静かな環境と応対力で長居したくなる宿に
「歴史や自然など、吉野山を訪れる目的はいろいろありますが、当寺院を訪れる人の目的は、宿泊です」と寺島法瑞(てらしま・ほうずい)住職。
宝塔寺は、平成29年(2017)、民泊新法の施行と同時に宿坊を開設した。この山の上のこじんまりとした宿坊には、大きくふたつの魅力がある。
一つ目は、ゆったりと過ごせる静かな環境だ。吉野山のランドマーク、金峯山寺蔵王堂が見えるテラスを備えたカフェ。敷地内にウッドデッキや手作りのブランコまである。「休みに来てほしいから」と、写経や勤行への参加、講話などの仏教体験は希望があれば受け付けている程度だ。
二つ目の魅力は、徹底した宿泊前コミュニケーションだろう。まずゲストのリクエストを聞き、できることとできないことをしっかり伝える。過度に期待されてもギャップが生じる。宿や食事について丁寧に説明をして、十分納得したうえで訪れてもらう。
宿泊客の対応を一手に引き受けている奥様の誉知子(よしこ)さんは、「相手が求めていることをキャッチして、提供できるものはしていきます」という柔軟な姿勢で臨んでいる。そのため利用者の満足度は高い。