次に、訪れる人が楽しみにしているのが、宿の食事だ。宿坊と聞くと一般的に精進料理をイメージするかもしれない。しかし禅の湯では、海の幸・山の幸豊富な地の利を活かして伊豆地方の地産地消をコンセプトにしている。
某有名料理学校の先生に定期的に指導を受けて腕を磨いた地元のお母さんが料理長を務め、愛情たっぷりにつくる旬の地域食材を上手に活かした料理の数々。彩りも鮮やかで。料理を通して地域を体験でき、地域の人たちの思いを感じることができる。料理が会話のきっかけになる。
下田漁港に揚がった金目鯛や地魚、それにジビエなどもオーダーでき、お寺の宿でありながら伊豆のフードツーリズムを満喫することが可能だ。

住職が寺の畑でつくる野菜と、地域の生産者から仕入れる野菜を中心に、伊豆の幸で構成。写真は夕食の一例
そんな温泉と食が自慢の禅の湯の3つめの魅力は、禅の湯が目指しているのが居心地のいい「田舎のおばあちゃんの家」だということ。単にのんびりできるだけではない。実際、宿のいたるところで客やスタッフに限らず、笑顔や笑い声が絶えない。
なんだかほっこりできて、なんだか安心する宿。客にそう感じてもらえるサービスの提供をモットーに、スタッフが満面の笑みで応対し、客の気持ちや要望に寄り添う。これが禅の湯的おばあちゃん家のおもてなしだ。初めて宿泊したときの居心地の良さが忘れられずにリピーターになる常連客が多いのも、ナチュラルなこうした笑顔のおもてなしが一番の理由だ。
と言うのは簡単だが、禅の湯スタッフの笑顔の秘密は、けっしてマニュアル的ではないことはこのあとわかる。

いつもニコニコ、愛情いっぱいの料理をつくってくれる禅の湯の料理長、渡辺須実子さん。河津町の特産品であるワサビ農家の奥さんで、宿で出される天然ワサビは渡辺さん家のもの

夕食前のキッチンから聞こえる賑やかな笑い声。覗いてみると、皆さん楽しそう。ハッピーな空気がそこかしこに漂っている