初公開!3Dプリンターで立体再現展示へ〜CT撮影調査で重文秘仏の胎内仏の姿が明らかに!4月開幕 京都国立博物館特別展「最澄と天台宗のすべて」で初披露

(写真左)今回の歴史的な特別展の実現に並々ならぬ尽力した京博の大原嘉豊氏(保存修理指導室長)。(写真右)東博の皿井舞氏(学芸研究部 列品管理課 平常展調整室長)による、法界寺薬師如来立像のCT撮影調査結果について驚きの報告風景。4月の京博特別展は、京博と東博の全力コラボレーションとも言える

問題の、そして注目の仏像は、国宝の阿弥陀堂で知られる法界寺(ほうかいじ、京都市伏見区日野)の秘仏「薬師如来立像」(重要文化財)だ。特別展のチラシ・ポスターデザインにも使われている。法界寺は、永承6年(1051)に、藤原(日野)資業(すけなり)が創建した寺で、この時に造られたのが本像である。

法界寺は現在、真言宗醍醐派に属する寺院だが、元をたどれば天台宗であったため、今回、伝教大師1200年の大遠忌ということもあり、各方面の尽力もあり宗派を超えて秘仏出展の運びとなった。

本像は、サクラとみられる材を用いた檀像(だんぞう)で、素地のうえに直接あしらわれた載金文様(きりかねもんよう)が美しい。またその姿形は、比叡山根本中堂に秘仏本尊として安置されている最澄自刻の薬師如来像をうかがわせるものとして、きわめて重要な仏像である。日本仏教にあってもっとも重要な秘仏の姿をうかがわせる秘仏を目撃することができる。

さてその法界寺の薬師如来立像には、造像時に日野家祖先代々に伝えられた最澄が自ら刻んだ三寸の薬師小像が納められたという。像内に小像を納める姿から乳(ちち)薬師として信仰されてきた。

昭和37年(1962)に解体修理された際に、胎内仏は近世までに造り直されたと判断されていたが、胎内仏はおろか、そもそも薬師如来立像が秘仏のため、その姿形はこれまで秘められたものとなっていた。

それが今回、特別展のために東博に出座された際に、コンピューター断層撮影(CT)による精密な調査を実施、胎内仏の精緻なデータを取得することに成功した。

(写真左)重要文化財 薬師如来立像 平安時代・11世紀 京都・法界寺(真言宗醍醐派)蔵 像高88.8cm、(写真右の中央)X線断層(CT)写真 全身垂直正断面、(写真右の左脇)像内に納められている薬師如来立像 3D写真 右側面、(写真右の右脇)像内に納められている薬師如来立像 3D写真 左側面 【提供:東京国立博物館、3D画像作成者:宮田将寛】

(写真左)像内に納められている薬師如来立像 3D写真 正面、(写真右)像内に納められている薬師如来立像 3D写真 背面 【提供:東京国立博物館、3D画像作成者:宮田将寛】

胎内仏の像高は28.4cm。近世までに最澄自刻のものと取り替えられていたことがわかっている。がしかし、今回のCT調査による精緻なデータをもとに、最澄自刻の像を模したことも想定しうるなど、いくつもの新たな発見の可能性が広がった。

東博と京博の共同チームによる調査データをもとにした研究は、まだ始まったばかりだが、その成果の一部が4月に開催される京博の特別展でディスプレイされると発表された。CTのデータをもとに3Dプリンターで胎内仏を再現して、薬師如来立像とあわせて展示する計画があることも明かされた。展覧会の裏側のこうしたダイナミックでアカデミックな現在進行形のワクワクする知的作業についても知ることができる、またとない機会となるだろう。

京博の特別展は、九博(2月8日~3月21日)巡回後の、4月12日に開幕する。そのとき貴方は、1200年の歴史と文化の目撃者となる。

京博での記者発表会のその足で、法界寺(京都市伏見区)を訪れた。実は、法界寺は「寺社Now」を運営する全国寺社観光協会が事務局を務める「西国四十九薬師霊場」第38番札所でもある。京博の特別展「最澄と天台宗のすべて」の魅力のひとつは、ミュージアムで出会った至宝名宝ゆかりのお寺や神社をこうして気軽にすぐに訪れることができるという点にもある。写真左上は、国宝の阿弥陀堂。その右手に見えるのが秘仏の薬師如来立像を安置する薬師堂。授乳・安産・子さずけ祈願の信仰があり、日野薬師、乳(ちち)薬師として知られている。堂内には、「元気な赤ちゃんが生まれますように」「オッパイが出ますように」と願を掛けられた無数のよだれかけが奉納されており、信仰の篤さをうかがいしることができる(写真右)

■京都国立博物館
伝教大師1200年大遠忌記念特別展「最澄と天台宗のすべて」
会期:2022年4月12日(火)〜5月22日(日)
開館時間:9:30~17:00(入館は閉館30分前まで)
※特別展期間中は延長あり
公式サイト:https://saicho2021-2022.jp/

■西国四十九薬師霊場第38番札所
 法界寺(ほうかいじ、通称:日野薬師)
所在地:京都市伏見区日野西大道町19
霊場会HP(法界寺):https://yakushi49.jp/38hokaiji/

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監修:全国寺社観光協会

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