(京都)、伊勢神宮(三重)、曹洞宗大本山永平寺(福井)など全国各地の寺社で献華(けんげ)を行っている。
池坊は、草木の命が作り出す姿を〝美しさ〟の根源とし、そこに「和」があると考える。つまり、草木の命が、太陽や雨や風などに出会い、新たな姿へ変化することを「和」ととらえる。虫食い葉・先枯れの葉・枯れた枝までも、みずみずしい若葉や色鮮やかな花と同じ草木の命の姿ととらえ、その変化に「美」を見いだそうとする。
自然に恵まれた日本では、四季折々に美しい草木が見られる。春の芽生え、夏の繁茂、秋の彩り、冬の枯枝……これらは草木が生きているからこそ現れる、まさに命そのもの。季節を読み込む俳句はもとより、文学や芸術、歌謡やデザイン、料理に至るまで、日本人は草木の変化や四季の移ろいを、生活のなかに取り入れ、暮らしてきた。
新型コロナ感染症の世界的蔓延により、日々の生活から社会の仕組みまでさまざまなことが変化しようとしている。心も身体も閉塞感に覆われ、過度にストレスフルな生活を余儀なくされている。そうしたときに、ふと、身のまわりの草木や自然に目を向けてみる。変化の中に「和」を感じ、そしてそこに「美」を見いだす。
花手水は、そんなちょっとした心の安寧と余裕をもたらす、一つのきっかけになる。
「龍昇華清 神田明神献華」(池坊東京連合支部青年部)
2年にわたるコロナ禍。私たちには賢い生き方が求められています。
明るく清らかな心と健康な体を持ち、豊かで前向きな生き方をしながら、いつくしみ合い、高め合う生活を送ろうではありませんか。天に昇る竜のように、華やかな気持ちを溢れさせながら、清らかに過ごしたいものです。
新種のコロナウィルスの感染が懸念されますが、一日も早い終息への願いも込め、夢や希望、元気や勇気の創造をしてまいります。私たちは、こうした精神文化を江戸総鎮守の神田明神の新春の参拝者と共に形成していくことは、日本人としての矜持に通じると信じています。よって令和三年に続き、令和四年の初めに花手水で新春を寿ぐのです。
手水舎の真ん中は龍。そこにしだれ柳と松を用いて新春の息吹を感じさせるお花を飾り、左右は桜をたて洋花で彩ります。
開催会場 | 神田明神(神田神社)手水場 |
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開催期間 | 2022.01.31~2022.02.06 |
時間 | 終日 ※6日は15時まで |
入場料 | 無料 |
住所 | 千代田区外神田2丁目16−2 |
主催 | 華道家元池坊東京連合支部青年部 |
▼寺社Nowオンライン連載「寺社彩々!花手水に誘われて」(花手水研究会)