【ミュージアム巡礼】開幕!奈良国立博物館「大安寺のすべて―天平のみほとけと祈り―」(仏像イラストレーター・田中ひろみ)

奈良市国際交流協会会長も務めている南都 大安寺 貫主・河野良文師と記念撮影!

待ちに待った奈良博の「大安寺(だいあんじ)のすべて」展が開幕です!
[会期:2022年4/23(土)〜6/19(日)]

若き日の空海や最澄が学び、幾多の名僧を輩出してきた、あの大安寺です。私の大好きな観音さまもいらっしゃいます。開幕前日に開催されたプレスプレビューに、喜び勇んで馳せ参じました。

文・田中ひろみ(イラストレーター&文筆家)
女子の仏教サークル「丸の内はんにゃ会」代表。奈良市観光大使、よみうりカルチャー・中日文化センター・毎日新聞旅行同行講師ほか、テレビ出演や講演多数。著書 『心やすらぐ仏像なぞり描き』(池田書店)など約70冊。

JR奈良駅から南へおよそ1km、奈良県奈良市大安寺町に所在する大安寺(英訳:Temple of Great Peace テンプル・オブ・グレート・ピース)は、近年では〝癌(ガン)封じ〟の笹酒祭りでつとに有名なお寺ですが、侮るなかれ、今を遡ることおよそ1400年前、実は〝日本初!天皇の祈りの寺〟として建てられた、この国の歴史上もっとも重要な寺院のひとつなんです。東大寺や西大寺と並んで〝南大寺〟とまで呼ばれ、官大寺(国家の大寺院)の筆頭格だったお寺です。

今回の見どころは、なんと言っても大安寺所蔵の〝天平のみほとけ〟9体です(会期中、入れ替えあり)。仏像フェチからすると、これはもうほとんど〝事件〟にも等しい、画期的な展覧会と言えるかと思います。

ただ・・・ちょっと心配していたことがあります。
というのは、大安寺の宝物のクオリティは、まったくゆるぎのないものです。でも、実は正直なことを言うと、奈良国立博物館の広い展覧会場を大安寺の宝物だけで埋め尽くすことができるのだろうか、という不安を抱いていたのも事実です。

ところがところが!

大安寺に伝わる〝天平のみほとけ〟たちが奈良博に出座!中央は、ご本尊の十一面観音立像

いざ蓋を開けてみたら・・・何も知らずに勝手にいらぬ心配をしてごめんなさい。タイトルに「大安寺のすべて」と銘打っているだけのことはあります。会場には、大安寺の宝物にとどまらず、奈良時代に一大勢力を誇った大安寺にあったものの現在は各地の寺院に移っている秘仏・宝物のたぐいが、まさかまさかの大集合をしていたんです。

それだけではありません。今も続々と考古学的な発見が続いている発掘調査を踏まえた、驚きの研究成果もあわせて紹介されているほか、クラウドファンディングを活用して制作した「南都大安寺天平伽藍」のCG復元映像まで大画面で鑑賞できるなど、想像を遙かに超えた見応えのある展示になっていていたんです。

ということで興奮冷めやらぬうちに、練りに練られた会場の展示構成に沿って、仏像イラストレーター的な注目ポイントをチェックしていきたいと思います。ではでは、いざ、ミュージアム巡礼のスタートです!

第1章 大安寺のはじまり
第2章 華やかなる大寺
第3章 大安寺釈迦如来像をめぐる世界
第4章 大安寺をめぐる人々と信仰
第5章 中世以降の大安寺

次ページ:第1章:大安寺のはじまり〜第2章:華やかなる大寺

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監修:全国寺社観光協会

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