英語教師だった西山住職は、在職中に子供たちと日々接するなかで、おのずと地域の未来を考えるようになった。これからの子供には地域で生きていくためのチカラを育む起業家教育が不可欠だと。
手はじめに、境内の奥まったところにある旧保育所の活用から始めた。そこには現在、お茶づくりを極めようとする若者が移住して活動中だ。
次に、地域の空き家対策で民泊事業を、と考えた矢先、西山住職はあることに気付く。
「事業を立ち上げても、人材が不足しているのです」
そこで、観光拠点化に向けた計画を進めるために自ら起業し、将来に向けて人材を育てることにした。
「地域の若者が働ける場所を創るだけでなく、私自身が経験した起業を彼らに教えることもできます。私はいずれ実家の海蔵寺へ戻る身です。新たに立ち上げる大泰寺を拠点とする事業会社が、宿坊の運営などを担うことができれば、大泰寺の次の住職は寺院の活動に専念することができるでしょう」
西山住職の積極的な仕掛けは、まちの人たちにも既に影響を与え始めている。
たとえば、宿坊利用者向けにツアーを企画したいと地元のガイドから申し出があった。日本舞踊の先生は、宿泊者向けのレッスンを提案。地域の人が町役場に相談しに行くと、西山住職を紹介するというケースも出てきている。
寺院にむりやり人を集めようとするのではなく、まず寺院が動くことで、地域に活力と元気を。
それが、まちの未来につながると信じて。
臨済宗妙心寺派 定光山大泰寺
住所:和歌山県東牟婁郡那智勝浦町大字下和田775
TEL:0735-57-0234
大泰寺 宿坊予約サイト>>>https://oterastay.com/daitaiji/
※この記事は、雑誌『寺社Now』28号(令和元年11月発行)をもとに再構成したものです。常に変化・進化し続けている大泰寺についての最新の情報は直接ご確認ください。