地元人気カフェとコラボで1日1組限定の宿坊&和カフェOPEN〈岐阜県関市・関善光寺〉

江戸中期、長野県善光寺の本尊ご開帳巡行が岐阜県関市の宗休寺(天台宗安楽律法流)でも開催され、境内は毎日多くの参拝者が押し寄せたという。この時のご縁を機に、10年かけて本山を模した善光寺堂(本堂)を建立。以後、日参する地域の人や近郊からの参拝者で賑わい、宗休寺は関善光寺と呼ばれている。

この歴史ある寺院に佐藤舜海(しゅんかい)住職が着任したのは平成21年(2009)のこと。まずその立派さに驚くと同時に、かつて賑わっていた境内は人影もまばらで、入り口にある茶店が朽ち果てかけているのを見て、とても寂しく感じた。

「かつての賑わいを再び!」その思いを胸に住職が動いた

檀家を持たない安楽律法流ということもあり、「このまま何もしなければ、やがて訪れる人もなくなってしまう」と感じた佐藤住職は、賑わいを取り戻すために自ら動くことを決意。関市のまちづくりの集まりに出向いて相談し、地域のNPOや寺を支えてくれている方々に、まずは茶店を再開してもらった。ところが任せていた人が体調を崩し、茶店の運営が困難に。その時、再開に手を上げてくれたのが、地元で人気のカフェを営む亀山久美子さんだった。

宿坊「カフェ・茶房 宗休」は、亀山さんの元同僚でフランス料理の経験もある後藤真理さん(写真上)が店長を務める。佐藤住職は境内のほかの施設も地域の人に開放しており、「寺院が人々の拠り所になれば」と言う

オーナーの亀山さんは寺から徒歩数分の所で「カフェ マビッシュ」も営んでいる

「関善光寺には遠方から参拝者が来ますが、廃れた茶店を見て残念に感じる人もいました。せっかく訪れてくれる人に満足してもらいたい、人が増えると町も元気になるのでは。そう考えて引き受けたんです」

佐藤住職も亀山さんも思いは同じ。話を進めていく中で、茶店の奥にあり、老朽化していた和室を改装し、宿坊を始める計画が浮上した。

この春誕生した宿坊「カフェ・茶房 宗休」は、参拝者に利用してもらうカフェの奥に、和室2間の宿坊がある。ウッドデッキや浴室からは関の市街地から遠くの山々までもが一望でき、高台にある関善光寺のメリットを上手に生かしている。

石段を上った先に宿坊「カフェ・茶房 宗休」が見える

茶店の改装は、亀山さんがクラウドファンディングも活用しながら行った。宿坊部分はかつての風情を残しながら、外国人にも喜ばれるよう和モダンな雰囲気に

木の香りが心地よい浴室でも眺望が楽しめる。夕暮れ時の入浴は極上の時間になる

カフェはテーブル席と和室から成り、関名産の鮎なども販売している。ここを訪れ、ランチの時間が終わるまで友人との会話を楽しむ人も多く、くつろげる雰囲気を醸し出している

町を見渡す眺望が心地よい宿坊のテラスは、宿泊した人だけの特等席

「ここは昔から、地域の人のつながりが守ってきた寺院ですので、茶店の運営は完全にお任せしています。私は寺院がかつてのようににぎやかになればいいのです」と佐藤住職。最初は茶店や宿坊を自分で手がけることも考えてはみたが、寺の運営があるし、何より飲食業は未経験。人を呼ぶどころか運営すらままならないのではと思い至り、任せたからには口は一切出さない。ただ訪れた人が笑顔になっている、その姿が嬉しい。

宿坊利用者は、500円で朝食を付けることができる。だしが効いた優しい味わいのお粥と小鉢で、元気な朝を迎えられる

「善光寺パフェ」は、甘酒ヨーグルトのジェラートとほうじ茶アイス、季節のフルーツのコンポートがのる。注文の際に客の干支を聞き、その守り本尊の梵字を描いたチュイル(クッキーの一種)が新たな仏縁を生む

軽食のあんバタートーストも人気

オープンに合わせ、亀山さんは境内で毎月マルシェも始めた。寺院は地域の人のための場所と考える住職と寺院を元気にすれば町も元気になると信じる亀山さん。二人のタッグが功を奏し、評判を聞いた近隣地域の人々がカフェで憩い、宿坊は海外からの利用もある。寺院には確実に、人が戻っている。


天台宗妙祐山宗休寺(関善光寺)
住所:岐阜県関市西日吉町35
TEL:0575-22-2159
HP:https://www.seki-zenkoji.jp

宿坊「カフェ・茶房 宗休」
TEL:0575-23-6353
HP:https://so-kyu.jimdofree.com/

【寺社Now27号(令和元年9月発行)】より
※情報は掲載時のものです

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監修:全国寺社観光協会

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