あえて足もとを見る!東京国立博物館 特別展「空也上人と六波羅蜜寺」開幕(3/1-5/8)

東京国立博物館 特別展「空也上人と六波羅蜜寺」(2022/3/1火〜5/8日)の会場は、本館特別5室のほか本館11室でも六波羅蜜寺所蔵の仏像が公開されているのでお見逃しなく!(写真右下は、ミュージアムショップで販売されているアクリルフィギュアを本館前で撮影)

「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」
念仏をとなえると、その音が次々と小さな阿弥陀如来となって現れる。

教科書でもおなじみ、京都・六波羅蜜寺の「空也上人(くうや・しょうにん)立像」が半世紀ぶりに東京に!

重要文化財「空也上人立像(部分)」 康勝作 鎌倉時代・13世紀(京都・六波羅蜜寺蔵)[写真:城野誠治]

空也上人(903-972)は、平安時代の中期、社会が混迷を極め、疫病が蔓延し、まさに今日でいうところのパンデミックが京の都で猛威を振るっていた当時、市中を歩き、病に倒れた人を介抱し、屍を弔い、人々のために祈りを捧げ、寄り添った。

市場などに出向き、「南無阿弥陀仏」ととなえれば誰もが極楽往生がかなうと説き、阿弥陀信仰を広めた。生涯を通して弱者に救いの手を差しのべ続け、それがゆえに「市聖(いちのひじり)」「阿弥陀聖(あみだひじり)」と呼ばれ慕われた。

重要文化財「空也上人立像」康勝作 鎌倉時代・13 世紀(京都・六波羅蜜寺蔵)。念仏をとなえて歩いた空也上人の姿を再現しているかのように思える写実的な像は、鎌倉時代の仏師・運慶の息子である康勝の手による。 右上)空也上人像といえば、口元ばかりが気になるが、展示会場では背後にもまわれる。 右下)草鞋(わらじ)を履いて左足を一歩前に踏み出しているさまは、市井をくまなく歩いて人々に寄り添う空也上人の姿勢そのもの。擦り切れた草鞋から指がはみだしているなど非常に写実的で、あたかも空也上人と出会ったかのような錯覚さえ覚える。 左下)よく見ると杖に「蓮(はす)」が絡んでいる。空也上人が詠んだと伝えられる和歌「ひとたびも南無阿弥陀仏という人の 蓮(はちす)の上にのぼらぬはなし」(どんな人でも、ひとたび南無阿弥陀仏と唱えれば、蓮の上にのぼらないものはいないだろう=念仏をとなえれば誰でも極楽往生できる)をモチーフにしたと想像できる

本年2022年は、空也上人の御遠忌1050年の節目にあたる。空也上人が京都・東山の地に創建した六波羅蜜寺(当初の名称は西光寺)が伝える現存最古の「空也上人立像」(重要文化財)をはじめ、創建時につくられた「四天王立像」(重要文化財)、「伝平清盛坐像」(重要文化財)、「閻魔王坐像」(重要文化財)など名宝の数々が一堂に展示される。

会場風景 左上)重要文化財「地蔵菩薩坐像」 運慶作 鎌倉時代・12世紀、 右上)手前は、重要文化財「伝平清盛坐像」鎌倉時代・13世紀、下)重要文化財「四天王立像」 と中央は重要文化財「薬師如来坐像」 平安時代・10世紀(四天王立像のうち増長天のみ鎌倉時代・13世紀) いずれも京都・六波羅蜜寺蔵

六波羅蜜寺の界隈は、平安京の代表的な葬送地、鳥辺野(とりべの)の入り口にあたり、あの世とこの世の境界だと認識されていた。空也上人はこの地に六波羅蜜寺を建て、人々は祈りを捧げてきた。

左)重要文化財「閻魔王坐像」鎌倉時代・13世紀、右)重要文化財「地蔵菩薩立像」 平安時代・11世紀 (いずれも京都・六波羅蜜寺蔵) 六波羅蜜寺が立地する葬送の地・鳥辺野にあって、生前の所業で地獄行きをも命じる冥界の王たる閻魔王と、地獄まで亡者を救済に行く地蔵菩薩を前に、人々は救いを求めて祈りを捧げた

奇しくも現在、千年前の平安京のごとく、世界はCOVID-19による疫病に苦しめられ、ロシアのウクライナ侵攻により戦乱の恐怖に苛まれている。かつて、市井の人々のために歩き、寄り添い、南無阿弥陀仏をとなえ、祈り続けた空也上人が、時を経て今また、人々の安寧と幸福を祈り、歩き始めるような気さえしてくる[会期:2022年3月1日〜5月8日]。

写真上)東京国立博物館の特別展開催中、六波羅蜜寺本堂内で公開されている「空也上人現状模刻像」 作:堂本寛恵、像高119.3cm、材質:檜、漆、天然顔料、構造:寄木造、制作年1999年(六波羅蜜寺蔵)。現在、仏像彫刻師として活躍している堂本氏が、東京藝術大学大学院に在学中、2年間でおよそ100回、当時住んでいた千葉から京都まで通って制作した模刻。 写真下)京都・六波羅蜜寺 [撮影:寺社Now]※本堂内は通常撮影禁止です

会期
2022年5月8日(日)まで開催中
開館時間
9時30分~17時00分
料金
一般 1,600円
大学生 900円
高校生 600円
中学生以下 無料
※事前予約(日時指定券)推奨
休館日月曜日、3月22日(火) (ただし3月21日(月・祝)、3月28日(月)、5月2日(月)は開館)
公式サイト https://kuya-rokuhara.exhibit.jp
会場
東京国立博物館 本館特別5室、本館11室
住所
〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
050-5541-8600(ハローダイヤル)

 

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監修:全国寺社観光協会

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