「場を編む」視点が生んだ “お寺でカレーを食べる” 発想
――「カリー寺」は、どんな取り組みなのでしょうか。
檀家さんや地域の人たちがお寺に集まり、カレーを食べて語らう、寄り合いのようなイベントです。カレー好きな僕に「お寺でカレーを食べたらおもしろそう」といったアイデアが浮かび、知人だった西正寺の住職・中平了悟さんに相談したのがきっかけでした。
最初は単純に「お寺にカレー」というビジュアルのおもしろさに注目していて。中平住職と話すうち、仏教とカレーそれぞれがルーツを持つインドやネパールの民族音楽演奏なども行って、知らない文化を体験する機会にすることになりました。2016年夏、境内に6店舗のカレー屋さんが集まり、第1回が実現。2019年までに計4回開催しました。
――藤本さんは、地元の尼崎で「場を編む人」として地域活動に携わっていますよね。
尼崎のいろいろなジャンルの人たちと関わり、彼らの主体的な活動を後押ししています。現代社会は、サービスやコンテンツを選んで使うことの連続です。そうではなく、必要なものは自分たちでつくることで、暮らしや地域を変えていけるはず。そんな「つくり手」たちが楽しく活動し、思いを共有する場を増やしたいんです。「カリー寺」の取り組みもその一環で、個人として関わっています。
活動の背景にあったのは、まちで出会った住職との交流
――もともと、お寺や仏教に親しみがあったんですか?
いいえ。いわゆる観光寺を拝観しに行ったことはありますが、地元のお寺は素通り。寺院に行ったり関わったりする機会はほとんどありませんでした。祖父母と同居していたので、月参りにお坊さんが来ていた覚えはありますが、あまり会話もなく、接点はありながらも近しい存在ではありませんでしたね。
――中平住職とは、地域のイベントを通して知り合ったそうですね。
尼崎では、まちのみなさんが各々の得意分野について講義する「みんなのサマーセミナー」が毎年開催されています。僕も中平住職もそのイベントに関わっていて、そこで初めてお会いしました。地域に自ら出ていって、活動に参加するお坊さんとつながったのは初めて。「僧侶と檀家」としてではなく、個人として関われたことで、お坊さんを身近に感じられるようになりました。そこから、会食をしたり飲みに行ったりするようになり、一緒にトークイベントを開いたこともありましたね。
――その関係性があったからこそ、「カリー寺」の企画が生まれたわけですね。
そうでないと、活動としてこのイベントがつながっていかなかったと思います。寺院を空間として借りるだけではなく、住職自身が主体的にイベントに関わってくださったのは大きかったですね。なぜこのイベントをお寺でやるのか、檀家さんたちに理解してもらいながら進められました。