神社はみなさまが「心を寄せる場所」だから
「きっかけは、東京都赤十字血液センター立川事業所の方から、国際災害対策支援機構のほうに支援依頼が届いたことでした。聞けば、新型コロナウイルス感染症による影響で献血活動の場が減少してしまい、医療機関への血液供給に深刻な影響を与えているとのこと。コロナ禍でも輸血を必要としている人はいます。『何かしなければ』と、国際災害対策支援機構で支援の方法を検討し始めたのです」
中でも、輸血用血液不足の大きな原因となっていたのは、学校や企業、イベント会場といった集団献血の場が大幅に激減したことだった。そこで土師宮司が注目したのが、自分たちのテリトリーでもある神社の境内である。
「そもそも神社というのは、みなさまが〈心を寄せる場所〉であり、精神的な癒しを伝える場です。もともと肉体的な治療を施す医療とは縁が遠く、その支援についても疎い部分があったのは確かです。一方で、身体と心は一体であり、物理的肉体的な癒しを与える医療と精神的な癒しを与える神社が一体となれば、より多くの方を助けることができるのではないかという思いを、以前から抱いていました」
あまり知られていないが、実は、都内で奉職する40歳までの神職が集う東京都神道青年会では、これまでも毎年献血活動を行ってきたという実績がある。神職たち自身も献血し、また献血センター前での呼びかけや、たとえば文京区の湯島天満宮でも献血イベントを実施したことがあるという。
「私自身、かつて東京都神道青年会の会長を務めていたこともあり、毎年献血活動には協力してきました。湯島天満宮での経験もあったため、神社で献血をする、ということ自体に免疫があったのです。そのことが、『神社de献血』を立ち上げる大きな後押しになったと思います」