野心的!過去と現在と未来をつなぐ!九州国立博物館「最澄と天台宗のすべて」開幕レポート

九州国立博物館は、太宰府の霊峰・宝満山の裾野に所在している。1200年大遠忌記念の特別展が最澄ゆかりの地で開催されている

巡回展を侮ってはいけない。

今回、同じ趣旨とタイトルで東京・九州・京都と巡回するが、ただ箱(会場)を変えるだけだと思ったら大間違いだ。東京・九州・京都に属するそれぞれ先鋭の専門家チームが、地域性を活かした独自の企画を盛り込むべく準備し、各地の寺院に交渉し、最終的に会場内で展示構成して世界観を表現する。そのため、3カ所の巡回展をすべてまわって観覧すると、次々と新たな発見に遭遇する。日本天台宗の空間的な広がりも実感できる。

そもそもかつて日本の玄関口だった「九州」は、伝教大師最澄と深い関わりがある。最澄は遣唐使船で唐に渡って求法の旅に出るが、渡航を待つおよそ1年余りのあいだに、九州北部の山々を巡り、今回の会場の地である太宰府の霊峰宝満山にて薬師仏を彫って航海の安全を祈願した。

中国の天台山に学んで帰国後も、宇佐八幡宮(大分県宇佐市)にお礼参りをするなど、比叡山を拠点に全国に天台宗を広める以前の土台を九州の地で築いたとも言える。

最澄につづく弟子たちは、最澄の歩んだ道のりを辿り、九州各地で山岳信仰との融和をはかりながら、神と仏が融合した独特な信仰と造形を生み出し、天台勢力を拡大した。中でも九州での修行の場となったのが、「神仏習合発祥の地」となる宇佐国東半島の六郷満山だ。

当時この地の100を越える寺を統括していた長安寺(大分県豊後高田市)が所蔵する重要文化財『太郎天像及び二童子立像」は、修験者を守る不動明王が太郎天に姿を変えている。天台密教と山岳信仰の結びつきをまざまざと想像させる。

重要文化財「太郎天及び二童子立像」平安時代 1130年(大分・長安寺蔵)。天台の僧侶にとっても今回の巡回展は行く先々で発見の連続だ

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監修:全国寺社観光協会

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