【ミュージアム巡礼】開幕!奈良国立博物館「大安寺のすべて―天平のみほとけと祈り―」(仏像イラストレーター・田中ひろみ)

第5章:中世以降の大安寺

第5章では、かつて大安寺にあった宝物などが展示されています。

国宝「金銅透彫舎利容器」(奈良・西大寺)

透かし彫りの文様の美しさが特徴的な国宝「金銅透彫舎利容器」は、現在は奈良市の西大寺所蔵ですが、かつては大安寺にあったことがわかっています。大安寺にはこの舎利容器を祀るための舎利殿もあったんだそうです。

国宝「透彫舎利容器」鎌倉〜南北朝時代(13〜14世紀)奈良・西大寺蔵〈総高37.0cm 銅製 鍍金 鍍銀〉※通期展示

重要文化財「四天王立像」(香川・鷲峰寺、大分・永興寺)

展示会場の出口付近に、四天王立像が2組展示されています。奈良の大安寺から遠く離れた大分の永興寺(りょうごじ)と香川の鷲峰寺(じゅうぶじ)の四天王立像が、なぜ大安寺展に出ているのか疑問を感じていました。ところが……

重要文化財「四天王立像」左4体)香川・鷲峰寺蔵、右4体)大分・永興寺蔵、中央の写真パネル)興福寺蔵

その2組の四天王立像の扇の要の位置に、興福寺の四天王立像が写真パネルで展示されているのですが、それが答えでした。

そうなんです。超有名な興福寺北円堂の四天王立像は、もともとは大安寺にあったことがわかっています。台座の裏面に「これは大安寺四天王像で、延暦10年(791)4月に造立した」ということが墨で書かれているんです。

どのような経緯で大安寺から興福寺に移されたかは不明ですが、当時、四天王立像は大変人気があったようで、その模刻像として造られたのが、大分と香川の四天王立像だったんです。言われてみると、たしかに興福寺北円堂の四天王立像と、ポーズが似ていることに気付かされます。

・・・などなど、しばし時を忘れてミュージアム巡礼していると、新たな発見や驚き、気付かされることばかりです。かつて日本仏教の一大拠点であり、国際的な仏教の学びの場でもあった「大安寺のすべて」が目の前に浮かび上がってくるかのようで圧巻です。一人でも多くの方に「大安寺のすべて」を体感していただければと思います。

そうそう、充実の会場を後にしたら、ぜひ、大安寺へも足を延ばしてみてくださいね!

上)重要文化財「四天王立像」鎌倉時代(14世紀)香川・鷲峰寺蔵〈像高99.6cm〜115cm 寄木造〉、下)重要文化財「四天王立像」鎌倉時代 元亨2年(1298)大分・永興寺蔵〈像高93.5cm〜100.3cm 木造 彩色・漆箔〉※いずれも通期展示

がん封じのお寺としても知られる「南都 大安寺」(奈良市大安寺2-18-1)拝観時間: 午前9時~午後5時(受付は午後4時まで) 公式HP:http://www.daianji.or.jp/ [撮影:寺社Now]

奈良国立博物館「大安寺のすべて ― 天平のみほとけと祈り ―」

会期
2022年4月23日(土)〜6月19日(日)
前期:4月23日(土)~5月22日(日)
後期:5月24日(火)~6月19日(日)
開館時間
9時30分~17時
4/29(金)~5/7(土)は19時まで
※入館は閉館の30分前まで
※名品展とは開館時間が異なります
料金
一般 1,800円
休館日毎週月曜日
※ただし5/2(月)は開館
公式サイトhttps://www.narahaku.go.jp/
会場
奈良国立博物館 東西新館
住所
〒630-8213 奈良県奈良市登大路町50
050-5542-8600(ハローダイヤル)

仏像イラストレーター・田中ひろみ「御朱印を描くおへんろ旅〜四国別格二十霊場篇〜」


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監修:全国寺社観光協会

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