若い人がお寺に来る理由をつくる
「お寺のこれからを考えると、若い人がお寺に来る理由を作る必要がありました。しかし無理に来てもらうのではなく、若い人たちがお寺に惹かれ、自然な形でお寺へ足を向けるようになってほしい。そのためにもトレイルランを開催し、若い人たちに実行委員として加わってもらう。参加してもらうことで、“自分たちのお寺”という意識を持ってもらえるのではないかと考えたのです」
イベントの裏方として地域の若いチカラを巻き込み、寺に関わる頻度を自然と増やす、そんな機会にしたいと住職は未来を見据えて考えた。
とはいえ、第1回のトレイルラン開催時は、たしかな勝算があったわけではない。
「正直、人が来てくれるか不安だった。しかし少人数でも開催しようと心に決めていました」
結果、初年度の参加者は25名だったが、第2回には57名と倍増。50名のボランティアが協力してくれた。さらに、昨年(2019年)の第3回大会は、参加者が71名まで増加した。ウルトラマラソンの100㎞を走破するような20代の健脚からマイペースで遍路みちを走る80代まで、幅広い年齢層のランナーが集うイベントに成長した。
「ランのルールは、88カ所の祠をすべて巡ること。ランナーの様子を見ていると、なかには祠の前でしっかり時間を取って手を合わせて行く人もいて、この山に根付いている信仰を知ってもらえることにつながっていると感じています。これだけでもやった意味があったと言えるのではないでしょうか」
今年(2020年)の「飛騨千光寺88トレイル」は11月に開催予定。遍路みちを3周する昨年までのコースに加え、ゆっくり八十八カ所を巡りたい人やシニア向けに、一周だけのコースを設定することも検討している。
「完走できなくてもいいんです。自分のペースで遍路みちを回ってもらうことが何よりも大切なんです」
これまでも、“この機会に遍路みちを歩いてみようか” という気持ちで参加する人がいた。その気持ちに応える形だ。
補足だが、「飛騨千光寺88トレイル」には、ほかのトレイルランとの違いがもうひとつある。それは、給水所に水だけでなく冷やしたトマトが置いてあること。
「地元の丹生川町はトマトが名産でもあります。県外からの参加者も多いので、せっかくなら、それも知ってもらいたいと考えました」
寺に関わる人を増やし、参加者が地域とつながるきっかけも創るイベント。健康を切り口にした取り組みが、地域振興にも役立っている。
そんな飛弾千光寺で、さらに新たな活動がスタートした。