①の「お寺の嫁(!)不足」は、あえて「嫁」と表現させてもらっていますが、すでに上記で述べたように、切実な問題です。少子化や晩婚化に加えて、宗教離れなどで、お坊さんの結婚難は世間のそれ以上です。この作品で、せっかく寺に入ったお嫁さんを、夫が亡くなったからといって手放したくないと周囲が考えるのも、賛否はさておき、物語の設定上は理解できるでしょう。
私は以前、北は北海道から南は九州まで、お坊さんの奥様方を対象とした研修会で講師を務めたことがあります。そこでまざまざと知ったのは、「お寺は女性で回っている」ということでした。
法事や会合などで外に出ることの多い住職に代わって、地域や檀家の皆さんと日々コミュニケーションを取ったり、寺務のあれやこれやを取り仕切っているのは、お寺の奥様です。周囲からも、そうした働きを期待されます。
作中に、檀家総代のこんなセリフがあります。
「坊主のかわりはいくらでもいるが、めぐりちゃんのかわりはおらん」
寺の日々のあれやこれやのほかに、次の次の跡取りとなる子作りから子育てまでもが期待されます。めぐりを手放してしまったら、このような「寺嫁」になることを積極的に望む女性を見つけることは容易ではないでしょう。