寺社ほか避難所が見つけやすく被災者にも救援者にも役立つ。全国どこでも使える「災害救援アプリ」

【寺社Now15号(平成29年7月発行)】より
※情報は掲載時のものです

“支えあいの市民社会”の研究を続けてきた大阪大学大学院人間科学研究科の稲場圭信教授に、同教授の研究グループが構築した日本最大級の災害救援・防災マップ『未来共生災害救援マップ』(略称:災救マップ)が生み出された経緯を聞いた。

稲場圭信(いなば けいしん)
1969年東京生まれ。大阪大学大学院教授(人間科学研究科)。東京大学文学部卒、ロンドン大学大学院博士課程卒、2000年、博士号(Ph.D、宗教社会学)取得後、ロンドン大学、フランス社会科学高等研究院、國學院大學日本文化研究所、神戸大学を経て2010年4月に大阪大学准教授。2016年4月より現職。大阪大学社会ソリューションイニシアティブ「地域資源とITによる減災・見守りシステムの構築」プロジェクト代表。専門社会調査士、専門宗教文化士、防災士、「宗教者災害支援連絡会」世話人。専門は共生学、宗教社会学。主な研究テーマは、利他主義、地域資源と科学技術の融合による防災・減災。主な著書に『阪大生の宣言文』(アマゾンKindle版電子書籍)、『災害支援ハンドブック』(共編著、春秋社、2016年)、『利他主義と宗教』(弘文堂、2011年)、『震災復興と宗教』(共編著、明石書店、2013年)、『思いやり格差が日本をダメにする~支え合う社会をつくる8つのアプローチ』(NHK出版、2008年)等


 

寺社が避難所となった東日本大震災がきっかけに

「東日本大震災が発生した際に私も現地に赴いたのですが、いわゆる公民館や学校だけでなく、お寺、神社が緊急避難所の役割を果たしていることが分かりました。しかし、宗教法人を避難所としてまとめている大規模なデータはなかったのです。そこで、地震の1週間後に避難所となっているお寺・神社を落とし込んだマップを作ったのがきっかけです。平成26年(2014)に一般無料公開した時点ではパソコン版のみ。やはりスマホで使えるアプリがあった方がいいだろう、ということになりました」

これまでの災害救援マップには、指定避難所として登録されている以外の寺社まで登録されているものはなかった。平成27年(2015)に無料公開された『未来共生災害救援マップ』のアプリには、20万の宗教施設、それに小学校や公民館のデータと合わせて30万近くのデータを網羅し、全国の公民館や小学校などの指定避難所と寺や神社などがマップに映し出される。GPSによって自分の居場所も表示される。

また、このマップの利用者が文章や写真を投稿することもできる。「アプリから投稿ができるため、自分でSOSを出せる。どんな支援が必要か、被災者が何人いるか、けが人がいるかいないかなども伝えられるのです。被災状況や被災者リストも写真でアップできます」

複数のメディアで取り上げられ注目度も高い

「観光」「見守り」で平常時の利用を促進

このアプリの管理者は、どのIPアドレスからいつ、どこで情報が発信されたかを見ることができる。しかしこういったアプリは、防災対策というだけではなかなか普及しない。

「そこで、平常時にも観光や、高齢者の見守りという形で有益に使っていただけるものにしようと考えました。一般社団法人全国自治会活動支援ネットが推進する『みまもりロボくんⅢ』というものがあります。これは太陽光、風力発電という独立電源で稼働し、カメラやサイネージ等の機能もある、高さ約6メートルの電柱のようなWi-Fi ステーションなのですが、これと連携することで、観光客はこのステーションの近くに行けば観光情報を入手することができる、という仕組みを考えています」

この『みまもりロボくんⅢ』は独立電源(NTN社製)なので災害時に携帯電話の充電も可能だ。自治体として導入に向けて検討しているところもある。今後はアプリで協力してくれた寺社への設置も働きかけていくとのことだ。

 

『未来共生災害救援マップ』
2021年4月には全面リニューアルして、使い勝手が一層増した。アプリをダウンロードする必要もユーザー登録する必要もなく、パソコン、タブレット端末、iPhoneおよびandroidのスマートフォンのブラウザーで利用できる。分散避難のために施設混雑状況の表示も搭載している。
「未来共生災害救援マップ(略称:災救マップ)」
「災救マップの活用方法」

 


ITを用いた地域連携に関する協定・共同研究が始動。
大阪大学と(一社)全国寺社観光協会が連携

記者会見の様子

平成29年(2017)5月15日、大阪大学大学院人間科学研究科において「新たなつながり!お寺・神社と防災・見守り・観光 ITを用いた地域連携に関する協定・共同研究始動」という記者発表が行われた。ここで、大阪大学大学院人間科学研究科の稲場圭信教授らの研究グループが開発した日本最大級の災害救援・防災マップ『未来共生災害救援マップ』を、災害時だけでなく平時の「観光」「見守り」の分野でも活用することが明らかにされた。

みまもりロボくんに使用するNTN社製独立電源

一般社団法人全国自治会活動支援ネットが地域の子供と高齢者を見守るために開発し、普及を進めている、カメラ搭載のWi-Fi ステーション『みまもりロボくんⅢ』の機能と技術を整備。防災だけでなく観光、見守りの情報インフラを共同開発するというものだ。

大阪大学オムサイト協定調印式の様子

また、新たな産官社学連携の仕組みとして、大学関係者に加えて一般市民、企業人など多様な人が登録して参加できる『大阪大学オムニサイト(OOS)』もスタートさせる。今回はOOS 第1・2号として、一般社団法人全国自治会活動支援ネットおよび一般社団法人全国寺社観光協会が主催・共催する展示、シンポジウム、イベントで連携することを決定した。

 

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