デジタル×アナログで神仏習合1300年の奇祭を未来へ!国東半島「修正鬼会」越境クラウドファンディング成功の秘密

鬼の角のように鋭く立つ岩峰群。上のほうに開いた大きな穴に鬼が棲んでいるという伝説があり、地域の人々からは鬼城(キシロ)と呼ばれている

三十にして立つ!国東半島を想いUターンした僧侶が、地域を盛り上げるプロデューサーに

30歳で国東半島にUターンし、僧侶として地域を盛り上げてきた(左から2番目が文殊仙寺の秋吉住職)


――秋吉さんは30歳まで東京にいらっしゃったそうですね。

はい。文殊仙寺に生まれ、大学卒業後、都内で不動産営業の仕事をしていました。その会社を退き、今後のことを考えようと帰省したのが2008年、30歳のときでした。客観的に地元に向き合い、改めて国東半島の持つポテンシャルや価値を感じた一方、衰退する地域への危機感を覚え、帰郷を決断したんです。

――Uターンしてみて、大変なことも多かったのでは?

まず、食べていけなかったですね。当寺は檀家さんがあまり多くなく、収入が10万円という月も。職を探してくれるという檀家さんもいらっしゃいましたが、僧侶としての仕事を全うしなければ意味がないと考え、お断りしました。

このとき、当寺を含めた寺院群「六郷満山」全体が厳しい状況でした。お寺を立て直したければ、地域全体を底上げしないと先はない。そこで着目したのが、六郷満山の多数の文化財。これを活用した観光プロモーションを行う団体をつくろうと、2012年から活動を始めました。

――団体の立ち上げには2年ほどかかったそうですね。

当初は活動に懐疑的な方も多く、「お前は宗教を金儲けに利用するんか」と言われたことも。しかし我々の役目は、自分たちがこれまで地域に生かされてきた分、施し返すこと。文化財や宗教行事をきっかけに、どうお金を循環させて地域に還元できるかです。地域が潤えば、寺社も文化も守られるのです。

こうした考えを何度も説明して賛同者を増やし、2014年に「宇佐国東半島を巡る会」を設立。活動の広がりとともに応援してくださる方も増え、いまでは地域のみなさんも「また秋吉さんが変わったことをはじめた」と、おもしろがってくれています(笑)。

今をさかのぼること約1300年前、宇佐八幡神の化身とされる仁聞(にんもん)によって、宇佐国東の地に神仏習合の原点となる山岳宗教「六郷満山(ろくごうまんざん)」が開かれた   ※MAP:宇佐国東半島を巡る会

鬼さま!仏さま!神仏習合の発祥地といわれる国東半島の奇祭「修正鬼会」


――改めて、国東半島と六郷満山について教えてください。

六郷満山は、国東半島一帯にある寺院群で、独特の山岳宗教文化が栄えてきました。全国の八幡社の総本宮・宇佐神宮を擁し、神仏習合発祥の地といわれ、1,300年の歴史を持ちます。大分空港に近く、周辺には豊後高田の昭和レトロな街並みや、美しい棚田が広がる田染荘(たしぶのしょう)があります。

中世荘園の姿を遺す田染荘の農村景観。ユネスコ未来遺産にも登録されている

――今回クラウドファンディングを行った修正鬼会は、年に一度の大きなお祭りなんですよね。

はい。一年間の五穀豊穣・無病息災を願って旧正月に営まれる、六郷満山最大の法会です。現在は3つの寺での開催ですが(うち2カ寺は隔年開催)、六郷満山の寺院全体で協力して運営しています。

国東半島では古来、鬼は悪いものではなく仏の化身とされ、「鬼さま」と呼ばれています。僧侶扮する鬼が松明を持って暴れまわり、集落に繰り出して人々と酒を酌み交わし、災厄を払います。昼の3時から始まり、翌朝5時まで続くんですよ。

地域の人々にとっては、この祭りが終わってようやく新しい年を迎えられる、風物詩のような存在。例年6~700人の観光客が訪れ、そのうち2~3割は海外からいらっしゃいます。

鬼たちによる御加持

国東半島では、鬼は仏の化身。修正鬼会では、住民と酒を酌み交わすシーンも

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監修:全国寺社観光協会

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