リアル×オンラインのハイブリッドも開催!
2020年以降のコロナ禍にあって、デスカフェのオンライン開催が急増している。『デスカフェ・ガイド』ではその理由について、「コロナによる死は、亡くなった人に会えない、葬送の場も縮小され形態も変わりました。そして死につながる感染症が長く続いていることで自らの死生観が揺さぶられ、死について語りたい需要が増しているのではないか」と語っている。
そして2021年に入り、デスカフェの新たな動きが出てきた。
父の死をきっかけにデスカフェに参加するようになり、自身でデスカフェを主催するようになった「デス・ポジティブ プロジェクト」代表の山内三咲さんは、今年から寺院でデスカフェを開催している。
特徴的なのは、これまで国内で開催されてきたデスカフェの多くが1人称や2人称で「死」を語る場だったのに対し、山内さんのデスカフェは直接的な「死」を語るだけではなく、死について学ぶきっかけとして「死生観」を語る。たくさんの写真から自分が持つ死のイメージに近い1枚を取ってもらい、そこから話をスタートさせるというきっかけづくりがユニークだ。
「近親者の死を経験し、2年ほど前に初めてグリーフカフェに参加しました。ところが自分が思い描いていたものとは少し違っていて、それ以後もいくつか別のグリーフ的な場に参加したのですが、そのうちに、私が求めているのは死について語るだけではなく、いつか来る死のために、死生観など多くのことを学べる場だと気づいたのです。しかしそのような場が探しても見つからず、それなら自分で始めてみようと、昨年(2020年)に友人を誘って初めてデスカフェを開催しました。すると参加した友人からもっとやってほしいと言われ、以後数回フリースペースなどを借りて開催。今年(2021年)1月からは光明寺(東京都江東区、真宗大谷派)を会場に、ほぼ毎月開催しています」
フリースペースから寺院へと場所を変更した理由は、「リラックスして話せる場がほしかった」から。寺院での開催はフリースペースと違い、無意識に心を開く準備ができる気がすると山内さんは語る。
「毎回和室で開催しているのですが、寺院独特の静かな空間で畳の上に座った途端、皆さんが “ここは死について話していい場だから”という気持ちになっているようです。ファシリテーターの私も、ほかで開催するより集中して話せています」
今年5月には、リアルとオンラインを組み合わせたハイブリッド形式での「死生観トーク&デスカフェ」を開催。光明寺でリアルに開催するデスカフェにオンライン参加者も交え、死生観を語り合った。場を提供している光明寺の小林住職も毎回参加しており、それも貴重なことだと山内さんは捉えている。
「普段聞くことができない仏教的な死生観の話は、とても勉強になっています。それに、リアルとオンライン、どちらの参加者からも“寺院でやるっていいよね”という声があがっていました。私たち日本人にとって寺院とは、なぜだかわからないけれど安心する場だと思います。だから参加者がリラックスできているでしょうね」