2025年の大阪・関西万博を控え、寺社Now的に大注目の企画展「万博と仏教―オリエンタリズムか、それとも祈りか?」が開幕した。
「万博と仏教」と聞くと意外だが、実は幕末から現代に至るまで日本はほぼ一貫して仏教のイメージを万博で発信し続けてきた。そして1970年の日本万国博覧会(大阪万博)が大きな転換点となったことが本展で確認できる。
監修は、新進気鋭の宗教学者、君島彩子 Kimishima,Ayako氏(和光大学講師)。
▪展示構成
第1章:万国博覧会の歴史と仏教
第2章:大阪万博と仏教
2–1 日本仏教という自己表象
2–2 世界の仏教と出会う
2–3 混ざり合う仏教文化
たとえば、明治政府として初の万博公式参加となった1873年のウィーン万国博覧会では《鎌倉大仏頭部の張子》や《五重塔の模型》が展示された。1893年のシカゴ万国博覧会では、《平等院鳳凰堂外観を模した日本館》が建設され、展示物に留まらずパビリオンそのものに仏教イメージが表出した。
以降、枚挙に暇がなく、そのほとんどすべてが本展会場の大パネル年表に記され、また実際に出展された造形物や写真などが展示されている。
こうした仏教イメージの表出は、信仰とかけ離れ、西洋から向けられる「オリエンタリズムのまなざし」を内面化して、戦略的に利用しようとしたものと推察される。
本展ではさらに、展示スペースの多くを割いて、転機となった1970年に開催された日本万国博覧会(大阪万博)における仏教イメージの変化を見出していて大変興味深い。
それまでの万博が欧米キリスト教文化圏で開催されてきたのに対して、アジア初の万国博覧会となった大阪万博は、仏教を信仰する人々が多数訪れる初めての万博でもあった。しかし、大阪万博における仏教イメージは、信仰とかけ離れたオリエンタリズムのシンボルとしてではなく、初めて宗教的意味を帯びる存在へと変化した。
本展で、万国博覧会に出展された仏教に関連する造形物を概観しながら、近代における仏教のイメージの受容と、その変遷を理解し、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げた2025年大阪・関西万博において、いかなる仏教イメージが表出するのかを想像したい。
寺社Nowお薦め!「万博と仏教」展を100倍楽しむための参考文献
君島彩子(2020)「1970年日本万国博覧会における仏教的造形物の役割」(佐野真由子編『万博学ー万国博覧会という、世界を把握する方法ー』思文閣出版、311-322頁)
〈目次〉
はじめに
1. 全日本仏教会による休憩所と主催者による仏教展示
(1)全日本仏教会による休憩所「法輪閣」
(2)日本館の仏教展示と万国博美術館の仏教美術
(3)長期利用を前提とした法輪閣
2. 平和の祈りを込めた仏教的造形物
(1)世界各地に贈られた「平和観音像」
(2)国連館の「平和の鐘」
3. 万博における仏教関連展示物への信仰
(1)「古代の夢」——東大寺七重塔を模した古河パビリオン
(2)アジア各国のパビリオンにおける仏教関連展示
おわりに
※会期中、本展監修の君島彩子氏によるトークイベントが予定されている。詳細は決定次第、高島屋史料館ホームページにて告知予定となっているので要チェック!
高島屋史料館 公式ホームページ
高島屋大阪店 公式インスタグラム
高島屋大阪店 公式Twitter
開催概要『万博と仏教 ―オリエンタリズムか、それとも祈りか?』
会期 | 2023年8⽉5⽇(土)―12⽉25⽇(⽉) |
開館時間 | 10:00-17:00(入館は16:30まで) |
休館日 | 火・水曜日 |
会場 | 高島屋史料館 企画展示室 大阪市浪速区日本橋3-5-25 高島屋東別館3階 06-6632-9102 |
アクセス | https://www.takashimaya.co.jp/shiryokan/access/ |
入館料 | 無料 |
企画・主催 | 高島屋史料館TOKYO |
監修 | 君島彩子(宗教学者、和光大学講師) |
グラフィックデザイン | 原田祐馬・岸木麻理子(UMA /design farm) |
展示デザイン | tamari architects |
公式HP | https://www.takashimaya.co.jp/shiryokan/exhibition/ |