大正から昭和初期にかけては、時あたかも日本人の行楽旅行が盛んになった時期。鉄道やバスなどの道路交通網や宿泊施設などのインフラが整備され、積極的なインバウンド政策が推進された。鉄道院と民間の出資による半官半民の「ジャパン・ツーリスト・ビューロー(JTB)」が設立され、鉄道省の外局として「国際観光局」が設置されたのもこの時期である。
旅行案内のガイドブックも必携のアイテムとなった。今回の企画展が焦点を当てている〝大正の広重〟こと吉田初三郎(よしだ・はつさぶろう)が、空飛ぶ鳥の目のように眺めて描くパノラマ鳥瞰図(ちょうかんず)が人気を呼んだ。今で言うところのドローン映像のようなものだろうか、見る人の視線を釘付けにし、そしてまた旅情を誘ったのである。
1913年(大正2)に初めて制作された京阪電鉄の沿線案内図が、当時の皇太子(のちの昭和天皇)に絶賛され、初三郎は鳥瞰図絵師として一躍時代の寵児となった。そして1921年(大正10)に鉄道省から発行された『鉄道旅行案内』が全国的に好評を博し、初三郎はその確かな地位を確立した。
与謝野晶子と吉田初三郎は、日本近代の「観光」草創期における、大いなる立役者であることはまちがいない。今回の企画展は、そんな二人の〝時代を超えた夢のコラボレーション〟と言える。
初三郎の鳥瞰図を眺めながら、あたかも現地を訪れているかのような気分で、晶子の歌を詠む快感を味わうことができる。もちろん「寺社Now」の読者なら、初三郎が描くお寺や神社の表現と、そこで晶子が詠んだ歌に注目して。
※2022年「寺社Now」新連載『吟遊歌人・与謝野晶子と旅する!ニッポン全国寺社めぐり(仮題)』もお楽しみに!
▼MBS(毎日放送)ラジオの名物パーソナリティーだった馬場章夫(ばんば・ふみお)さんが内覧会の模様をYOUTUBEで発信!
展覧会概要「与謝野寛・晶子夫妻の旅─パノラマ地図でたどる観光名所─」
会期 | 2021年11月20日(土)〜2022年1月23日(日) |
会場 | さかい利晶の杜 企画展示室 |
住所 | 大阪府堺市堺区宿院町西2-1-1 |
休館日 | 第3火曜日:12月21日、1月18日 年末年始:12月29日(水)〜1月3日(月) |
開館時間 | 9:00〜18:00(入館は17:30まで) |
観覧料 | 大人 300円(240円) 高校生 200円(160円) 小中学生 100円(80円) ※常設展示室(与謝野晶子記念館、千利休茶の湯館)と共通料金 ※( )内は10名以上の割引料金 ※堺市内在学の小中学校と引率教職員は無料 ※障がい者と介助者は無料(要証明書) |
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問い合わせ先 | さかい利晶の杜 TEL:072-260-4386 |