30年の耐久性と美しさを支えるのは職人の技とチームワーク
神社を訪れると鳥居をまたぐように架けられているのがしめ縄です。
神社を訪れたことがある人なら、最初にしめ縄の立派さに目を奪われた人も多いのではないでしょうか。
富山県射水市に、約40年ほど前からしめ縄の製造に携わるようになった、株式会社折橋商店があります。
折橋商店のしめ縄は、30年取り替え不要の耐久性と、その美しさが特徴です。
なぜ、30年という長い間、取替不要で美しさを保てるのか、その秘密について迫りました。
▪30年の耐久性を持つ合繊しめ縄づくり 株式会社折橋商店
▪しめ縄作りは地元の神社のお世話をしていたお客様からの相談がきっかけ
折橋商店は明治43年、富山県新湊市で漁業用の藁縄作りで創業し、藁縄製の定置網の製造を手がけるようになりました。
その後、定置網の素材は藁縄から強度の高い化学繊維を使ったロープに変わり、神社のお世話をしていた地元の漁師さんから、「折橋商店の化学繊維ロープを作る技術で、合成繊維のしめ縄を作れないか?」と相談されました。
それをきっかけに、昭和60年ごろから試行錯誤を重ね、合成繊維を使ったしめ縄作りをしています。
折橋商店のしめ縄の最大の特徴、30年取替不要の耐久性
しめ縄は日々雨風や日光にさらされます。そのため、藁で作られたしめ縄は、1年経てば中から腐ってきたり、汚れがついて見た目が悪くなってしまいます。
折橋商店のしめ縄に使われているのは、高密度合成繊維です。この素材は、耐久性、防水性、耐寒性に優れているので、しめ縄が腐るのを防ぎ、汚れがつくのも防ぐので、30年間取り替えなくても美しい見た目も保てます。
神社といえば、厳かなイメージがあるのではないでしょうか。しめ縄が架けられる鳥居は、神社の玄関ですから、美しいしめ縄で参拝者を迎えたいものです。
▪職人技で見た目にもこだわる
折橋商店のしめ縄は、美しい見た目にもこだわっています。しめ縄に使われるのは、私たちが黄金色と言っている繊維です。この色は、日光に当たると反射して輝くので、神社の美しさを引き立てます。また、ロープは通常3本の繊維を編み上げて作るのですが、しめ縄に使っている繊維は、編むのではなく繊維を撚ることで、より藁のしめ縄に近い見た目になるようこだわって作っています。そして、折橋商店のしめ縄が美しい最大の理由は、左右の太さが均等になっていることです。
なぜしめ縄の太さが左右均等なるのかというと、熟練の職人の技術と経験、チームワークによって、微調整しながら1本1本手作りしているからです。
しめ縄の太さは、編み上げるスピードや編み上げる際の力の加減で変わるため、機械的に行うことができません。
折橋商店では、しめ縄の芯になる部分から、縄を編み上げしめ縄に仕上げるまで、全てが職人による手作業です。
熟練の職人が声を掛け合い、時には手を止めて太さを確認しながら、力の掛け方、スピードを調整して左右対称のしめ縄を作っています。
全てが職人の手作業ですから、大きさにもよりますが、しめ縄の完成まで1か月から3か月程度かかります。
現在、折橋商店には13名の社員がおり、中には10年以上しめ縄作りをしている社員もいます。
しめ縄は神社で使われるものですから、社員は全員、神様に捧げるものを作っているという誇りをもって、仕事に取り組んでいます。その誇りが、耐久性が高く見た目の美しいしめ縄を作っているのです。
▪高齢化、人口減少の中でも日本の伝統を守りたい
しめ縄は、その年の豊作を神様に感謝するものとして、その年にとれたお米の藁を使って作り上げたしめ縄を、年始を迎える前に架け替えるのが習わしです。
しかし、地元に密着した神社さんの多くは、お世話をする方が高齢だったり、普段は別のお仕事をしていたりで、毎年新しいしめ縄を架け替えることが負担となっている神社さんが多くあります。
ここ富山県でも、高齢化や人口減少に伴い、神社のお世話をする方の負担は増えており、こうした神社さんからしめ縄の問い合わせが増えています。
神社がなくなると、神社を基点にした春祭りや秋祭りもなくなります。それはとても寂しいことだと思います。しめ縄もそうですが、神社の祭りで見られる獅子舞や御神輿といった日本の伝統文化は、高齢化や人口減少の中でも、残していきたいです。
▪伝統を守りながら新しい取り組みも積極的に行う
引用元:リノケン! – リノベーションのインテリア・デザイン研究チャンネル!
https://www.youtube.com/watch?v=2n9Dj8_y2UY
2022年12月1日、名鉄百貨店本店メンズ館の1Fにオープンした「名鉄商店」の内装に、当社の注連縄を採用していただきました。また、名鉄百貨店の水引ロゴをしめ縄で作らせていただきました。
引用元:リノケン! – リノベーションのインテリア・デザイン研究チャンネル!
https://www.youtube.com/watch?v=2n9Dj8_y2UY
ロゴ制作は、カットしたり曲げの技術が必要だったりと、しめ縄とはまた違った難しさがあり、仕上げるまでは苦労の連続でした。しかし、この取り組みのおかげで、しめ縄には神社以外でも使われる可能性があることもわかりました。
今後は、神社用のしめ縄だけにこだわらず、新しいしめ縄の可能性も考えながら、現代と伝統の融合ができたらと思っています。