自称サウナー住職が仕掛ける「サウナ寺ス」の“お寺らしさ”とは!?
—北海道・菊枝山慶誠寺(浄土真宗本願寺派)—
2021年1月、北海道旭川で「てらとさうな」と呼ばれる完全予約制のイベントが試験的に開催され、期間中8日間でおよそ100名が参加した。その会場となったのは、慶誠寺(浄土真宗本願寺派)の湯堂「サウナ寺ス」である。イベントは、“サウナー住職”を自称する石田慶嗣住職が、門徒や地域の人たちを巻きこんで企画運営した。
「お寺とサウナの親和性には、以前から着目していました。それで昨年の10月くらいから自坊にサウナを併設することを計画して、SNSで発信などしながら準備を進めたのです。で、今年1月、ついに完成して、さっそくイベントを開催したところ、なんとはるばる大阪や愛知からお越しいただいた方もいました。サウナをきっかけに自坊を知っていただける喜びと、これからのお寺の可能性を感じないではいられません」
石田住職は「楽しくなければお寺じゃない!みんなが集う慶誠寺!」をモットーに、これまで「夏の夜の怪談ライブ」「お寺でBBQ」「恋活&婚活縁結び会」、漫才説法やギター説法、コント説法が聞ける「坊主バー」などを仕掛けてきた。完全予約制のグランピング施設「慶誠寺K’s Garden」も運営しており、今回その敷地内にテントサウナを設置した。門徒だけでなく、誰もが立ち寄れる開かれた寺の形を模索している。慶誠寺湯堂「サウナ寺ス」は、そうした活動の一環でもある。
1月に試験的に実施したイベント「#テラトサウナ」で導入したロシア製のテントサウナ施設は、以降も常設として、予約制で利用者を受け付けている。3月には、リブランドをした2回目のサウナイベント「てらとさうな」を開催、3日間の会期中72名の枠はすべて事前予約で満席となるほどの人気を博した。5月にも3回目のイベントを予定している。
しかし、これほどの人気は、お寺にサウナがあると言う理由だけだろうか。
「うちは、サウナ×メディテーションが基本となっています。サウナでととのったあと、本堂にある瞑想ルームを自由に使っていただいているのですが、多くの方がそこで瞑想していらっしゃいます。お寺らしい空間をオプションとして付け加えたことが、ご好評いただいているひとつの理由かもしれません」
そのほか慶誠寺では、ボランティアのマッサージチームを抱えている。門徒や地域の人で構成されているチームの整体師が、サウナ利用者のうち希望する人に整体やタイ式マッサージを施術している。これも高い満足度につながっているようだ。
さらにもうひとつ、人気の秘密があった。
石田住職は、香りのスペシャリスト・調香師の資格を持っている。その知識を活かし、サウナ名物のロウリュ(熱したサウナストーンにアロマ水をかけて熱い蒸気を発生させ、室内の温度を一気に上げて発汗を促す入浴法)に際して、しずかに暮れゆくサンセットをイメージしたオリジナルのお香を加えているのだ。これによって、いっそうの「寺サウナ」感を演出することに成功しており、これもまた利用者に喜ばれる理由。
「サウナにお香をプラスしているのは日本でもうちだけではないでしょうか。慶誠寺のように地方にあるお寺でも、アイデアと工夫次第で多くの方に存在を知ってもらえることを実感しています。全国各地からお越しいただけていることを考えると、今後はお寺でととのう「寺サウナ旅」が盛り上がるかもしれませんね」
とはいえ、ニューウェーブな「寺サウナ」が、単なる一時的な流行にとどまってしまう可能性もあるのではと一抹の不安もある。
「ブームは、いつか下火になるかもしれません。しかし私がいちばん大事にしているのは、『お寺で心身共に健康になってもらいたい』ということに尽きます。だからこそ、お寺だからできるサウナの形にこだわり、「寺サウナ」を文化の域にまで高めていきたいと考えています。だって、そもそもサウナはお寺発祥だと思っていますから」
ちなみに、慶誠寺のグランピング施設K’s Gardenには、ちょっとしたバーも併設されている。「てらとさうな」のイベント開催期間中は、昼は〈サウナ×メディテーション×マッサージ〉、夜はマッサージの代わりに〈バータイム〉となる。昼はサウナと瞑想を、夜はコミュニケーションを。昼と夜とで異なる2つの魅力を兼ね備えていることも、活況を呈している大きな要因となっているであろうことは想像にかたくない。
■浄土真宗本願寺派慶誠寺(石田慶嗣住職)
〒078-8235 北海道旭川市豊岡5条4丁目4-14
電話: 0166-31-2871
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