美坊主たちの赤裸々モンモンライフ! 本日開館!!お寺系マンガ図書館Vol.5『お慕い申し上げます』

「お坊さんって結婚できるの?」
「恋愛はOK?」

お寺や神社好きの婚活イベント「寺社コン」を定期的に開催していて、ときどきこのような質問をもらいます。

答えは、「YES」です。寺社コンではこれまで、男性参加者全員がお坊さんで、女性はお坊さんに出会いたい方限定という会もありました。嬉しいことに、めでたく結婚されたカップルもいらっしゃいます。

今回ご紹介する『お慕い申し上げます』(朔ユキ蔵/作、集英社 2012-2014)は、とあるお寺の副住職を務めるお坊さん(佐伯清玄)と、元日本代表のマラソンランナー(清沢節子)が、お見合いをするところからスタートします。そこに役僧(高木清徹)が加わる三角関係のラブストーリーです。

と聞くと、ありがちな恋愛モノに思えるかもしれないですけど、いやいや、そこは何と言ってもお寺が舞台ですから普通じゃありません。ストーリーテリングの定石として、乗り越えるべきハードル(障害)が設定されていて、そのハードルが・・・・・・「煩悩」なんです!

朔ユキ蔵/作(2012-2014)『お慕い申し上げます(全6巻)』集英社 ヤングジャンプコミックス

ライバル関係となるふたりのお坊さんは、そろいもそろって異性との関係を避けるべき「煩悩」だと考えている(考えようとしている)ので、男女の関係はなかなか思うようには進展しません。たとえばそれが、清玄と節子が出会ってすぐのこんな会話に表れます。

節子「誰かを愛して結婚したいとは思わないんですか?」
清玄「愛はろくなもんじゃない」

長渕剛の名曲『ろくなもんじゃない」がBGMで流れてきそうですよね。愛すれば執着を生み、そして執着は苦しみを生む。いかにしてその執着から逃れるのか…。まさにブッダの教えです。とはいえ、目の前に魅惑的な人が現れたら、誰しもが思わず邪(よこしま)な考えや情動が芽生え、心揺れ動き、平静ではいられないのが世の常です。お堂のご本尊様の前ですた、たえぎる本能を抑えることができずに……。

ちなみに日本では、一部の例外を除いて江戸時代までお坊さんの妻帯は禁じられていました。そもそもブッダは、煩悩を消し去り、安らかな心をもって生きることを説いたのですから、結婚して妻帯することはその妨げになります。

それが一転して許されるようになったのは明治維新以降のこと。今では、お寺を存続させるために、結婚が積極的に奨励されることすらあるのですから、時代は変わりました(まあ、そのおかげで「寺社コン」が成立するわけです)。

清玄と節子のお見合いも、お寺の行く末を案じた檀家さんの強い勧めによるものです。ブッダの教えと現代のお寺事情、この2つのあいだのせめぎあいがストーリーの核となって進行していきます。この点で、前回ご紹介した『まんまんちゃん、あん。』と共通の社会課題を抱えていることを思い出す読者の方もいるかもしれません。

さらに物語が進むにつれて、仏教の教えの根幹である「生老病死」、生きることはすべて苦であるという哲学もにじみ出してきます。恋愛に限らず、自分の意思だけではどうにもならない煩悩=生きる苦しみと、人はどのようにして折り合いを付け、日々を過ごし、そして乗り越えていけばいいのか…。

お寺という特殊な世界を描いているかのようにみえて、、実はこの作品は、誰しもが抱えるココロとカラダの悩みや苦しみに寄り添う、愛と苦悩のヒューマンドラマと読み解くことも可能です。さあ、はたして、煩悩を振り払い清廉潔白でいようと努めるふたりの若きお坊さんの恋の行方やいかに!?

写真は「寺社コン」(https://jisyacon.com/)の一コマ。この日は、男性はお坊さん限定。宗派はさまざまでしたが、浄土宗のお寺での開催だったので、まずは浄土宗式の法要からスタートしました。このあと、輪になって会話をしたり、懇親会などが行われます

 

▼連載「本日開館!お寺系マンガ図書館」バックナンバー

新連載スタート!お寺漫画コンシェルジュ☆ほーりーの「本日開館!お寺系マンガ図書館」

本日開店!お寺系マンガ図書館〈Vol.2〉『聖☆おにいさん』(作:中村光)

地獄めぐりツアーへようこそ!「本日開店!お寺系マンガ図書館」第3回『鬼灯の冷徹』

資産価値60億円の寺を継ぐのは誰だ!?本日開館!お寺系マンガ図書館 Vol.4『まんまんちゃん、あん。』

関連記事

監修:全国寺社観光協会

    よく読まれている記事

    寺社関連プレスリリース

もっと読む

    クラウドファウンディング

もっと読む

    ミュージアム・イベント

もっと読む

    寺社Nowの書棚-Books-

もっと読む